今回は2018年上半期に第1巻が発売予定の漫画の中から、ぜひ注目してもらいたい話題作・意欲作を独断と偏見で紹介していきます。
「最近出たばかりの漫画で面白いやつないかな」と探してる人や「これから新しい漫画雑誌読んでみようかな」という人の導線に、また単行本が発売されたときに「そういやこんな作品紹介してたな」と店頭で手に取ってもらえたら幸いです。
以前にこんな記事を書いているので気になる作品あれば雑誌の方もぜひ覗いてみてください。
ではさっそく紹介していきます。
売れなきゃおかしい!鉄板の話題作
地獄楽(少年ジャンプ+/賀来ゆうじ)
第一話が公開されるやいなや有名漫画家や多くの漫画好きの読者の目に留まり拡散された話題作。
生きるか死ぬか、張り詰めた緊張感のある台詞回しや迫力のアクションシーンが見所で、「あの世」での摩訶不思議な出来事や凶悪犯による凶行など、これから何が起こってもおかしくない状況で繰り広げられる息をつかせぬ展開に非常にワクワクさせられます。
「不老不死の仙薬」を求めて訪れた「あの世」は噂に違わぬ極楽か、それとも想像を絶する地獄なのか。要注目の一作です。
ミステリという勿れ(月刊フラワーズ/田村 由美)
探偵でも検事でも小説家でもない、もじゃもじゃ大学生が独自の思考と観察眼をもって喋り倒すなかなか変わった内容。だけど不思議と面白い。
「みんながルールを守って楽しんでるプールでわざわざ棒高跳びをしたい」
「真実は1つじゃない。人の数だけあるんですよ」など独特の台詞回しが秀逸で、変わった例えなのに妙にストンと府に落ちるものがある。コナンくんもこれにはタジタジしそうな新感覚ストーリー。
野暮ったく感じてもおかしくないのに思いの外読みやすい不思議な作品。
ドラゴン桜2(週刊モーニング/三田紀房)
2020年は日本にとって大きな転換期となる。東京オリンピックなどの喜ばしい話題からその後に直面するであろう様々な諸問題、その中で多くの若者にとって避けては通れないことがある。
それが「大学入試改革」。センター試験が廃止され、従来と全く異なる問題への対応に戸惑いを隠せない学生は多いことでしょう。
そんな2020年の教育改革を前に、再びあの男が帰ってきた。
生徒の学力が低下し、再び落ちぶれてしまった龍山高校で何が起こり、彼の手腕により生徒たちはどう変わっていくのか。
明治の学制、戦後の民主教育に次ぐ大規模な変革で、日本の教育システムが変わる。教育が変われば、社会が変わる。
激動の時代を前に、必要なのは、間違いなくあの男——!
コールドゲーム(ベツコミ/和泉 かねよし)
ここはあらゆる陰謀と策略が蠢く宮殿。ドレスが甲冑、笑顔が盾。
女性が自分自身を守るにはあまりにも無力で理不尽なこの世界でできるだけ憎まず争わず生きていければいい。そんな願いが叶うはずもなく…。
秘密と野望を抱える少女の、恋とプライドを懸けた宮廷サバイバル。
1巻は壮絶な物語の序章という感じですが大ヒット作『女王の花』の最新作ということで、これから更なる盛り上がりを見せてくれそうな予感を感じさせます。
言葉が、運命を変えていく
今この時代に必要なものは絶対的な強者でも、完璧な理論でもない、言葉の強さだと私は考えます。
「言葉は、武器だ!」をキャッチフレーズに挑む曽田正人の新連載はラップ漫画。
フリースタイルバトルブームに乗って数多くのラッパー漫画が誕生してきましたが熱量の高さでは他の追随を許さない勢いを感じさせます。
茶化しなしのド直球の言葉と言葉の真剣勝負が果たしてどれほどの読者を掴むのか。
ひ弱だった主人公の成長と内に秘める熱いハートに注目していきたい。
圕(としょかん)の大魔術師(good!アフタヌーン/泉光)
読むと勇気を貰える、そんな漫画が私は好きです。
