本場越えのワインも?ニューワールドワインの魅力を紹介! 【1】アメリカ、アルゼンチンのワイン
前回は、ワインの生産量が世界3位のスペインや、白ワインが美味しいドイツ、それに加えて、ポルトガルやルーマニア、ギリシャのワインなどを紹介しました。ここまでを読んでいただくと、ヨーロッパのワインについては、少しは理解できたのではないでしょうか。
ヨーロッパのワインは、大航海時代とともに、世界中に輸出されるようになりました。そして、ヨーロッパの移民たちが、出ていった先で、ワインを作るようになり、今や、ワインは世界中で作られています。今回は、ニューワールドワインについて、その魅力をしょうかいします。
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ニューワールドワインとワイン生産量ランキング
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- イタリア
- フランス
- スペイン
- アメリカ
- アルゼンチン
- チリ
- オーストラリア
- 南アフリカ
- 中国
- ドイツ
まずは、ワインの生産量ランキングを、もう1度おさらいしましょう。2015年のデータによると、1位はイタリア、2位はフランス、3位はスペインと、1位から3位まではヨーロッパのワインが占めています。
しかし、4位以降を見てみると、4位アメリカ、5位アルゼンチン、6位チリ、7位オーストラリア、8位南アフリカと、ヨーロッパ以外の国が続きます。これらはいわゆるニューワールドワインと呼ばれています。そして、9位中国、10位ドイツと続きます。
今回は、4位のアメリカから、8位の南アフリカまでのワインを、その歴史や特徴から、おすすめまで、幅広く紹介したいと思います。
アメリカワインの魅力を紹介!
まずは、世界第4位の、アメリカのワインを紹介しましょう。アメリカは、近年、ワインの消費も盛んで、最近では、フランスを抜きワイン消費量世界一の国になりました。
アメリカワインの歴史
とはいえ、アメリカワインの歴史は浅く、アメリカでワイン作りが広まったのは、18世紀半ばと、言われています。
ローマカトリック教会のフランシスコ修道会の修道士たちが、ミサ用として、ブドウを栽培し、ワインを作り始めたのが起源と言われています。その後、ゴールドラッシュにより、人口が急増するとともに、ワインの生産は拡大していきます。
20世紀初めには、禁酒法と呼ばれる法律があり、その際、ワイン作りはいったん衰退するものの、1934年にはカリフォルニアで「ワイン・インスティテュート」という協会が発足するなど、ワイン産業は再度拡大していきます。しかしながら、現在もまだまだ進化中である、と言ってよいでしょう。
カルフォルニア ~アメリカで一番メジャーな産地
アメリカのワイン産地は、主に4か所と言われています。その中でも、最も有名なのが、カリフォルニアのワインでしょう。実際、カリフォルニアでは、アメリカのワインの90%以上が作られていると言われています。また、カリフォルニア大学は、ワインの醸造学として世界トップレベルであることが知られています。
カリフォルニアの気候と土壌
太平洋沿いにあるカリフォルニア州は、海沿いにも、内陸部にも山脈があります。
太平洋の海流は北から南へ流れており、冷たい海流が流れ込んでくるため、海岸線は涼しく、内陸部は乾燥した気候になり、寒暖差も大きくなります。
こういった気候は、ブドウ栽培に適した気候と言えます。また、ブドウ栽培に適した地中海性気候であり、冬の間に雨が降ることでも知られています。
州内でも気候が異なることから、カリフォルニアでは、様々な種類のブドウが栽培されています。ボルドーの品種も、ブルゴーニュの品種も、北のドイツ品種から南のイタリア品種まで、様々な種類のブドウが栽培されており、その結果、生まれるワインも多種多様です。
カリフォルニアのワインの産地として、主に以下の5つが挙げられます。
- ノース・コースト
- セントラル・コースト
- セントラル・ヴァレー
- サウス・コースト
- シエラ・フットヒルズ
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高級ワインといえば『ノース・コースト』
ノース・コーストは、サンフランシスコ湾から北の太平洋沿岸地域にあり、ナパヴァレーや、ソノマカウンティなど、アメリカを代表する高級ワインの産地でもあります。
黒ブドウではカベルネソーヴィニヨン、白ブドウではシャルドネがよく栽培されています。セントラル・ヴァレーなどと比べると規模の小さいワイナリーが多くなりますが、カリフォルニアのワインを語る上ではずせない地域と言ってよいでしょう。
伝統の『セントラル・コースト』
セントラル・コーストは、ノース・コーストの南に位置する、冷涼な地域です。カリフォルニアの中でも、ワイン生産の歴史が古く伝統ある地域になります。
沿岸部では、その気候を生かして、主にシャルドネやピノノワールが栽培されています。一方、内陸部は乾燥ており、ボルドー系の品種やローヌ系の品種が主に栽培されています。
ブドウの栽培No.1『セントラル・ヴァレー』
セントラル・ヴァレーは海岸地帯の山脈とシェラネバダ山脈の間に位置する場所で、ブドウの栽培ではカリフォルニア最大の地域になります。比較的大規模なワイナリーが多いことが特徴です。
アメリカワインの起源『サウス・コースト』
サウス・コーストは、ロサンゼルスの南から、メキシコまで、長く続く地域です。アメリカのワイン作りはこのサウス・コーストからはじまったと言われています。現在は、日常的なテーブルワインが数多く生産されています。
ゴールドラッシュとともに…『シエラ・フットヒルズ』
シエラ・フットヒルズは、シェラネバダ山脈の西側の山麓に位置する、標高の高い冷涼な地域です。もともと、ゴールドラッシュの主要地域であり、ゴールドラッシュに伴いブドウ栽培が始まったと言われています。今では、ジンファンデルが主に生産されています。
カリフォルニアのカルトワインとは?
