写真家の金川晋吾さんの写真集『father』は、失踪を繰り返す実父を撮った写真集だ。
表紙カバーには、何もない部屋の薄汚れた壁の前に座りけだるそうに紫煙をくゆらす初老の男の姿。そして、「やっぱり生きていくのが 面倒くさい」という手書きの帯文に目がクギづけになる。2月25日まで横浜市民ギャラリーあざみ野で開催中の個展『長い間』では、父親の写真に加えて、長きに渡り消息不明だった伯母を撮った作品を加えて展示している。一体なぜ、金川さんは失踪した近親者2人の写真に撮り続けているのか? 撮影行為を通して何を見て、何を感じたのだろうか?
■突然降ってきた「父の失踪」というモチーフ
――どうしてお父さんをテーマに作品を作ることに?
金川 東京藝大の大学院に入る前あたりからそれまで撮っていたスナップが撮れなくなって、テーマが見つからなくて困っていたんですね。学内展の時期、自分の展示テーマに必然性が感じられず「これじゃどうもならん」と思っている時にちょうど父が失踪した。「えっ !?」と思うのと同時に「親父を撮ってみたらどうなるんだろう?」って思ったんです。