圧倒的な画力と暮らす人々の服装や文化まで徹底した緻密さで作りこまれており、その壮大な世界観に1話目からワクワクしていました。
それが2話目3話目と読むことで、画力だけに留まらない確かな言葉の力強さに次第に惚れて込んでいきました。
このご時世で多くの人が心無い言葉に疲弊しているのではないでしょうか。そんな人に勧めたい漫画があります。
常に光となって正しい行いをする者を奮い立たせるような力強さに溢れた一作です。
私の上半期イチオシの新作は間違いなくこの『圕(としょかん)の大魔術師』
図書館の大魔術師ではなく、「くにがまえに書」という珍しい書体を使用しているのが特徴的です。ぜひ覚えてくだされば幸いです。
漫画が好きな人はもちろん、本を愛する全ての人にこの漫画が届いて欲しい。
遺書、公開。(月刊ガンガンJOKER/陽 東太郎)
品行方正、容姿端麗、学業優秀、明るい性格でクラスの人気者だった姫山椿がある日突然自殺した。
突然の人気者の死に茫然自失のクラスメイトたちの待つ教室には、死んだはずの姫山椿からの遺書が置かれていた。
この遺書をきっかけに暴かれていく事件の真相、スクールカーストによって歪まされたクラスメイトの本性と狂気の行方に目が離せません。
果たして死者からの手紙は本当の意味は何なのか?
ドス黒い悪意によってあらゆるものが黒く染まっていく様に思わず息を飲む刺激的なミステリー。
なぜ貴方は”これ”を残して死んだんですか?
週刊少年ハチ(週刊少年チャンピオン/増田英二)
『実は私は』の作者が挑む新作はマンガの専門学校を舞台にした、いわゆるマンガ家漫画。
本作は強力なライバルと一癖ありそうな先輩の存在などバトル漫画で見かけられるようなオーソドックスな展開も多々あるが、熱量を持って描こうとしているのが見て取れて非常に好感が持てる。
「これは挑戦です」と作者がコメントしたところからも見て取れるように、本作を描く中で主人公、そして作者自身が一皮剥ける瞬間を目撃できるかもしれない。プロを目指すがゆえの妥協しない本気のぶつかり合いには読んでて燃えます。
キャラこそ命!個性派揃いのヒロイン
ジャヒ―様はくじけない!(月刊ガンガンJOKER/昆布わかめ)
魔界No.2(元)のジャヒー様がなんやかんやあって現代日本にやってきて色々頑張るお話。
魔界ではやりたい放題だったジャヒ―様も、こちらの世界では魔力がないため可愛らしい姿に。
ちょっとうまくいくとすぐ調子に乗ったり、空回りしたり、不憫だけど可愛いです。
清々しいまでの開き直りっぷりで勢いもあり、ジャヒ―様を取り巻く周囲の登場人物たちもキャラが立ってて読んでて楽しい。残念カワイイ魔界復興コメディ。
同月発売のに世界で一番おっぱいが好き! 1 (MFC キューンシリーズ)でもジャヒ―様は同様、作者の好きを詰め込んだ作品となっておりこれからが楽しみな漫画家の一人です。
七億円を手に入れたボクにありがちなこと(月刊少年エース/川村拓)
「5000兆円欲しい‼」なんてネタをネットで耳にすることがあります。
絶対ありえないからこその冗談も、少し現実的な金額になると途端にリアリティを増していきます。
1万円じゃ人生は変わらないけど、1億円なら人生の歯車を変えることは可能でしょう。
じゃあ7億円がもし当たったら?それは本当に幸せなんでしょうか?
突然寄付を求める人が殺到してきたり、あらゆる人が金目当ての人にすり寄ってくるようにしか見えなくなるかもしれません。
そんな事態になるのを恐れ、当選を秘密にしながら普段通りの生活を続けようとする主人公の前に突如現れたのは生き別れの妹と急に近づいてきた幼なじみ。
コミカルな作画と裏腹に、ダークな内容で攻めるアンバランスさがクセになる意欲作。
これはラブコメ?サスペンス?それともホラー?
