第一条 収税官吏ハ国税(関税及噸税ヲ除ク以下同シ)ニ関スル犯則事件(以下犯則事件ト称ス)ヲ調査スル為必要アルトキハ犯則嫌疑者若ハ参考人ニ対シ質問シ、犯則嫌疑者ノ所持スル物件、帳簿、書類等ヲ検査シ又ハ此等ノ者ニ於テ任意ニ提出シタル物ヲ領置スルコトヲ得
○2 収税官吏ハ犯則事件ヲ調査スル為必要アルトキハ参考人ノ所持スル物件、帳簿、書類等ヲ検査スルコトヲ得
○3 収税官吏ハ犯則事件ノ調査ニ付キ官公署又ハ公私ノ団体ニ照会シテ必要ナル事項ノ報告ヲ求ムルコトヲ得
第二条 収税官吏ハ犯則事件ヲ調査スル為必要アルトキハ其ノ所属官署ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所又ハ簡易裁判所ノ裁判官ノ許可ヲ得テ臨検、捜索又ハ差押ヲ為スコトヲ得
○2 前項ノ場合ニ於テ急速ヲ要スルトキハ収税官吏ハ臨検スヘキ場所、捜索スヘキ身体若ハ物件又ハ差押ヲ為スヘキ物件ノ所在地ヲ管轄スル地方裁判所又ハ簡易裁判所ノ裁判官ノ許可ヲ得テ前項ノ処分ヲ為スコトヲ得
○3 収税官吏第一項又ハ前項ノ許可ヲ請求セントスルトキハ其ノ理由ヲ明示シテ之ヲ為スヘシ
○4 前項ノ請求アリタルトキハ地方裁判所又ハ簡易裁判所ノ裁判官ハ臨検スヘキ場所、捜索スヘキ身体又ハ物件、差押ヲ為スヘキ物件、請求者ノ官職氏名、有効期間及裁判所名ヲ記載シ自己ノ記名捺印シタル許可状ヲ収税官吏ニ交付スヘシ此ノ場合ニ於テ犯則嫌疑者ノ氏名及犯則事実明カナルトキハ裁判官ハ此等ノ事項ヲモ記載スヘシ
○5 収税官吏ハ前項ノ許可状ヲ他ノ収税官吏ニ交付シテ臨検、捜索又ハ差押ヲ為サシムルコトヲ得
第三条 間接国税ニ関シ現ニ犯則ヲ行ヒ又ハ現ニ犯則ヲ行ヒ終リタル際ニ発覚シタル事件ニ付其ノ証憑ヲ集取スル為必要ニシテ且急速ヲ要シ前条第一項又ハ第二項ノ許可ヲ得ルコト能ハサルトキハ其ノ犯則ノ現場ニ於テ収税官吏ハ同条第一項ノ処分ヲ為スコトヲ得
○2 間接国税ニ関シ現ニ犯則ニ供シタル物件若ハ犯則ニ因リ得タル物件ヲ所持シ又ハ顕著ナル犯則ノ痕跡アリテ犯則アリト思料セラルル者アル場合ニ於テ其ノ証憑ヲ集取スル為必要ニシテ且急速ヲ要シ前条第一項又ハ第二項ノ許可ヲ得ルコト能ハサルトキハ其ノ者ノ所持スル物件ニ対シ収税官吏ハ同条第一項ノ処分ヲ為スコトヲ得
第三条ノ二 収税官吏臨検、捜索又ハ差押ヲ為スニ当リ必要アルトキハ錠ヲ外シ戸扉又ハ封ヲ開ク等ノ処分ヲ為スコトヲ得
○2 前項ノ処分ハ差押物件又ハ領置物件ニ付テモ之ヲ為スコトヲ得
第四条 収税官吏質問、検査、領置、臨検、捜索又ハ差押ヲ為ストキハ其ノ身分ヲ証明スヘキ証票ヲ携帯スヘシ
第五条 収税官吏臨検、捜索又ハ差押ヲ為スニ当リ必要ナルトキハ警察官ノ援助ヲ求ムルコトヲ得
第六条 収税官吏捜索ヲ為ストキハ捜索スヘキ家宅、倉庫、船車其ノ他ノ場所ノ所有主、借主、管理者、事務員又ハ同居ノ親族、雇人、鄰佑ニシテ成年ニ達シタル者ヲシテ立会ハシムヘシ
○2 前項ニ掲クル者其ノ地ニ在ラサルトキ又ハ立会ヲ拒ミタルトキハ其ノ地ノ警察官又ハ市町村長ノ補助機関タル職員ヲシテ立会ハシムヘシ
○3 女子ノ身体ノ捜索ニ付テハ成年ノ女子ヲシテ立会ハシムベシ但シ急速ヲ要スル場合ハ此ノ限ニ在ラズ
