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経済政策と社会保障を考えるコラム


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10-12月期GDP1次・4年ぶりに消費がプラスに

2018年02月18日 | 経済
 アベノミクスには景気回復の実感がないと言われる。それも当然で、実質GDPの家計消費(除く帰属家賃)は、2014、15、16の3年続きのマイナスにあった。そして、今回の10-12月期GDPの発表で、2017年に至り、ようやく、+1.0%のプラスへ転じたことが示された。3年分のマイナスの累積は、-2.1%にもなるため、4年前より、いまだ貧しいにせよ、生活水準か悪化する状況からは、なんとか抜け出したのである。

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 家計消費の数字を見ていれば、「なぜ実感がない」と首を捻ることもないし、「アベノミクスはフェイクだ」と騒ぐこともない。原因も明らかで、消費増税と金融緩和に伴う円安によって、物価が上昇したからである。だから、名目で見れば、家計消費は4年前より5.5兆円、+2.3%多くなっている。増税と円安で国民生活は苦しくなった反面、企業の収益は高まり、財政収支が大幅に改善されたのだから、政策どおりに得られた結果を評価すべきだろう。

 今回の10-12月期GDPの一般的な見方は、「消費と設備投資は順調だが、前期の消費の大幅減からすると戻りが弱く、まだ低調な状態にある」というものだろう。しかし、年単位だと変化が分かるように、フェーズは明らかに移りつつある。実は、名目では、今期の消費は+1.1%と、前期の-0.9%を凌駕しているのだ。2017歴年の消費の伸びは名目+1.4%まで加速しており、消費増税前の2012-13年の+1.75%のペースまで、あと一歩である。

 この背景には、雇用者報酬の伸びがある。名目では前年比+1.9%だ。ただし、増加は、専ら雇用者数によるもので、賃金が上がっているわけではない。毎月勤労統計の現金給与総額は、2017年4,5月に高まったものの、その後は停滞し、11,12月になって上向いてきたところだ。賃金とは裏表のサービス物価も、2017年の後半に入って、緩やかに高まっている。今後は、賃金の上昇が加わり、雇用者報酬が更に伸びることが期待される。

 今期のGDP予想では、本コラムは、消費について、やや強めの予想をして、上手くはまった形となった。足下では、悪天候による生鮮の値上がりがブレーキになっているが、こうしたものは一時的であり、むしろ、物価上昇に対して、消費は抵抗力を見せているように思える。需給の引き締まりによる物価上昇であれば、賃金が伴うので、あまり消費を弱めない。昨今の円高も踏まえれば、今後の消費の加速は十分あると見ている。

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 2017年を振り返ると、景気上昇の最大要因は、輸出の拡大であった。「経済は追加的需要によって変動する」というのが本コラムの見解であり、その3需要を合成したものを下図に示した。ご覧のように、3需要が増せば、それが所得を生み、消費を増やすという関係にある。輸出の影響が最も強く、消費の減退から回復を主導した。公共と住宅にも意味があって、消費の4-6月期の上昇と7-9月期の下降は、公共と住宅のピークと下落に相応する。

 また、成長の原動力である設備投資は、3需要に一拍遅れるような形で連動している。需要を見ながら設備投資はなされるという、ごく常識的な論理である。こうして見れば、需要管理の重要さが理解できよう。他方、金融緩和は、直接、設備投資には効かず、住宅や輸出を促進する限りにおいて、景気を浮揚させる。したがって、住宅投資が先食いされていたり、世界経済が不調で、円安にしても輸出が増えなかったりすると、空振りに終わる。

 アベノミクスは、2013年に、財政出動と金融緩和による円高是正で、実質2.0%成長の成果を収めた。しかし、2014年は、消費増税で0.4%成長へ転落し、それでも輸出があったから、悲惨にならずに済んだ。2015年は、緊縮財政の下、輸出が減退し、景気が低迷した。2016年は、円高に振れたが、後半から世界経済の回復で輸出が増え、2017年の景気回復につながる。この間、相続増税対策の住宅投資が一役買い、2017年には公共も3年ぶりのプラスとなった。

 こうしてみれば、アベノミスクの緊縮体質と輸出依存が分かる。そもそも、金融緩和には緊縮財政を埋め合わせる力はない。例えば、今回の補正では、公共投資の削減で1.1兆円の歳出減となったが、これを住宅投資で補おうとすると、2017年の増加実績を2.5倍にしなければならない。設備投資によるとしても4割増しが必要だ。ちょっとした緊縮さえ、金融緩和でカバーするのは、どだい無理なのだ。

(図)



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 今度の日銀副総裁には、若田部昌澄教授が就くようだ。在野精神の大学からの起用とは、誠に感慨深い。若田部先生は、消費増税には反対してこられた。リフレ派ではあっても、金融緩和が緊縮財政に対して、いかに非力か、よく御存じなのだろう。経済運営においては、財政と金融の協調は極めて重要になる。その際、中央銀行が財政当局に対し、無闇な緊縮財政の尻拭いはできないと、物申すことが必要になるかもしれない。まさに、学問の独立と活用の教旨を発揮してもらえたらと思う。


(今日までの日経)
 日銀副総裁にリフレ派、増税にらみ歳出拡大構想。転職に賃上げ圧力、初任給にも波及。年金開始70歳超 選択肢に 高齢社会大綱を閣議決定。機械受注 受注残には懸念。モルヒネ経済険しき退路・菅野幹雄。
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CASA
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