「お金と時間、どちらが欲しいか」という調査を17カ国・地域で行ったところ、「お金より時間が大切」と答えた消費者が最も少ないのは日本であることが分かった。「お金のほうが大切」との回答が最も多かった中国の、ほぼ4分の1という結果だ。
もうひとつの質問である「所有物より経験」でも日本は最下位。総体的な結果はメキシコが1位になるなど順位が入れ替わることから、他国・地域ではお金と所有物が別物として認識されており、時間の余裕や経験が「生活のぜい沢品」と見なされていることが分かる。
ランキングは2016年夏、2.2万人(15歳以上)を超える消費者を対象にGFKが実施したもの 。2つの質問に対する回答を1(まったく同意しない)から7(強く同意する)までの7段階で評価・集計している。
「お金より時間が大切」と考える人が多い17カ国・地域とその割合
このランキングで上位の国・地域は、「お金より時間が大切」と考える人の割合が高いということ。逆に下のほうはその割合が低いということだから、逆に「時間よりお金のほうが大切」と考える人の割合が高いということだ。
17位 日本 11%
16位 ドイツ 17%
15位 韓国 18%
13位 オーストラリア 21%
13位 オランダ 21%
12位 ベルギー 22%
10位 ロシア 23%
10位 カナダ 23%
9位 フランス 24%
7位 イタリア 26%
7位 英国 26%
6位 米国 29%
4位 メキシコ 40%
4位 スペイン 30%
3位 アルゼンチン 32%
2位 ブラジル 37%
1位 中国 41%
お金より時間を重視するのはわずか10人に1人の日本
調査に協力した1500人のうち、たった11%が「お金より時間が欲しい」と答えた日本 。
割合は男性(11%)の方が女性より(10%)若干高く、60歳以上の高齢層(6%)はほとんど時間よりもお金を重視している。ほかの年齢層でも、30〜39歳、40〜49歳(各13%)、15〜19歳、20〜29歳(各12%)、50〜59歳(11%)と、お金より時間を優先するのは約10人にひとりだ。
所得層別では高所得層(15%)に最も強い同意が見られる一方、低所得層(12%)や低中間所得(11%)がそれに続き、高中間所得層(9%)の割合が落ちる点が興味深い。
日本は「所有物より経験が大切」と答えた割合も対象国・地域中最も低く、メキシコ(57%)の半分以下(27%)だ。
この質問ではおもしろいことに性別や年齢、所得層の割合が大きく入れ替わる。女性(31%)の方が男性(24%)よりも、所有物より経験を重視。60歳以上の高齢層(33%)に最も強くその傾向が見られるのに対し、15〜19歳(26%)、20〜29歳(23%)、30〜39歳(27%)、40〜49歳(26%)、50〜59歳(24%)と、若い層が所有物より経験を優先する割合は20%台にとどまる。 所得層別では低中間所得層(30%)、低所得層(29%)、高所得層(27%)、高中間所得層(23%)となる。
中国の高齢者は日本の高齢者の6倍「お金より時間」を重視?
両極端な結果がでた中国 と日本を比較してみよう。中国で時間よりお金を重視する傾向は男性(40%)より女性(43%)の方が強い。年代別では高齢者が同意する割合が最も低い(38%)ものの、数字的には日本の高齢者の6倍以上である。50〜59歳(57%)、20〜29歳、30〜39歳(各47%)、15〜19歳(40%)と、すべての年代を通して日本よりもはるかに時間を重視する傾向が強い。
また高所得層(53%)が最も時間を求めており、その傾向は所得の高さ・低さと比例する。しかし低所得層でも37%が「お金より時間」と答えており、日本との差を大きく感じさせる。
トップ5を新興国が占める中、先進国のトップとなったのは米国 だ。男女別には30%と29%と微差にとどまるが、20〜29歳と30〜39歳の層(各38%)が最も時間を優先しており、高齢層(20%)では5人の1人の割合に落ちる。高所得層が「お金より時間」と答えた割合が最も高いのは日本、中国と同じだが、最も同意の割合が低いのは低所得層だ。
20〜39歳が「お金より時間」「所有物より経験」を最も重視
17カ国・地域では平均3人に1人が「お金より時間」、4人に1人が「所有物より経験」が大事と答えている。男女の割合は32%、31%と「お金より時間」は微差、41%、48%と「所有物より経験」は女性の方が総体的に多い。
「お金より時間」「所有物より経験」を最も重視する年齢層はともに20〜39歳で、それぞれ36%と46%という割合だ。「お金より時間」を重視する高齢層は5人に1人以下(19%)だが、「所有物より経験」を重視する高齢者は5人に2人以上(43%)に増える。また所得が高いほど、物質よりも時間や経験を求めている。
「所有物より経験」という質問では、メキシコ1位、アルゼンチン2位、米国3位、ブラジル4位、カナダ5位—など、順位が入れ替わる。「お金より時間」で首位だった中国が、ここでは6位に甘んじる。 調査結果を見る限り、日本では所有物やお金はほぼ同等の物質的要素で「時間や経験に勝る」ととらえる人が多いのに対し、ほかの国・地域ではお金と所有物はまったく異なる要素で、「時間や経験とは比較できない」と考える人が多いという印象を受ける。
日本人は物質的な圧力をあまり感じていない?
しかし2014年にIpsosMori が実施した「成功の度合いはどんな所有物をもっているかで判断する」という調査結果には、各国・地域のまったく異なる一面が反映されている。「そう思う」と答えた割合は中国が最も多く(70%)、日本や米国、ドイツ(各30%前後)、英国(17%)、スウェーデン(10%以下)は非常に低いという結果だった。
また「成功して沢山お金を稼がなくてはという圧力を感じている」という回答者が最多だったのも中国(約70%)で、ロシア、アフリカ、インド、トルコ、韓国などが続いた。日本で同意したのはその半分(約35%)だった。 つまり日本におけるごく一般的な「物質に対する考え方」としては、お金や所有物は非常に大事だが、それで人生の成功が決まるわけでもなく、必死になるわけでもない—といったところだろうか。この辺りには各国・地域の経済力や社会背景も大きく影響していそうだ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)