THEOの運用を自分でやってみたらどうなる?

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THEOについて書いていただいているブログを見ていると、しばしば、「THEOはリバランスのための取引が多いからコストが高い」というご意見を見かけることがあります。

誤解されているかもしれませんので、あらためてご説明すると、THEOは取引手数料、為替手数料は無料です。THEOがお客さまからいただく報酬は、運用報酬(投資一任報酬)年率1.0%(税抜)のみです。

それではなぜ、ブログを書かれたお客さまは「取引回数が多いとコストがかかる」と思ってしまわれたのかと考えるに、やはり、多くの証券会社の証券口座では、海外ETFや海外株式を証券口座で売買する際には、取引手数料・為替手数料が取引の都度かかるコストとして、運用結果に影響を与えるのが一般的だからだと思われます。

実際に、「THEOが行っている運用って、自分でやったら年率1.0%より安くできますか?」というお問い合わせをいただいたことがあります。

そこで、今回この疑問・誤解に答えるべく、運用報酬1.0%でTHEOが行っているのと同じ取引を、一般のお客さまが他の証券会社の証券口座で自分で行うとどうなるかを検証してみます。

まず、THEOのポートフォリオと同じETF銘柄を国内証券会社で買える?

グロース(世界の株式中心):インカム(世界の債券中心):インフレヘッジ(実物資産中心)の割合が、40%:43%:17%のポートフォリオを例に、2018年1月31日時点での銘柄とその目標割合を以下に示します。

LQD-10.8%
IEF-7.7%
VTV-7.5%
TLT-6.7%
VOE-6.7%
MBB-5.7%
VOT-5.5%
QQQ-5.4%
VPL-5.3%
TIP-5.1%
EWJ-5.0%
HYG-4.3%
IYR-3.5%
SRLN-3.0%
VMBS-2.9%
EPP-2.6%
DBC-2.6%
IAU-2.6%
EWY-1.8%
IGF-1.0%
DBA-0.9%
SLV-0.9%
IHY-0.7%
EMB-0.5%
WOOD-0.3%
RWX-0.2%
EWW-0.1%

これらの銘柄を、海外ETFを取り扱う主な国内ネット証券会社3社(楽天証券、SBI証券、マネックス証券)で取扱いを調べてみると、上記の銘柄全てが取引可能でした。

つまり、この時点のTHEOのポートフォリオについて、国内ネット証券で口座を持っている方であれば、同じポートフォリオを組むことが可能だったと言えます。(THEOのポートフォリオは定期的に銘柄も見直しされるため、将来も同じことが言えるとは限りません。)

THEOの取引と同じ取引を国内証券会社で行った場合の取引手数料・為替手数料は?

国内ネット証券会社の海外ETFの取引手数料・為替手数料

上記で挙げた国内ネット証券会社3社における海外ETFの取引・為替コストは、調査した2018年1月31日時点では共通で、以下のとおりです。(詳しくは、各社ウェブサイト等でお調べください。)

  • 取引手数料:約定代金の0.45%(最低:5ドル、上限:20ドル)
  • 為替手数料:1ドルにつき±25銭(0.25円)

もし、この取引手数料・為替手数料で、THEOの運用をすると

まず、最初にTHEOと同様のポートフォリオを買い付ける際のコストをシンプルなシミュレーションで計算してみます。

■仮定

  • THEOのポートフォリオに含まれる銘柄数を、実際のお客さまの平均的なポートフォリオを例として、1万円で2銘柄、10万円で13銘柄、100万円で24銘柄、1000万円で27銘柄、と仮定。
  • 為替レートは、2018.1.31時点の為替レート、1ドル = 109円で計算。

■1万円で2銘柄を買う場合

1万円で、2銘柄(1銘柄5000円と仮定)を購入するコストを計算します。

  • 為替手数料=0.25円 / 109 × 10,000円 = 22円
  • 取引手数料 = 5,000円 × 0.45% = 22円 → 最低取引手数料 5ドルで計算して、5ドル × 109円 = 545円が2銘柄のため、545円 × 2銘柄 = 1,090円

合計 1,122円(1万円に対して、およそ11.2%

■10万円で 13銘柄の場合

10万円で、13銘柄(1銘柄7692円と仮定)を購入する場合のコストを計算します。

  • 為替手数料 = 0.25円 / 109× 100,000円 = 229円
  • 取引手数料 = 7,692円 × 0.45% = 34円 →最低取引手数料 5ドルで計算して、13銘柄のため、545円 × 13銘柄 = 7,085円。