カリフォルニアのワインを語るにあたり、カルトワインについて触れないわけにはいきません。
カルトワインとは?
カルトワインとは、高品質かつ少量で、あまり人の目に触れないワインのことを言います。
1990年頃からその言葉が使われ始めたと言われており、世界の評論家が高い評価をつけたにもかかわらず、あまり知名度が高くなく、そして、生産量も少ないため、価格が一気に沸騰し、世界中で争奪戦が繰り広げられるワインのことを指すようです。そのカルトワインの産地の代表として、このカリフォルニアがあがることが多いのです。
『スクリーミング・イーグル』カルトワインの代表
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そんなカリフォルニアのカルトワインの代表格と言えば、スクリーミング・イーグルでしょう。
スクリーミング・イーグルは1986年に設立されたワイナリーです。当時はリースリングを栽培し、他のワイナリーにブドウを卸していましたが、自社でワインを作ると決めてからは、メルローやカベルネフラン、プティヴェルドやソーヴィニヨンブランの栽培を始めたそうです。
ファースト・ヴィンテージのワインは1992年ですが、このワインがロバート・パーカー氏のパーカーポイントで99点を出したことで、一気に世界的に有名なワインになりました。現在は所有者が変わったものの、わずか20数エーカー程度の栽培しか行われておらず、カルトワインの名は守られ続けています。
その他の地域 ~オレゴン、ワシントン、ニューヨーク
アメリカでは、カリフォルニアの他にも、オレゴン州、ワシントン州、そしてニューヨーク州でワインが作られています。それぞれのワインの特徴を紹介します。
オレゴンのワイン ~トップを独占
オレゴンは、北緯約45度と、フランスとほぼ同じ緯度にある地域です。カリフォルニア同様、太平洋沿いにあるオレゴンでは、ブルゴーニュのように、ピノノワールがよく栽培されています。
オレゴンワインが一躍世界中に名を広めたのは、1979年のことです。フランスで「ブルゴーニュとオレゴンのピノノワールの比較テイスティング」が行われ、オレゴンのジ・アイリー・ヴィンヤーズの「ピノノワール 1975」が第2位になったことから、その価値が注目され始めました。
さらに、1985年にニューヨークで行われた「ブルゴーニュとオレゴンのピノノワール計30種ブラインドテイスティング」の結果、1位から5位までをオレゴンのワインが独占したことで、さらにオレゴンワインの評価は高まります。
今や世界三大ピノノワールの産地とも言われており、お買い得で品質の高い、コストパフォーマンスの良いワインを提供することで知られています。
ワシントン州のワイン ~生産量全米2位の
ワシントン州は、アメリカ合衆国の北西に位置し、その緯度はフランスのボルドーとほぼ同じです。カリフォルニアに次いで、全米2位の生産量を誇るワインの産地でもあります。
黒ブドウはメルローやシラー、白ブドウはシャルドネやリースリングが栽培されています。カリフォルニアの高級ワインのような、熟した果実味と、ボルドーのグランヴァンのようなエレガントさ、両方の特質を兼ね備えていると言われています。
まだ新しい生産地であり、毎年クオリティーが上がっている、今最も注目度が高いワイン産地の1つであると言えるでしょう。
ニューヨーク州のワイン ~アメリカワイン商業生産の祖
カリフォルニア、オレゴン、ワシントンがそれぞれ西海岸、太平洋沿いにあるのに対し、ニューヨーク州は五大湖の近くで、大西洋側にあるのが特徴です。
あまり、日本でその名前を聞くことは少ないですが、カリフォルニア州、ワシントン州に次いで、全米3位の生産量を誇り、300以上のワイナリーがひしめいています。小規模なワイン生産者が多いことが特徴です。ブドウはリースリングやピノノワールが栽培されています。
アメリカではじめて、商業生産のワインが作られたのがニューヨーク州だったと言われています。現在では、アメリカの地産地消である、「LOCAL」という動きの中で、マンハッタンなどでもニューヨーク州のワインを見かけることが増えました。今後、日本でも注目度が高まっていくと言えるでしょう。
アメリカワインのおすすめは?
