AIが「偏差値65」を超えられない根本理由

「真の意味でのAI」は現時点では不可能だ

私たちはAIの何を恐れるべきか(写真:cba / PIXTA)

書店で、テレビで、ツイッターで、AIの二文字が踊っている。創造性あふれる小説の執筆や複雑なビジネスオペレーションの効率化など、これまで人間にしかできないと思われていた知的活動を、最新のAIが軽々と成し遂げたことを伝えるニュースは引きも切らない。

そもそもAIとは何なのか

特に、将棋や囲碁のトッププロをAIが打ち破ったニュースは驚きとともに世界に伝えられた。

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ウサイン・ボルトより早く走る車やそろばん名人を凌駕する計算能力を示すコンピュータは当たり前のものとなったけれど、将棋や囲碁のように複雑でクリエイティビティが要求されるゲームは、大きな脳を持つホモ・サピエンスの専売特許のはずだった。そんな得意分野における人類最高峰がAIに敗れてしまったのだ。

AIブームは過熱するばかり。今後もAIは成長を続けることで人間の知能を追い越すというシンギュラリティ理論や、AIが人間に牙をむくことになるというAI脅威論も広まっている。果たして、AIはどこまで進化し続けるのか、現時点そして近い未来に人類に何をもたらすのか、そもそもAIとは何なのか。

本書『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』は、未曽有のAIブームの中で浮かび上がる疑問符に、実際に著者が率いたプロジェクトの過程と結果をベースとして答えを出していく。数理論理学を専門とする著者は、AIが持つ原理的な限界も丁寧に解説しながら、わたしたちがAIの何を恐れるべきかを的確に示してくれる。何より興味を惹かれるのは、AIについての研究を進めていく中で、わたしたち人間の知られざる弱点が明らかになっていく過程だ。人間の外側を見つめることで、人間の輪郭がよりはっきりと浮かび上がってくる。

2011年に始まった「ロボットは東大に入れるか」という人工知能プロジェクト(通称「東ロボくん」)と、それに並行して行った日本人の読解力についての大規模調査・分析を行った経験から著者はAIをめぐる未来を以下のように要約する。

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  • NO NAMEe3602c573c3b
    良い悪いと言うよりAIの定義の問題なんだけど、コメント見ると理解できない人が多いみたいだな。
    本来の作りたかったAIは人間のように思考できる存在。
    現在AIだと持て囃されているのは単に高速処理で統計を取ってるだけ。
    最終的な判断基準は人間が与えている。
    感情を表すようなプログラムも結局は人間の統計を取って模倣しているだけでそこにAIモドキの自由意思はない。
    現状のアプローチではどんなに高性能化してもAIにはならない。
    能力的に優れているとか、人の仕事が奪われるとか、人類への脅威とかはあるかもしれないけど別の話なんだよな。
    up16
    down7
    2018/2/17 21:42
  • NO NAME6ef0fa1b5de4
    偏差値65以下って、ガウシアンディストリビューションだったら平均的な人間はほぼ網羅されてない?

    脳で人工知能に勝とうとすることは、足で新幹線に勝とうとするようなこと。人間が、仕事がなくても文化的に生きていける社会を作ればいいだけの話(改革を怠けている日本では無理だろうけど)。これはAI先進国の中国あたりが先に実現しそうだな。

    ところで、「太郎は花子が好きだ」って、ゲンツェンの自然演繹で論理に還元できないの?
    up8
    down0
    2018/2/17 23:03
  • NO NAME56d594279ec2
    >印税全額を「教育のための科学研究所」に寄付

    なにこれ?自分の息のかかった団体だから還元してもらうのばればれじゃん
    up7
    down0
    2018/2/18 00:39
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