合計で、7,314円(10万円に対して、およそ7.3%

つまり、1万円の場合も、10万円の場合も、1取引あたり「最低5ドル」の取引手数料がかかるため、上記のコストがかかります。

■100万円で 24銘柄の場合

100万円で、24銘柄(1銘柄41,666円と仮定)を購入するコストを計算します。

  • 為替手数料 = 0.25円 / 109 ×1,000,000円 = 2,293円
  • 取引手数料 = 1銘柄で 41,666 × 0.45% = 187円。最低取引手数料 5ドルで計算して、24銘柄で、545円 × 24銘柄 = 13,080円

合計で、15,373円。(100万円に対して、およそ1.5%

■1000万円で 27銘柄の場合

1000万円で、27銘柄(1銘柄370,370円と仮定)を購入する場合のコストを計算します。

  • 為替コスト = 0.25円 / 109 × 10,000,000円 = 22,935円
  • 取引コスト = 1銘柄で 370,370 ×0.45% = 1,666円(最低5ドル、上限20ドルの間)。27銘柄なので、1,666円 × 27銘柄 = 44,982円。

つまり、合計で、67,917円。(1000万円に対して、およそ0.7%

■まとめ

国内ネット証券会社の取引手数料は、最低・上限が定められているため、「同一銘柄を一定額以上まとめて取引する」と割安になってきます。

入金時の最初の買付けにかかる為替手数料・取引手数料で、1.0%を下回るのは、1万円、10万円、100万円、1000万円の運用資金で計算する限りでは、1000万円のときのみでした。

ここまでは、最初の買付けの為替手数料・取引手数料についてです。

THEOは運用期間中も、リバランス・銘柄見直しを行う

THEOは、自動でリバランス、銘柄見直しを行います。リバランスとは、目標となるポートフォリオとの乖離を調整するための売買です。銘柄見直しは、文字通り、組み込む銘柄を見直し、入替えのための売買を行います。

リバランス・銘柄見直しについては、毎月実施と頻度は決まっていますが、取引を行う銘柄数や数量は、市場の状況によって変わります。

実際に昨年運用をしていたTHEOの口座で調べてみると、入金時の初回買付けを除いて、リバランス・銘柄見直しでの取引数はおよそ以下のとおりでした。

2017年1月1日より前に運用開始し、2017年度中に入出金・ポートフォリオ変更のないお客さまの、投資金額と2017年度中の取引回数の分布(投資金額1,000万円以下)

投資金額10万円、100万円、1000万円の場合の取引回数の平均値は以下のとおりです。(1万円の場合は、銘柄数・数量が少ないためリバランス対象外となります。)

  • 10万円の場合: 年間50取引
  • 100万円の場合: 年間130取引
  • 1000万円の場合:年間339取引

リバランスの場合、例えば、ある銘柄を5口保有しているものを1口売却して、別銘柄を1口購入、のように数量を調整するため、小さな数量での取引となりやすいです。

銘柄見直しの場合は、入れ替わる銘柄によります。

どちらの場合も、ETF→ドル→ETFと、ETF銘柄の売買のみで、為替交換をともなわない取引となります。

これらをふまえて、10万円、100万円、1000万円の場合について、THEOの運用と同じリバランス・銘柄見直しを、国内ネット証券の証券口座で取引した場合の取引手数料を計算してみます。

■10万円の場合

年間50取引 × 5ドル=250ドル=27,250円
(1ドル109円。取引手数料は最低額5ドルで計算)

つまり、10万円の投資金額に対して、年間 27,250円(およそ27.3%)かかります。

■100万円の場合

年間130取引 × 5ドル=650ドル=70,850円
(1ドル109円。取引手数料は最低額5ドルで計算)

つまり、100万円の投資金額に対して、年間 70,850円(およそ7.1%)かかります。

■1000万円の場合

年間339取引 × 5ドル=1,695ドル=184,755円
(1ドル109円。取引手数料は最低額5ドルで計算)

つまり、1000万円の投資金額に対して、年間 184,755円(およそ1.8%)かかります。

毎年のリバランス・銘柄見直しについて、国内ネット証券で同じ取引を行った場合にかかる為替手数料・取引手数料で、10万円、100万円、1000万円の運用資金で計算する限りでは、いずれの場合も、1.0%を超える結果となりました。

THEOは、配当金も自動再投資

THEOでは、ETFの購入単価に満たない端数としての現金部分とETFからの配当金の額の合計が、次に組み入れるべきETFの価格のその日の価格を上回っていれば、そのETFを購入します。つまり、毎営業日、自動再投資ができるかどうかのチェックを行い、できる場合は速やかに実施しています。