では、そんな多様なアメリカワインの中でも、特におすすめを紹介します。
カルフォルニアの代表『オーパス・ワン』
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アメリカ、カリフォルニアを代表するワインが、このオーパス・ワンです。
ワイナリー
オーパス・ワンはボルドーの名門、シャトー・ムートン・ロートシルトを所有するバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド氏と、カリフォルニアワイン界の重鎮、ロバート・モンダヴィ氏の2名によって、作られたワイナリーです。
1960年代にバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド氏がカリフォルニアを訪れた際に、その気候に感銘を受け、すでにナパヴァレーにワイナリーを設立していたロバート・モンダヴィ氏と出会ったことがきっかけです。
コンセプト
オーパス・ワンのコンセプトは、「ボルドーの伝統的ワイン製造法と、カリフォルニアの豊穣なテロワールを活かし、唯一の最高品質のワインを作る」ことです。それはワイナリーの名前にも込められており、オーパス・ワンとは、クラシックの「作品番号1」という意味なのです。
ファースト・ヴィンテージ
オーパス・ワンは1979年にファースト・ヴィンテージが作られ、そのワインが1981年に開催されたカリフォルニアのワインオークションにおいて、1本2,000ドル以上の高値で落札されたことで話題になり、その後世界的に有名になりました。自社ワイナリーは、1991年に完成しています。
オーパス・ワンの自社畑はナパヴァレーのオークヴィル地区にあり、カベルネソーヴィニヨンをはじめ、カベルネフラン、プティヴェルド、メルロー、マルベックの5種のブドウが栽培されています。
ワイン作り
最高のコンディションの果実を使うために、夜に収穫を行ったり、ブドウの管理を、畑の区画ごとに行うなど、細心の注意を払いながらワイン作りを行っています。
約3年の熟成を経て出荷されるワインは、花びらの香りから、白トリュフやナツメグなどの香り、そして、柔らかい飲み口と舌ざわりが特徴です。長い余韻を味わえるワインで、世界中から愛されています。
『シルバー・オーク』長く愛さているクラシックワイン
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シルバー・オークも、カリフォルニアを代表するワイナリーと言ってよいでしょう。アメリカ国内でも人気が高く、全米の様々なステーキハウスのワインリストに載っている、長く愛され続けるアメリカのクラシックワインです。1972年に、レイ・ダンカン氏によってナパヴァレーに創業されました。
「Life is Cabernet!」というキャッチフレーズを掲げており、カベルネソーヴィニヨンのワインが有名です。ナパヴァレーのカベルネソーヴィニヨンと、アレキサンダー・ヴァレーのカベルネソーヴィニヨン、それぞれの畑のテロワールを生かしながら、それぞれの個性をブレンドすることで、豊かな果実味溢れる、複雑で奥行きのあるワインを作っています。
ハーマン・J・ウィーマー
ハーマン・J・ウィーマーは、ニューヨークのワインの生産者です。もともとはドイツのモーゼルで300年以上ワインを作っていた家系の出身で、彼自身もドイツのブドウ栽培研究機関でワインを学んでいました。
その後、素晴らしいブドウを造れる最適な地を探していたところ、当時はワイン産地として注目されていなかったニューヨーク州フィンガーレイクス地方が故郷のモーゼルに土壌や気候が似ていることに注目し、この地で1979年にワインを作り始めました。
ファースト・ヴィンテージのリースリングとシャルドネがニューヨークのコンテストで金賞を受賞し、設立当初から評価の高いワイナリーになります。
テロワールだけでなく、栽培方法にも独自の拘りを持っており、殺虫剤、除草剤、化学肥料などを一切使わないサステイナブルな農法と、人工酵母を使用せずに天然酵母のみを使う伝統的な醸造法を行っています。現在では米国「ワイン&スピリッツ」誌で、7年連続で世界のトップ100ワイナリーに選ばれ、全米トップのリースリングを生み出すワイナリーとして非常に高い評価を受けています。
アルゼンチンワインの魅力を紹介!
