わかりやすい英文ビジネスメールの書き方

「あなたはわかりやすい英文ビジネスメールが書けますか?」

こう尋ねられて、自信を持って「書けます」と答えられる人は、それほど多くないでしょう。日本語で来るメールですら、何が言いたいのか伝わらないメールも少なくありません。ましてや英語となれば、わかりにくいメールを書いてしまうこともあるでしょう。

Sendmail社が米国内で実施したアンケートによると、64%のも人々が読んで気分を害したり、混乱をきたすメールを受け取ったことがあるそうです。ネイティブ同士でもこうなのですから、僕ら非ネイティブが英文メールを書く際に、とくに気をつけなければなりません。

また、僕らが1日に受け取るメールの数は膨大です。1日100通以上受け取る人はざらにいます。この辺りの事情は、アメリカも日本も変わりません。つまり、わかりやすいメールでないと、そもそも読んでもらえないのです。よく、「アメリカの担当者にメールを送っても返事がこない!」と怒っている人を見かけますが、もしかすると内容がわかりにくくて対応を後回しにされているからかもしれません。

そこで今回は、後回しにされず、すぐに対応してもらえるメールの書き方について解説と思います。

「後回しにされないメール」ってどんなのだろう?

後回しにされにくいメールというのは、次の5つの条件を満たしています。

1. わかりやすい
2. 1メールにつき要件は1件のみ
3. 短くて簡潔
4. プロらしい文体
5. 相手が「反応しやすい」メールを書く

順番に解説しましょう。

1)わかりやすい

よく書かれたメールというのは、まずタイトルからしてわかりやすいのです。開いて見ないと内容がわからないメールは、後回しにされがちです。

また、わかりやすいメールは、一度読んだだけで内容が理解可能です。2、3回読み返さないと内容が理解できないメールというのは、わかりやすいとは言えません。英語は僕らの母国語ではないのですから、書き終わったら一度同僚などに読んでもらい、一発で内容が伝わるかどうか確認してください。

2)一つのメールに要件を1つ

原則として一つのメールには要件を1件だけ書きます。特に相手にアクションを要求している場合には、1つのメールにつきやってもらうことをひとつだけとします。こうしないと、忘れられてしまったり、後回しにされてしまうのがオチです。

3)短く簡潔に!

長いメールは、開いて文面を見ただけでゲンナリされ、その場で後回しにされがちです。原則として5行前後に収まることを意識して書きましょう。

また、僕ら日本人は複雑な文体を用いた長い英文が良いと考えがちですが、実際は真逆です。なるべく短い文章を心がけます。必要以上に受動態を使ったり、関係代名詞を2重に用いたりするのはやめましょう。箇条書きにした方がわかりやすければそうします。日本語にせよ英語にせよ、簡潔なのが一番です。

4)プロらしい文体で書く

メールを書くときにはプロらしい文体で丁寧に書きましょう。過剰な装飾は要りませんが、かといって学生が友達に書くようなカジュアルすぎる文体では品位を疑われます。こちらの知性や品格を疑われてしまうとその後のビジネスに差し支えますから、くれぐれもカジュアルすぎないよう気をつけてください。

また文法やスペルの間違いが多すぎると、やはりこちらの能力を疑われてしまいます。必ずスペルチェッカーをかけ、同僚の方などに確認してもらってください。

5)相手が「対応しやすい」メールを書く

相手に「してほしいこと」が明快に伝わるメールを書きましょう。スケジュールの調整、在庫の確認などといったように、して欲しいことやその緊急性が明確に伝えます。相手の立場になり、相手が速やかに「対応しやすい」ように書くのが基本中の基本です。

普段日本語ででは問題なく書けている人でも、いざ英語となると途端に崩れてしまう人も少なくありません。大原則は英語も日本語もさして変わりませんので、そのことを頭にとどめておいてください。

それでは実例を見ながら考えて見ましょう。 こちらは部下宛のメールです。

Subject: Hey…

Ray,

Thanks for sending sales report last week. It was received by me and I am sending my feedback to you.

Maybe a bit more specific information can be used on the analysis part. I also felt that the tone of your report can be more formal.