これも、上記のリバランス・銘柄見直しと同様に、年間の取引に含まれる取引となります。ほとんどの場合は、自動再投資の場合に買い付けられるのは、1銘柄1口となります。国内ネット証券の証券口座で売買する場合には、1銘柄1口の取引にも5ドルの取引手数料がかかるため、自動再投資は、一定額をまとめて行わないと割高になるでしょう。

ETFの経費率は変わらない

ETFの経費率は、各ETFの価格に含まれているため、THEOで買い付けた場合も、お客さまが国内ネット証券で買い付けた場合も変わりありません。

銘柄選定、銘柄見直しを、THEOの運用と同様に、一般の個人ができる?

コスト面以外でも考えてみましょう。

銘柄選定には、各ETF銘柄の様々なデータを使って判断をしています。各ETFの取引規模、資産規模、経費率等の定量データ、過去24ヶ月の値動きのデータや配当実績等は、インターネット上でも公開されているものであるため、一般の個人でも判断に必要なデータをそろえることは、理屈から言えば、可能です。

ただ、取引所のウェブサイトで毎日更新される価格や、各ETF提供会社のウェブサイトや資料などからデータを取得することは、英語力や情報収集力に加え、非常に大きな手間がかかるため、多くの方にとっては簡単なものではないでしょう。

さらに、そのデータを使って、どのように銘柄を選定するか、については金融工学等の知識が必要となります。

THEOはスマートベータ戦略にもとづいて、中長期的に市場平均(時価総額加重平均)を上回るパフォーマンスが期待される銘柄を選定しています。

スマートベータ戦略については、過去の記事でも紹介していますので、ご参照ください。

銘柄の選定方法や各ポートフォリオ内の銘柄組合せの最適化手法については、THEOホワイトペーパーにも詳しく書かれていますので、興味のある方はぜひご参照ください。

金融工学の知識、データ収集・集計、ポートフォリオの最適化アルゴリズム、これらをお持ちでないと、THEOと同様のポートフォリオを作ることは難しいかもしれません。

まとめ

国内ネット証券会社の取引手数料・為替手数料をベースに、THEOと同じ運用を行う場合のコストと比較すると、運用資金1万円、10万円、100万円、1000万円のいずれの場合も、年間1.0%以上となりました。

また、市場平均以上のパフォーマンスを目指すスマートベータ戦略に基づいた銘柄選定を、一般のお客さまがご自身で行うことも、多くの場合、難しいと思われます。

THEOは、運用報酬 年率1.0%をいただくに値する、また、それ以上の価値を提供すべく、金融工学とテクノロジーを活用し、多くのお客さまに、国際分散投資を簡単にご利用いただけるよう、サービスを提供しています。

もし、国際分散投資をシンプルに行うのであれば

THEOと同様の運用を、一般の方が国内ネット証券でご自身で行った場合の比較についてご紹介してきました。結論としては上記のとおりです。

もし、THEOと同様ではなく、単純に国際分散投資をご自身で行うことをお考えであれば、よりシンプルな分散投資であれば可能になるでしょう。

一つの方法としては、ETFを使って、より少ない銘柄数で、リバランスや銘柄見直しの回数を減らせば(または、なくせば)、つまり、少ないETF銘柄数を買って、そのまま保有し続けるのであれば、国内ネット証券でも効率的に運用できるでしょう。

株式であれば、ACWIのように世界株式指数に連動するETFや、VTIとVEA のように米国、米国以外の先進国の株式指数に連動するETFをもつことで、国際分散投資は可能です。

その場合でも、いわゆるパッシブ運用(インデックス運用)での国際分散投資となるため、市場平均レベルのパフォーマンスは期待できます。ご自身で銘柄選定など行いたいお客さまには、一つの方法と言えます。

また、もう一つの方法としては、ETFを組み入れた投資信託や、グローバルバランスファンドと呼ばれる国際分散のインデックス投信という選択肢も、シンプルな国際分散投資の方法ですね。

どちらの方法も、「個々のお客さまにあわせたカスタマイズ」はできないかもしれませんが、市場平均にそったパフォーマンスを目指した国際分散投資をする選択肢となり得るでしょう。


THEOが、運用報酬としていただいている年率1.0%の費用は、為替手数料・取引手数料をその費用から弊社が負担するため、だけではありません。

年率1.0%の報酬に値する価値を中長期にわたりお客さまにご提供できるよう、これからもTHEOは、運用理論、テクノロジー、サービスを磨き続けてまいります。