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未来にも残すべシ 個人的には超好ミ 初心者でも読めル

どんな風に育つと読書好きの子どもになるのだろうか。

竜馬がゆく 1 新装版

竜馬がゆく 1 新装版 著者: 司馬 遼太郎

出版社:文藝春秋

発行年:1998

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どんな風に育つと読書好きの子どもになるのだろうか。 by.冬木糸一

僕は割合本を読むのが好きで、暇さえあればだらだらと本を読んでしまう。

ただ、それはアニメを観たり映画を観たりゲームをやったりといった他のことと比べて”好き”なのかといえばそこについてはよくわからない。たとえば僕にとってはアニメを観たり映画を観たりゲームを”しはじめる”のに行動力を10ポイント消費するとすれば、本を手にとって読み始めるには3ポイントぐらいしか消費しない、つまり好きというよりかは”手をつけやすい”から、よく読む=好き的な感じになっているのではないかなと思ったりする。

で、いつ本を手をつけやすくなったのかといえば、記憶にある限りかなり古い時からそうやって本ばかり読んでいる記憶がある。小学生の頃にはすでに大量に読んでいたし、中学、高校、大学時代が人生で一番読んでいた時期だろう。しかしその”最初”はなんだったのかということを、たまに聞かれることがある。子どもを持つ親御さんなどが、「どうやったら子どもを読書好きの子どもにできますか/どんな風に育ったら読書好きになったんですか」と言った風に軽く質問してくれるのだ。

個人的には自分が「読書好きになった」というよりかは先にも書いたように「それが一番ラクだから読書をしている」か、「不可避的に読書好きっぽくなってしまった」感が強く、別に読書好きになどならなくてもいいではないか、他に何か楽しいことがあればそれをやれるのが幸せではと思うけれども、それはそれとしてまじめに答えるならば”性格によるんじゃないですかね”という身もふたもない感じになってしまう。

暑い夏のある日の出来事

僕は理由はわからないけれども子どもの頃から出かけるのが大嫌いで(泣いて抵抗するほど嫌いだった)、ゲームはあったけれどもたくさん買ってもらえるわけでもなく、無料で大量に手に入れられる娯楽といえば(図書館があったから)、本しかなかった。僕が小学生だった当時はまだ家にはパソコンもなければ、スマホもないので、家から出ず、ゲームもなく、アニメもそれほどやってねえ、インターネットもねえ、とくればもう本を読む以外やることなんかないじゃないかという気がしないでもない。

そんな状況下で日々小学生をやっていたわけだけれども、もともとすでに『エルマーのぼうけん』、ドリトル先生シリーズ、ズッコケ三人組シリーズ、ファーブル昆虫記やシートン動物記や『モモ』といった「小学校の図書館に絶対に存在している名作シリーズ」ばかり読んでと楽しんでいた記憶があるけれども、明確にガチっと本好きに回路が切り替わったのは今でもよく覚えているが、暑い夏のある日のことである。

何もやることもなければクーラーもない本当に暇な家の中、両親はどちらもほとんど本を読まないのだが一応小さな本棚があって、そこに司馬遼太郎『竜馬がゆく』が置いてあったのである。僕は夏休みで、しかも厚さで死にそうになっており、つまらなそうな本だが(普通小学生は『竜馬がゆく』は自発的に読まないと思う)、他にやることもないし仕方がないとその『竜馬がゆく』に手を出して、そしてあっという間にハマってしまったのだった。なんじゃこりゃ! めちゃくちゃおもしろい! と。

『竜馬がゆく』は文庫で読んだのだけど、何しろ全八巻もあるのでけっこう暇が潰せる。読んでも読んでもなかなか終わらないので、夏休み家で楽しむにはとてもいい。そのうえ何しろ司馬遼太郎である。「こいつの書く本はおもしろいぞ!」となったら読む本はいくらでもある──となって、そもそも尽きせぬ暇を潰すのが目的なので、できるだけ大長篇、巻数が出ているものから順番に読み進めることになる。

『翔ぶが如く』、『坂の上の雲』と読んでいくうちに『燃えよ剣』にたどり着き、「なんじゃこりゃ〜〜新撰組ってめちゃくちゃおもしれ〜〜」となってなけなしのお小遣いを使って片っ端から他の作家が書いた新撰組関連小説を買って読みまくり、『項羽と劉邦』を読めば「うわあああああ中国史ってスケールがデケえええええ〜〜〜」とたまげて中国史関連小説を読み漁り、どこかの地点で宮城谷昌光の『晏子』に出会えば宮城谷昌光をはじめとしズブズブと歴史沼にはまっていくことになり──と雪崩のような連鎖反応によっていつのまにか死ぬほど本をよむようになっていった。

最初にドハマリしたのが「歴史物語」だったのも今振り返ると良かったのかなと思うところでもある。それは厳然としてそこに存在するものなので想像もしやすいし、何よりひとつの物語から無数に他の箇所・他の物語と繋がっていく。新撰組を読んだら明治維新が気になるし、ひいては日本がなぜそのような状態になっていったのか、その過去には何があったのかが気になる。項羽と劉邦の時代を読めば当然「ここ以外の時代の中国ってどうなんだ?」と疑問に思うしそれがまた次の本へと繋がっていく。

もうひとつ小学生の時に読んで忘れられない体験となったのが『指輪物語』で、そこからファンタジィを猛烈に読み出すようになるんだけど(『ゲド戦記』とか)どこからそこに繋がったのか今となってはまったく思い出せない(あと『人を動かす』にハマってしこからノンフィクションも読み出すのだけど、これは多分本屋でたまたまビビッときたというだけの理由だ)。そうやって、一度読書の習慣がついてしまえば、次々と次の本に連鎖していき、”読書好き”的存在へと変質していくものなのだろう。

おわりに

結局のところ、自分を振り返ってみるに、「どうやったら子どもを読書好きの子どもにできますか/どんな風に育ったら読書好きになったんですか」については、「少なくとも小学生時代においてはインターネットを遮断し、スマホを持たせず、外出禁止令を出し、これみよがしに『竜馬がゆく』かそれに類する歴史物語を置いておく(決して親から読むように強制してはならない。そんなことをしても絶対に読まないだろう)」というのが僕が個人の体験から導き出せるもっともシンプルな答えになりそうだけれども、これをそのままやったら普通に虐待なので注意しましょう。

僕もいま小学生時代をもう一度やりなおしたら、本好きの子どもにはならず家で延々とモンハンをやっているかもしれない。時代というか、タイミングというか、環境の要因って大きいよなという話でここはひとつ……。



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