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「5G」で無人の建機を日本中どこでも操れる未来がくる!KDDI・大林組・NECが公開実験

5Gはいろいろなモノや概念を変えます。スマホだけではありません。

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2018年2月、KDDI・大林組・NECが、国内ではじめて「5G」・4K 3Dモニターを活用した建機の遠隔施工に成功し、報道向けにこの実験を公開しました。

この実験は、次世代移動通信の「5G」を使って無人の建設機械を遠隔操作し、「遠隔施工」を実現するというもの。KDDIが5G実証実験の推進とエリアの設計、大林組が建機の遠隔操作システムの開発・試験、NECが28GHz超多素子アンテナを使った通信機器の開発を担当しています。

「5G」はご存じのように次世代移動体通信規格です。現在携帯電話の主流として使われている4G(LTE)の後継として、2020年代に世界全体で普及することが期待されています。特徴は、5G NR(New Radio)と呼ばれる、新しい高周波数帯の電波を利用すること。これによって、4Gに比べて圧倒的に広い帯域を利用でき、桁違いの大容量通信が可能に。さらに低遅延・多接続といった特性もあわせもちます。

この「5G」が、世の中のいろいろなものの仕組み、考え方、パラダイムも代えていくのではないかと、筆者は実験を見て肌で感じました。

●実は珍しくない「無人施工」

ところで、建機の無人施工自体は珍しいものではありません。現時点でも非常に危険な場所では、実際に使われています。記憶に新しいところでは2016年熊本地震の災害現場など。

ですが、現状の無人施工にはいくつか、難点・弱点があります。たとえば、「無人」といいつつ、現場から作業員がそんなに離れることはできない点。というのも、LTEは下り速度優先の設計になっており、上り速度はさほど速くありません。なので、無人遠隔操作のように、大量の現場映像データなどを上り方向に送る用途には不向きなのです。そのため、現在は、無人施工には建設業者が自前で無線LAN(Wi-Fi)を設置して使っています。が、これでは見通し距離が最長でも2Km程度しか離れるこができません。

この通信を「5G」で置き換えることで、本当に遠く離れた場所から建機も扱えるようにしよう、ということで行われているのが、この実験の主旨です。周波数帯には上下とも28GHz帯が使われています。



実験会場となったのは、埼玉県川越市にある大林組東京機械工場です。ここには災害現場を模したがれきやブロックが置かれています。画像の中央にある、ハサミ状の爪「グラップル」を取り付けた建機が、今回遠隔操作を行うマシンです。



この実験では、現場から約70メートル離れた場所に遠隔操作室が設置されています。


▲真ん中のモニタは3D映像を映しています。かなりはっきりと前後感がわかります。

操作室内には裸眼立体表示ができる4Kモニター1台、ふかん用など2Kモニター3台が設置され、机にはそのままPCゲームができそうなジョイスティックが設置されています。


▲操縦席に人はいません。窓には3D画像を撮るステレオカメラが設置されています。


▲建機の屋根の上にはふかん映像用の360度カメラと5G端末が

建機側には、「サロゲート」と呼ばれる、人に代わって建機のレバーなどを操作する装置、4Kステレオカメラ、全天球カメラ。そして、5Gの端末が設置されています。建機搭載端末から遠隔操作室の5G基地局へは実測上り200Mbps程度の通信で、常にカメラ達から、操縦席視点の立体映像やふかん映像などが送られています。

実験は、遠隔操縦室から作業員が建機を遠隔操作し、がれきの移動や、コンクリートブロックの移動整列などを行うというもの。報道陣の見ている前で、作業員が三本のスティックとスイッチ類を操り、一個50センチ四方300キログラムもあるコンクリートブロックを横にそろえたり、縦に積んだりといった操作を自在にこなしました。


▲建機の爪が器用にコンクリートブロックを持ち上げます

ただ、遠隔操縦室と建機では同じ操作感覚にはならない(たとえば建機のスティックと操縦席のスティックの遊び部分の大きさが違うなど)ため、操作者は建機の操縦と遠隔操縦両方に対して慣熟している必要があるそうです。ですが慣れてくれば、目視遠隔やWi-Fi遠隔と比べても、5Gと3D映像によって作業効率は15~25%程度改善するといいます。


▲これが操縦用の操作盤&三本のスティック。実際の建機とは操作感が少し違うので慣れが必要とのこと。

●通信の遅延はわずか1.6ミリ秒

操縦席には、4K解像度で、かつ裸眼立体視できる「4K 3Dモニター」と4台の「2Kモニター」が設置。建機とその周りの状況を見ることができます。映像は鮮明かつリアルタイム(本当に遅延やブロックノイズなどを感じません)です。

説明によれば、通信自体の遅延はおよそ1.6ミリ秒。ただし建機の操縦席カメラが捕らえた映像が、操作室のモニターに表示されるエンドトゥエンドでは遅延は約600ミリ秒ほど。これは画像のエンコード・デコードに500ミリ秒が費やされているためで、これを改良すれば、よりリアルタイムに近い操縦性能が得られるだろうと、しています。

大林組によると、操縦によって建機が受ける機体の揺れといった振動フィードバックは今回の実験では再現していません。が、あったほうが操縦者にも情報として伝わり操縦しやすくなるので、次回以降実験の機会があれば是非実装したいと話していました。

さらに、これだけ「5G」が高速なら、遠隔操作室を東京に置いて、日本中の現場の建機を操縦する。といったことの実現にも期待しているそうです。

建設現場には、たとえば、災害復旧などに代表されるような危険作業がたくさんあります。一例としてはビルディングの解体など、壁を壊すときに、一気に崩れて自分の方になだれ落ちて来たら......というような危険を、感じることがあるそうです。そのような場所で、最悪、機械が壊れても操縦者は無事でいられるような「無人運転」が求められます。KDDI、大林組、NECは実証試験を通じて、5Gを活用したICT施工の実現に向け、「建機の無人化」「リアルタイム遠隔施工」などの高度な建設技術の実現を目指すとしています。

通信が変わることで、建設業界を始め、今までその縁がなかった世界にも様々な波及効果をいずれ生むのではないか、と筆者は思います。

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