読む人によって意見が分かれそうな、色んな意味でドキドキが止まらないストーリー。
女神のスプリンター(月刊ヤングマガジン/漫画:かろちー、原作:原田重光)
『ユリア100式』『モトヨメ』などを手掛け現代エロコメの第一人者として一部で有名な原作者・原田重光と成年漫画誌で活躍中のかろちーが組んだらとんでもなくエロい漫画が生まれました。
アスリートに不可欠な男性ホルモンであるテストステロンを高い位置で保つために、性欲を管理する禁欲トレーニング(略して禁トレ)を陸上コーチである義姉の主導で行うというお話。
ちょっと何言ってるかわかんないけどエロい話好きだよという人はとにかく読んでみましょう。
「これ一般誌でやって大丈夫なの」と心配になるほどに刺激的で斬新なトレーニング方法は目に留まれば間違いなく話題になると思います。
月刊ヤングマガジンでの連載ということで今はまだ知名度が今一つですが単行本発売された頃から徐々にざわざわしそうな気がします。
基本的にエロ度が高めなお話でスポーツ要素は薄いですが『しあわせアフロ田中』6巻と併読することで禁トレに目覚める可能性がわずかながらに存在する。唐突に出てくる迷言がツボ。
心がざわめく問題作
二月の勝者 ー絶対合格の教室ー(週刊スピリッツ/高瀬 志帆)
これまで受験漫画と言えば『ドラゴン桜』一強であったがそこに名乗りを上げようとする漫画が現れた。本作は中学受験をテーマにした話である。
「絶対」という言葉には多大な責任が伴うものであるが、確かな理論とインパクトのある言葉を持ってして物語に説得力と求心力を持たせており、熱意の込められた意欲作となっている。
2020年の教育改革の頃に多くの受験生、そして保護者が為になった、支えになったという声が聞けるような作品になることを願っています。
Op‐オプ‐ 夜明至の色のない日々(イブニング/ヨネダコウ)
一癖ある保険調査員の男と少年による「嘘」を暴く新感覚ミステリー。
時折コミカルなシーンを挟みながらも登場人物たちに様々な過去を感じさせる伏線を織り混ぜて、重厚さを感じさせるストーリーになっている。
作中で「ボーイズがラブなことにはなりませんから‼」とメタっているようにBLで活躍中の作家であるが、今作は若干距離感が近いかなと感じるぐらいでハードボイルドさを兼ね備えた青年漫画という印象。男女問わず楽しめる一作です。
ただ離婚してないだけ(月刊ヤングアニマル嵐/本田優貴)
主人公は、結婚7年目の妻と3年間セックスレスで夫婦らしい会話もなく、タイトル通り“ただ離婚してないだけ”という関係で日々を暮らしていた。しかし主人公には17歳の愛人がいて……。
『東京闇虫』を手掛けた作者が「ただ離婚してないだけ」なんて冷え切った夫婦関係のまま進ませるはずもなく…
創作とは思えない臨場感と目を背けたくなるようなドロドロした感情に「どうして結婚したのかな」と読んでて苦しくなる。でも続きが気になって仕方がない、そんな漫画力の高さが光ります。
テーマは、神と人類による最終闘争・ラグナロク。1000年に1度の創造主たちによる会議で人類滅亡が決定するも、最後のチャンスとして人類が神との一対一勝負(タイマン)に勝利すれば生存を許されることに。
神と人類がタイマンを張るという、ともすれば荒唐無稽ともとれるストーリーをハッタリを利いた台詞回しとド迫力のアクションシーンで成立させるという力技がすごい。
どの偉人と神がタイマンを張るのか、アドレナリンがドバドバ出るような壮絶なバトルを期待したい。
ノイズ【noise】(グランドジャンプ/筒井哲也)
映画化・ドラマ化もされた『予告犯』や、文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞した『有害都市』など時代の潮流の中で起こりえそうな事件をセンセーショナルに描き、読者に問題提起し続けてきた鬼才の最新作は、とある小さな集落に身分を偽りやってきた前科者を巡るサスペンス。
もがきながら少しずつ前進してきた主人公たちにとって、邪魔でしかない「雑音」は彼らにどんな運命を訪れさせるのか。今後の展開に目が離せません。
今注目の新進気鋭の作家4選
