教育大国アメリカはローン地獄に悩んでいる

対照的に日本は教育まで「デフレ」だ

日本は米国に比べて授業料が高くない分、質が低く、安易に大卒のパスポートが得られる?(写真:IYO/PIXTA)

4月1日、日本で初めて「給付型奨学金」が創設された。しかし、給付額は、私立大学で1人当たり月3万~4万円、年間でも数十万円にとどまる。

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一方、米国の私立大学生は、授業料と生活費の全額に相当する数百万円の奨学金が受けられることもある。しかし、それ以外の学生の負担額は大きい。このため米国では、大多数の学生が学生ローンを組み、"借金漬け"で社会に出る。

まったく異なる日米の大学制度についてみていこう。

米国では4470万人が学生ローンを抱えている

「米国経済は何かが間違っている」――。 JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOが、4月4日付の株主への書簡にこう書いた 。堅調な米国経済に潜む問題点の1つとして触れられていたのが巨額な「学生ローン」である。

米国では、私大生の75%が、平均400万円もの学生ローンを抱えている。2000万円以上の人も41万人を超える。米国の成人人口の4人に1人、4470万人もの人々が学生ローンを抱えて暮らしているのである。しかも、これらの学生ローンの大半は米国連邦からの借り入れであるため、日本と異なり、自己破産を宣言しても返済義務は消滅しない 。

ちなみに日本の政策金融公庫の教育ローン残高は2017年2月末で8800億円にすぎない。民間銀行の教育ローンの残高統計はないが、仮に住宅ローン以外の貸し出しの5分の1が教育ローンだとしても3兆円程度にしかならない 。米国とはケタが違う。

米国の学生がここまで借金漬けになったのは、この10年のことだ。学生ローンの総額は2006年から2016年にかけ、2.7倍の145兆円になった。

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  • NO NAME2de6718deb4b
    自国の矛盾から目を逸らさせたいとき、あの国を見ろ、あれよりはマシだろう式論法の原型は、いつごろからあるのだろうか・・・
    up27
    down8
    2017/4/17 07:35
  • 一休さん時代の帰国子女2d92638dfa34
    欧州との単純比較は誤解を招く。欧州では統一学力考査(有名なバカロレアやアビトゥア)に合格したものが大学にいくため、学生の質は一定以上。無償ゆえ入学後の成績・卒業要件も厳しい(給与付の日本の防衛大学などにも通じる)。私大文系などの抜け道もない。

    一方、アメリカも貧困家庭向けの奨学金は各大学で充実させており、優秀な学生の囲い込みには熱心。ハーバードは8万ドル以下?程度で奨学金を出していたはず。これとは別にローズ奨学生になれるような超優秀な学生には親の資力と関係なく奨学金を出す。また、奨学金なしの条件で一般より優先で合格する人もいる。要は、中国人留学生など金満家庭からは、定価+アルファ(寄付金)などをキッチリとり、メリハリをつける。

    欧州でも米国でも金銭的困窮に対する官民の支援はあるが、一定以下の学力水準の生徒を支援する国は皆無。ただし、大学以外の低廉な職業訓練校的な制度は充実している。
    up16
    down0
    2017/4/17 09:16
  • NO NAMEbebe714cf827
    アメリカの学費が高くなっているのは事実だが質が上がっているというのはどういう根拠で言っているのだろうか、「アメリカの大学の裏側」という本では学費の高騰は大学の設備(寮などの学業にあまり関係のないもの)と事務員などの方の急増によっておきたものと書かれていた。また、学費高騰のためこれだけ学費を払っているのだからという理屈で実際の学力とは無関係に成績の平均が上がっているとの話がある。適当に調べた結果の記事としか思えない。きちんと調べてから記事にして欲しい。
    up21
    down8
    2017/4/17 11:13
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