医師少ない日本に世界一病院が多いという謎

国民皆保険制度はこのままでは維持できない

たとえば、脳神経外科において、専門医は日本全体で約7000人登録されています。専門医を取る前の若手脳外科医は1学年300人×5年分として約1500人程度と推定されますので、計8000~9000人程の脳外科医が日本にいることになります。

一方、脳神経外科を標榜している病院は、日本全体で約2500病院存在しています。仮にすべての脳外科医がクリニックではなくて病院で働いているとしても、1病院あたり平均3~4人しかいない計算となります。

現場にいた僕の感覚ではありますが、計3~4人の脳外科医のチームでは、提供できる医療はかなり限られてしまいます。脳外科の手術には最低でも3人ほどの医師は必要ですし、その間の外来や病棟や救急対応を行う医師も必要です。

日本には3人程度の脳外科医チームで踏ん張っている病院が同じエリアに複数存在していることがありますが、このような3つの病院がくっついて、脳外科チームをつくったほうが患者さんのためにも働く側にとってもいいだろう、と思ってしまいます。

日本の医療の特徴

また、病院の数だけでなく、日本の医療の特徴として、民間病院を中心とした医療提供体制があります。

日本の約9000の病院のうち、約7割が民間病院(私立病院)で、3割が公的な病院です。普段はあまり気にしないと思いますが、病院は「◯◯会」のような医療法人が経営している病院に代表されるような民間病院と、「市立〇〇病院」や「国立〇〇病院」のような公的な病院の、大きく2つの種類に分けられます。

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日本の社会保険のように公的な仕組みで医療財政をまかなっている国(ドイツ、フランス、イギリスなど)では、大半の病院が公的病院となっており、医療の提供体制が統制されています。イギリスでは医療は税金を財源としているため、医師は公務員です。

一方で、医療財政が民間の医療保険で成り立っている国の代表がアメリカです。アメリカでは75%が民間病院となっていて、医療はインフラというよりもサービスという側面が強くなります。

つまり、日本は公的な仕組みで医療の財政が成り立っている一方で、その財政を使って医療を提供する病院の多くが民間という、世界的にみると特殊な状況で成り立っているのです。民間病院の経営努力により、日本の医療費が抑えられているという現状もありますが、政府や公的な制度によって病院の数を規制することは難しくなります。

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  • NO NAMEaf0a6b239e7a
    日本の健康保険制度が、このままでは維持しないということは、以前からも指摘されていたと思います。
    長寿世界一を維持するために、薬漬けの不健康長寿者ばかり増やす政治と行政には、うんざりです。
    up55
    down7
    2018/2/16 11:47
  • NO NAME455252ffb7a7
    大企業の健康保険の収入の半分は高齢者医療のために没収されてるからね。保健は貧乏人のためのセーフティーネットだから一定以上の資産を持つ高齢者には資産の額に応じて段階的に自己負担額を上げればよい。例えば貯金が3000万以上あれば全額自己負担とか。証券口座や預金口座の資産をマイナンバーと紐づければ可能だから早くやってほしい。
    up63
    down17
    2018/2/16 11:18
  • NO NAME5b9707dcedb4
    安かった昔と高額な今の健康保険料の差を、所得はなくても金融資産のある高齢者層に負担してもらう以外ない。それだけお金がかかっているのだから文句はないはず。

    どの世代がいくら払ったかはハッキリしているのだから、一学年ごとに現在や将来との差額を計算して、早々に徴収しないと、現役の保険料だけでは制度の維持が不可能になり完全に手遅れになりそうだ。
    そもそも、給料が多少あがっても、手取りが全く増えないのも健康保険とか年金のせいだし。
    up50
    down6
    2018/2/16 11:46
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