第七条 収税官吏物件、帳簿、書類等ヲ差押ヘタルトキ又ハ領置シタルトキハ其ノ差押目録又ハ領置目録ヲ作ルヘシ但シ所有者又ハ所持者ハ其ノ差押目録又ハ領置目録ノ謄本ヲ請求スルコトヲ得
○2 差押物件又ハ領置物件ハ便宜ニ依リ保管証ヲ徴シ所有者、所持者又ハ官公署ヲシテ保管セシムルコトヲ得
○3 差押物件又ハ領置物件腐敗其ノ他損傷ノ虞アルトキハ国税庁長官、国税局長又ハ税務署長ハ之ヲ公売ニ付シ其ノ代金ヲ供託スルコトヲ得
○4 収税官吏差押物件又ハ領置物件ニ付留置ノ必要ナシト認ムルトキハ之ヲ還付スベシ
第八条 収税官吏ハ日没ヨリ日出マテノ間臨検、捜索又ハ差押ヲ為スコトヲ得ス但シ第三条ノ規定ニ依ル処分ヲ為ス場合ハ此ノ限ニ在ラス
○2 日没前ヨリ開始シタル臨検、捜索又ハ差押ニシテ必要アル場合ハ日没後迄之ヲ継続スルコトヲ得
○3 収税官吏ハ政令ヲ以テ定ムル国税ニ付テハ旅店、飲食店其ノ他夜間ト雖モ公衆ノ出入スルコトヲ得ヘキ場所ニ於テハ其ノ公開シタル時間内ハ第一項ニ規定スル制限ニ拘ラス臨検、捜索又ハ差押ヲ為スコトヲ得
第九条 収税官吏質問、検査、領置、臨検、捜索又ハ差押ヲ為ス間ハ何人ニ限ラス許可ヲ得スシテ其ノ場所ニ出入スルヲ禁スルコトヲ得
第十条 収税官吏質問、検査、領置、臨検、捜索又ハ差押ヲ為シタルトキハ其ノ顛末ヲ記載シ立会人又ハ質問ヲ受ケタル者ニ示シ共ニ署名捺印スヘシ立会人又ハ質問ヲ受ケタル者署名捺印セス又ハ署名捺印スルコト能ハサルトキハ其ノ旨ヲ附記スヘシ
第十一条 犯則事件ノ証憑集取ハ国税庁収税官吏又ハ事件発見地ヲ所轄スル国税局若ハ税務署ノ収税官吏之ヲ為ス
○2 国税庁収税官吏ノ集取シタル間接国税ニ関スル犯則事件ノ証憑ニシテ重要ナル犯則事件ニ関スルモノハ之ヲ所轄国税局収税官吏ニ、ソノ他ノモノハ之ヲ所轄税務署収税官吏ニ引継グベシ
○3 国税局収税官吏ノ集取シタル証憑ハ之ヲ所轄税務署収税官吏ニ引継クヘシ但シ重要ナル犯則事件ノ証憑ニ付テハ此ノ限ニ在ラス
○4 税務署収税官吏ノ集取シタル重要ナル犯則事件ノ証憑ハ之ヲ所轄国税局収税官吏ニ引継クヘシ
○5 同一犯則事件ニ付数箇所ニ於テ発見セラレタル時ハ各発見地ニ於テ集取セラレタル証憑ハ之ヲ最初ノ発見地所轄税務署ノ収税官吏ニ引継クヘシ但シ其ノ証憑カ重要ナル犯則事件ノ証憑ナルトキハ最初ノ発見地所轄国税局ノ収税官吏ニ引継クヘシ
第十二条 国税局又ハ税務署ノ収税官吏前各条ニ依リ質問、検査、領置、臨検、捜索又ハ差押ヲ為スハ其ノ所属国税局又ハ所属税務署ノ管轄区域内ニ限ル但シ既ニ著手シタル犯則事件ニ関聯シ他ノ国税局又ハ税務署ノ管轄区域ニ於テ質問、検査、領置、臨検、捜索又ハ差押ヲ為スヲ必要トスルトキ及急速ヲ要スル場合ニシテ国税庁長官又ハ国税局長ヨリ他ノ国税局又ハ税務署ノ管轄区域内ニ於テ職務ヲ行フベキコトヲ命ゼラレタルトキハ此ノ限ニ在ラス
○2 税務署長ハ其ノ管轄区域外ニ於テ犯則事件ノ調査ヲ必要トスルトキハ之ヲ其ノ地ノ税務署長ニ嘱託スルコトヲ得
○3 国税局長ハ其ノ管轄区域外ニ於テ犯則事件ノ調査ヲ必要トスルトキハ之ヲ其ノ地ノ国税局長又ハ税務署長ニ嘱託スルコトヲ得