Hey, I wanted to let you know that a meeting with the PR department has been scheduled for this Friday regarding the new ad campaign. It’s at 11:00 AM and will be in the small conference room in the bulding B.

Can you attend? Let me know.

Thanks!
Hiroshi

たくさん問題がありますが、順番に見ていきましょう。

1)タイトル

メールのタイトルが “Hey…”となっていますが、これでは内容がなんだかさっぱりわかりません。”Feedback to your sales repot” などのように、もっとわかりやすいタイトルをつけましょう。

2)文体がカジュアルすぎる

Thanks for….
Hey, I wanted to let you know that …
Let me know.

などといったカジュアルすぎる文体が目立つので、それぞれ “Thank you for…” “I would like to let you know that…”、 “Please let me know.” などのように、もう少しフォーマルな文体で書きましょう。このサンプルは部下宛なので極端に丁寧に書く必要はありませんが、それでもカジュアルになりすぎないよう気をつけましょう。

3)細かい文法やスペルの間違いが目立つ

また、全体的に細かい文法やスペルのミスが目立つので、必ず同僚や上司、あるいは英語の得意な方などにチェックしてもらいましょう。スペルチェッカーも必ず走らせます。

Thanks for sending your sales report last week.

次の文章などは特に問題が多いです。この前の文に金曜日とありますが、日にちはどこにも書いてありません。これでは一体アポが何日なのかまったくわかりません。しかも、スペルミスがあります。

It’s at 11:00 AM and will be in the small conference room in the bulding B.

これなら例えば、

It is at 11:00 AM on 2/12(Fri) at the small conference room in the building B.

などのように、日時と場所を明確に記載した方が良いでしょう。

4)必要のない受動態の文章があり読みにくい

特に意味なく受動態になっている文章があります。

It was received by me and I am sending my feedback to you.

また、この文章は「確かに受け取りました」というようなことを表現したいのかもかも知れませんが、そもそも返事を書いている時点で受け取ったことは自明なので、このような記述は必要ありません。ここは簡潔に “Here is my feedback. “だけで十分です。

また次の文章も受動態になっています。

Maybe a bit more specific information can be used in the analysis part.

ここも能動態で書いた方がずっとシンプルです。

You may want to include a bit more specific information on your analysis.

なおこの、”You may want to…” という言い方は「〜したほうが良いかも知れない」などとやんわり伝えたいときに頻繁に使われる表現方法です。覚えておくと使い勝手がいいので、暗記してしまいましょう。

5)一つのメールに2つの要件が記載されている

このメールにはレポートへのフィードバックと、ミーティングの日時というまったく2つの関係のない要件が記載されています。相手がどちらかの内容を見落としやすいですし、反応にしにくいので、必ず2つのメールに分けるようにしましょう。

それではどう書けばいいの?

それでは最後に、上のメールを書き直したものを記載しておきますので参考にしてください。悪い例の方では2つの要件が記載されていましたが、こちらの例ではレポートのフィードバックだけに絞っています。

Subject: Feedback on your sales report

Ray,

Thank you very much for your sales report. Here is my feedback.

Overall, everything looks very solid. However, you may want to include a bit more specific information on your analysis. I also feel that the tone of your report can be more formal.

I would appreciate it if you could make the appropriate changes and resend it to me by 5:00 PM on 2/12 (Fri).

Thank you.

Best,
Hiroshi

実は外資系社員だって最初は四苦八苦

以上、わかりやすいビジネスメールを英語で書く際に気をつけるポイントです。

なお、英語でビジネスメールを書くのは初心者には大変なものです。

私がアップルの日本法人に勤めていた頃にも、日系企業から転職してきたばかりの人はみんな苦労していました。ほんの1パラグラフ(段落)を書くのに2時間かかってしまう人などザラです。しかし、どの人も3ヶ月も経つころにはスラスラと書けるようになっていきます。長いメールを書く必要はありません。シンプルに簡潔に書くことを心がけてください。



松井 博
hiroshi.matsui@brighture.jp

著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」するアップル、マクドナルド、エクソン~新しい統治者たちの素顔』などがある。2009年まで米国のアップル本社にシニアマネージャとして勤務。大学や企業での講演も多数。