最果てのパラディン(コミックガルド/原作:柳野かなた、漫画:奥橋睦、キャラクター原案:輪くすさが)
ジャンル的には今どき流行りの転生ものに区分されるが、古き良き王道ファンタジーと言って差し支えない上質で硬派な構成が光ります。
というのも物語を円滑にするための小道具として転生が使われるのではなく、前世の出来事と絡み合っていて、自分がどうして死者に拾われ、育てられているのか。
自分は一体何者なのか。謎が次第に明かされていき、真実に近づくほどに周りの優しさが胸に来ます。
世界観も素晴らしく、これまで見えなかった世界には何があるのだろうと好奇心が疼きいます。FFが好きな人はおそらく好み。
なぜ言葉にはこんなにも力があるのか、本作を読むことで気付くことがあるかもしれません。
魔女の怪画集(月刊ジャンプSQ/晴智)
絵を所有する者に奇跡を起こす少女アイシャの描く怪画を巡る額装ファンタジー。
舞台となるのは少女が魔女と称され消えた後の世界の話であるが、果たしてこの少女がどうして生まれたのか、そのルーツが辿る話にも発展していきそう。
悲しいお話ですが決して後ろ向きな話ではない。怪画を封印したあとに語られる美しい絵にも注目して欲しい。美麗なタッチが印象的な作品。
たった一人の君と七十億の死神(少年マガジンR/原作:ツカサ、漫画:松永孝之)
遠木晴太と玖城淡雪は、惹かれ合い恋をした。しかしそんな二人に、残酷な運命が空の彼方より襲いかかる…。
『縦横無尽のファフニール』のツカサ原作で贈る、恋愛×バトルファンタジー。
細かい設定はこれから判明していくためなんとも言えないが、多くの困難が待ち受ける先で判明していく事実にこれまで読んできた見方がまるっと変わってきそうな不吉で先の読めない展開が魅力的。
突然訪れたあまりにも理不尽な死神の襲来によって紡がれる二人の恋は果たしてどんな結末を迎えるのか注目していきたい。
たった一人の君と七十億の死神|少年マガジンR|講談社コミックプラス
なつやすみの友(月刊ビッグガンガン/雨野さやか)
柔らかく透明感のある作画とじわじわ浸透するような言葉の確かさが魅力的なビッグガンガン期待の新鋭が描く、“不倫”と“家族”の物語。
不倫という背徳感のあるテーマ、そして大人の女性と少年という組み合わせに『私の少年』のような得も言われぬ趣深さを連想したのですが、それとはまた違うベクトルで心に響く巧みな描写が光ります。
「夏休みの宿題はこの不倫を終わらせること。」自らに課したこの宿題は一体どんな結末を向けるのか、ぜひ一読あれ。
この雨野さやかさんは同時発売の星の砂 雨野さやか短編集 (ビッグガンガンコミックス)も見逃せません。
個人的にはむしろこちらの方が私にとって宝石のように輝く作品でした。
忘れえぬ出会いを詰め込んだ、心温まる短編集で、表題作の「星の砂」の他、中短編からなる複数の読み切りがこちらでは収録されています。
言葉でこの人の面白さをどう表現すればいいのかちょっと悩ましいところなので発売されたら改めて詳しく書きたいと思います。
全1巻と手に取りやすいと思うので軽率に本屋で手に取ってください。優しい作品です。
おわりに
以上20タイトルでした。今回のプロトタイプにあたる次にきてほしいマンガ2017 - よみコミ!
とは少しやり方を変えて事前に漫画好きの人からの注目の新連載を聞いていたので前回より幅広い雑誌・ジャンルから紹介することができました。おすすめしていただいた方々本当にありがとうございます。
新連載は特に意識して結構読んでるつもりでも半分以上は知らない作品で漫画の世界の深さを思い知らされました。
最近は漫画雑誌を読んでる人が少ないとよく耳にするので、ここで初めて知った作品も多いと思います。
それでも何かピンとくるものがあって実際に雑誌や単行本を手に取ってくれれば嬉しいし、同じように面白いと思ってくれる人がいれば飛び跳ねて喜びます。
最近は漫画業界にとって苦しい話を耳にすることがよくありますが、読んだ人のそんなモヤモヤを吹き飛ばすような作品や、不況を吹き飛ばすようなヒット作が出てくると嬉しいです。今回はこの辺で、それではまた。
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