枡野浩一『愛のことはもう仕方ない』発売中
【1】町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~いくつもの枝編」
【2】町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~雑誌と年表編」
【3】町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~血まみれ編」
【4】町山智浩×水道橋博士×古泉智浩×枡野浩一「サブカルの歴史を語る~ロック編」
サブカルも年をとる。サブカルにも世代交代は必要? 偉くなったらサブカルじゃなくなる? 常に威張ってる人がいて、大物になって威張る人がいて、世界的人物になってもふざける人がいる。そして54歳にして突然「オネェ化」し、「すげえハードル高いんだよ! 俺のオネェは!」と吠える博士の真意とは―?
【第5回の初登場人名】久田将義、竹中労、根本敬、猪瀬直樹、石井慎二、日垣隆、アントン・イルチェン、ギンティ小林、杉作J太郎、高橋ヨシキ、てらさわホーク、森繁久彌、萩本欽一、美輪明宏、志茂田景樹、佐良直美、草野満代(敬称略)
「どれだけ俺が竹中労に思い入れたか」(水道橋博士)
枡野 町山さんの映画評論でも、僕がいいなと思う評論と、自分と違うなというのがどうしてもあるじゃないですか? そういうのを越えて許せなかったんですか?
町山 思想的な問題に近いんじゃないかぁ。蓮實重彦はそれまで世間からバカにされてる映画を褒めてたわけだから。
古泉 それに酔心してたわけですもんね。
町山 レベルが低い、下品だとされているものを褒める人だと思ってたの。
枡野 でも実は違う毛色だったのかもしれないですね。
町山 たとえば、鈴木則文監督っていう監督がいるわけですよ。『伊賀のカバ丸』とか撮ってる。
古泉 『トラック野郎』シリーズとかですよね。
町山 あと、『スケ番』モノとかね。めちゃくちゃな映画ばっか撮ってる人で。ところが蓮實重彦は一貫して鈴木則文を褒めてた。
博士 でもそのサブカル魂みたいなもの……、俺、サブカルじゃないけど、カチンとなるのは、たとえば昨日、(東京ブレイキングニュース編集長の)久田将義さんとお会いしてたんだけど。
それはなぜかっていうと、久田さんが「博士なんかが竹中労の名前を出すのにカチンとくる」とおっしゃったから、「それは違う!」と。オレは竹中労(ルポライター)をいつから読んだかわかるノートがあるの、全部。竹中労の文章をすべて筆記してるんだよ、若い頃、そこまでやって、そこまで竹中労を好きだって、ノートを持って行って、見せて言った。
だから久田さんのほうが年下だから、オレより。オレの少年時代を知らないわけじゃん。ただオレは芸能人だから、竹中労の名前とか出してイキがってるように思われたかもしれないけど、それは違うんだと。だって俺は俺の竹中労ノートがあって、どれだけ俺が竹中労に思い入れたか……。
枡野 それこそマウンティングじゃないですかねえ。
古泉 ほんとですよ。
博士 や、でも、それはただの誤解です、って話。俺がこれだけ本もちゃんと読んでる、ノートもつけてるっていったら……。
古泉 久田さんにとっての竹中労は物凄い巨星の如く……。
博士 そう。彼も影響下にあるんだけど、でも俺のほうが先に生まれた……。ただ俺が芸能人で、文章の人じゃないと思われているからで。
でもそれは本当に誤解で。元々たけしさんの前に影響を受けたのが竹中労で、『キネマ旬報』の連載をきっかけに読み始めたんだけど……っていう話を昨日もしたけど、本当に誤解を解き、ちゃんと謝罪してくれて、わかってもらえたよ。
古泉 そうなんですか。でもそんなのわかってもらわなくていいですよ!
博士 10代のときにさ、商売でなくさ、精神的影響を受けたものがあって、それで志を持つわけじゃん。それを踏みにじられるのは嫌だってこと。だって、その原点は失わないよっていう話、これは。
枡野 それはわかります。そういうふうにね、「おまえなんかが、それを好きなはずない!」って言われること、ありますよね。
博士 あるんだよ。
枡野 僕、(特殊漫画家の)根本敬さんが好きなんですけど、「枡野が根本敬を語るのは嫌だ」って言われるんですよ。「枡野なんかが根本敬をわかるはずがない」と。
ほんとに僕、好きで読んでるのにねえ、「枡野なんかが…根本敬を…腹たつ」って言われるんですよ、歌人とかに。だけどずっと好きで読んでるし、ご本人にも会ってるし、なんかねえ……。なんでそんなこと言われなきゃなんないんだろうって。