続いては、世界第5位で、南米最大のワイン産地である、アルゼンチンワインを紹介します。
アルゼンチンワインの歩み
かつてスペインの植民地であったアルゼンチンは、そのスペインの支配下の時代だった、16世紀の初め頃、スペイン人の宣教師によって紹介されたことから、ブドウの栽培が始まったと言われています。19世紀には、ヨーロッパからの移民などにより、醸造技術や栽培技術が紹介され、また、フランスやイタリアのブドウ品種が持ち込まれたことから、アルゼンチンのワイン産業は大きく発展しました。近代では、1990年代に多くの外国資本が流入し、近代的な醸造が本格化し、最近では高級ワインの生産にも取り組んでいます。
アルゼンチンの主なワイン産地は?
アルゼンチンは、南アメリカ大陸の南部に大きな逆三角形の国土を有します。その中でも、チリとの国境の、アンデス山脈の東の麓に沿った地域の、南緯25度から南緯40度くらいの間にワイン生産地が連なっています。乾燥した大陸性気候であり、また、ブドウ栽培に適した砂土やローム層などの土壌が特徴です。アンデスから吹き下ろす風のおかげで、冬は乾燥し、夏も湿度が低く雨が少ない一方、アンデスの雪から生まれる美しく豊富な水に恵まれていることも特徴です。
このような恵まれた環境で育てられているブドウは、黒ブドウでは地場のマルベック、カベルネソーヴィニヨンなど、白ブドウではシャルドネ、シュナンブラン、そして地場のトロンテスリオハーノなどがよく栽培されています。そこから生まれる赤ワインは、美しいルビー色で果実味が豊かで力強いのが特徴で、白ワインはバランスがよく、調和のとれたものが多く作られています。
ワインの生産地域は北西部・中央西部・南部の3か所に分けられます。このうち、最も有名なのは、中央西部のメンドーサ州。同州では栽培面積は80%以上、生産量は3分の2を誇り、独特の強い香りを持つ力強い赤ワインが多く作られています。近年では世界的なニーズの高い高品質なワイン作りにも取り組んでおり、有名になったワイナリーも存在します。ルハン・デ・クージョ、サン・ラファエルという2つの原産地呼称を持っています。
他にもサン・ファンと呼ばれる産地や、バジェス・デ・ファマティナという原産地呼称を持つラ・リオハと呼ばれる産地が有名です。
アルゼンチンワインのおすすめは?
アルゼンチンワインは、デイリーで飲みやすいワインが多くあります。その中でも、アルゼンチンワインのおすすめは、以下のワインです。
レオ・マルベック・プレミアム
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レオ・マルベック・プレミアムは、マルベック種100%の、力強いワインです。プロデュースしているのが、あのサッカー界のスーパースターである、レオナルド・メッシの財団、メッシ財団なのです。
ラベルには、サッカーボールをモチーフにしたデザインと、LEOの名がしっかりと入っています。また、ワインの収益の一部は、財団を通じて社会的に困難な状況の子供たちのために寄付される仕組みにもなっています。作り手は、カーサビアンキと呼ばれる、アルゼンチンの中でも評価の高いワイナリーになります。
完熟したプラムやチェリー、ナツメグや黒コショウの濃縮したスパイスの香りが感じられる、力強いワインになります。飲むと、タンニンの成熟した感じが楽しめ、濃厚さが口に広がります。値段も決して高くはなく、コストパフォーマンスの高いワインと言えるでしょう。
ボデガ・チャクラ
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ボデガ・チャクラは、チリとアルゼンチンにまたがり、氷河とアルプスに囲まれた、パタゴニア地方で生まれたワイナリーです。このワイナリーは、スーパータスカン「サッシカイア」のオーナーの甥である、ピエロ氏が運営しています。
古くは1932年、樹齢80年を超えるという古樹のピノノワールが特徴で、できるだけ、人為的な介入を排除するために、ビオディナミという製法を取り入れています。例えば、通常だと、機械を使用する、果実と茎を分ける作業も、ボデガ・チャクラでは、全て手作業で行っています。
こうして作られたボデガ・チャクラのワインは、凝縮されたアロマとエキスが楽しめます。バラの花、ハーブ、あらゆる新鮮なフルーツの複雑な香りと、繊細なタンニンが特徴で、飲み終わった後に長い余韻が残るワインになります。
まとめ
今回は、世界第4位、第5位の生産国である、アメリカとアルゼンチンのワインを紹介しました。どちらも広大な国土に、ヨーロッパから技術を持ち込まれたことで、ワイン作りが発達してきた土地で、本場をしのぐほど有名なワインも生まれつつあります。
次回は、ニューワールドの残りの、オーストラリア、チリ、南アフリカのワインを紹介します。ぜひ、アメリカ、アルゼンチンのワインも、気軽に楽しんでみてくださいね。
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