火事で71人死亡のグレンフェル・タワーに「スリー・ビルボード」 「なぜまだ逮捕が」
昨年6月14日にロンドン西部で起きた公営高層住宅「グレンフェル・タワー」の大火事について、「なぜまだ誰も逮捕されないのか」と問いかける3つの看板が15日、グレンフェル・タワーの前に置かれた。米アカデミー賞候補にもなっている映画「スリー・ビルボード」にちなみ、市民団体が企画した。
市民団体「Justice 4 Grenfell(グレンフェルに正義を)」は、広告宣伝車3台を調達し、ロンドン・ケンジントンにある公営住宅の前の通りに並べた。3つの看板(ビルボード)には、「71人死亡」、「まだ誰も逮捕されない?」、「どうして?」と書かれている。
「Justice 4 Grenfell」を立ち上げた1人、イベット・ウィリアムズ氏(52)は、大火災から8カ月が過ぎ、悲劇が「世間の意識の中から薄れつつある」のが心配だと話した。
ロンドン警視庁によると、グレンフェル火災について捜査は継続中。逮捕者は出ていない。
赤地に黒い文字の3枚の看板を載せた広告車は、15日午前7時から、ロンドン市内を移動して回った。議会議事堂やロンドン橋、セント・ポール大聖堂の前も通過した。
西ケンジントン在住のウィリアムズ氏によると、映画「スリー・ビルボード」に着想を得た広告代理店から、今回のキャンペーンの提案があったという。
フランセス・マクドーマンドとウディ・ハレルソン主演の映画「スリー・ビルボード」では、娘を殺された母親が道脇の看板で地元警察に「どうしてまだ誰も逮捕されないのか?」と問いかける。
ウィリアムズ氏は、「正義に関する問題は、世間の目の届くところに置き続けないとならないんだと、映画を見て強く思った」と話す。
「本当に強力な主張と思った。ここしばらく、火事のことが世間の意識から薄れつつあって、みんな感覚が麻痺していっているような気がしていたので」
ロンドン警視庁のクレシダ・ディック警視総監はかつて、火災について犯罪を犯した者全てに法の裁きをもたらすため、「必要なことは何でもする」と述べている。
グレンフェル・タワー調査委員会は昨年9月、正式に発足した。調査の進捗を確認するための第2回審問は3月21日と22日に予定されている。
(英語記事 Grenfell Tower campaigners in 'Three Billboards' stunt)