第十二条ノ二 収税官吏ハ間接国税以外ノ国税ニ関スル犯則事件ノ調査ニ依リ犯則アリト思料スルトキハ告発ノ手続ヲ為スヘシ
第十三条 国税局又ハ税務署ノ収税官吏間接国税ニ関スル犯則事件ノ調査ヲ終リタルトキハ之ヲ所轄国税局長又ハ所轄税務署長ニ報告スヘシ但シ左ノ場合ニ於テハ直ニ告発スヘシ
○2 国税庁収税官吏間接国税ニ関スル犯則事件ノ調査ヲ終リタルトキハ之ヲ所轄国税局長又ハ所轄税務署長ニ通報スベシ但シ前項各号ノ規定ニ該当スルトキハ直ニ告発スベシ
第十四条 国税局長又ハ税務署長ハ間接国税ニ関スル犯則事件ノ調査ニ依リ犯則ノ心証ヲ得タルトキハ其ノ理由ヲ明示シ罰金若ハ科料ニ相当スル金額、没収品ニ該当スル物品、徴収金ニ相当スル金額及書類送達並差押物件ノ運搬、保管ニ要シタル費用ヲ指定ノ場所ニ納付スヘキ旨ヲ通告スヘシ但シ没収品ニ該当スル物品ニ付テハ納付ノ申出ノミヲ為スヘキ旨ヲ通告スルコトヲ得
○2 犯則者通告ノ旨ヲ履行スルノ資力ナシト認ムルトキハ前項ノ通告ヲ要セス直ニ告発スヘシ情状懲役ノ刑ニ処スヘキモノト思料スルトキ亦同シ
第十五条 前条第一項ノ通告アリタルトキハ公訴ノ時効ヲ中断ス
第十六条 犯則者通告ノ旨ヲ履行シタルトキハ同一事件ニ付訴ヲ受クルコトナシ
○2 第十四条第一項但書ニ依ル通告ニ対シ犯則者通告ノ旨ヲ履行シタル場合ニ於テ没収品ニ該当スル物品ヲ所持スルトキハ公売其ノ他必要ノ処分ヲ為ス迄之ヲ保管スルノ義務アルモノトス但シ保管ニ要スル費用ハ之ヲ請求スルコトヲ得ス
第十七条 犯則者通告ヲ受ケタル日ヨリ二十日以内ニ之ヲ履行セサルトキハ国税局長又ハ税務署長ハ告発ノ手続ヲ為スヘシ但シ二十日ヲ過クルモ告発前ニ履行シタルトキハ此ノ限ニ在ラス
○2 犯則者ノ居所分明ナラサル為又ハ犯則者書類ノ受領ヲ拒ミタル為通告スルコト能ハサルトキ亦前項ニ同シ
第十八条 犯則事件ヲ告発シタル場合ニ於テ差押物件又ハ領置物件アルトキハ差押目録又ハ領置目録ト共ニ検察官ニ引継クヘシ
○2 前項ノ差押物件又ハ領置物件所有者、所持者又ハ官公署ノ保管ニ係ルトキハ保管証ヲ以テ引継ヲ為シ差押物件又ハ領置物件引継ノ旨ヲ保管者ニ通知スヘシ
○3 第一項ノ規定ニ依リ差押物件又ハ領置物件ノ引継アリタルトキハ当該物件ハ検察官ガ刑事訴訟法ノ規定ニ依リ押収シタル物トス
第十九条 国税局長又ハ税務署長間接国税ニ関スル犯則事件ヲ調査シ犯則ノ心証ヲ得サルトキハ其ノ旨ヲ犯則嫌疑者ニ通知シ物件ノ差押アルトキハ之カ解除ヲ命スヘシ
第十九条ノ二 間接国税ニ関スル犯則事件ニ付第一条第一項ノ規定ニ依ル収税官吏ノ検査ヲ拒ミ、妨ケ又ハ忌避シタル者ハ三万円以下ノ罰金ニ処ス
第二十条 本法ニ於テ間接国税ト称スルハ勅令ノ定ムル所ニ依ル
第二十二条 国税ノ納税義務者ノ為スヘキ国税ノ課税標準ノ申告(当該申告ノ修正ヲ含ム以下申告ト称ス)ヲ為ササルコト若ハ虚偽ノ申告ヲ為スコト又ハ国税ノ徴収若ハ納付ヲ為ササルコトヲ煽動シタル者ハ三年以下ノ懲役又ハ二十万円以下ノ罰金ニ処ス
○2 国税ノ納税義務者ノ為スヘキ申告ヲ為ササラシメ若ハ虚偽ノ申告ヲ為サシメ又ハ国税ノ徴収若ハ納付ヲ為ササラシムル目的ヲ以テ暴行又ハ脅迫ヲ加ヘタル者亦同シ