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『LoL』世界最強プレイヤー、Fakerセンパイの何がスゴイのか!?

イ "Faker" サンヒョク──『リーグ・オブ・レジェンド』(以下、『LoL』)のファンならば知らない人のいない最強のプロプレイヤーだ。韓国のプロチーム「SK Telecom T1 2」のメンバーとして2013年に鮮烈なデビューを飾った彼は、韓国最強のプレイヤーとして、そして『LoL』最強のプレイヤーとして伝説を積み重ねている。

2013年以降、ずっと韓国チームが独占し続けている『LoL』世界大会の王座だが、そのうち3回の制覇(うち2回は連覇)を成し遂げているのはFaker選手を含む、ごくごく少数の人間しかいないのだ。

そんなFaker選手の一体どこが「すごい」のだろうか? プロデビュー以降に彼がチームとともに積み上げてきた実績の数々を振り返りつつ、「魔王」の顔に迫っていこう。

2016年世界大会準決勝会場となったマディソン・スクエア・ガーデンの前にたたずむFaker選手

ルーキーイヤーに世界大会優勝、衝撃のデビュー年

Faker選手の『LoL』プロ選手としてのキャリアは、2018年に入る前にすでに5年を数えている。そのデビューは鮮烈なものだった。

2013年4月6日。Faker選手がデビューを飾ることとなった「SK Telecom T1 2」(以下、SKT2)の初戦は、前年の世界大会準決勝チーム「Azubu Frost」の流れを汲む名門「CJ Entus Blaze」。対面は当時韓国きってのミッドレーナーとして知られていたAmbition選手だった。使用チャンピオンはニダリー(リメイク前)で、完膚なきまでにAmbition選手をたたきのめし、衝撃のデビューを果たすこととなる。チーム名からわかるように、SKT2はセカンドチームであったが、この春スプリットを終えた時にその地位は逆転していた。SKT2が最終順位3位という成績を収めた一方で、SKT1はベスト8止まりだったのだ。

夏を前にチーム名を改めた「SK Telecom T1 K」(以下、SKT K)所属となったFaker選手。メンバーはImpact選手(トップ)・Bengi選手(ジャングル)・Faker選手・Piglet選手(ADC)・PoohManDu(サポート)で、ここでFaker選手は縦横無尽の活躍を見せていく。当時のゲームはミッドレーナーがゼドやカ=ジックスを使って対面の相手を一気に倒し、サイドレーンへとローミングするスタイルが主流で、ミッドの技量がそのままチームの強さに直結するバランスであった。春まで同じSKTに所属していた選手を抱える「Jin Air Greenwings Falcons」や「MVP Ozone」を相手に、Faker選手は周囲の期待に違わぬ圧倒的な技量を見せつけ、ことごとく下していった。

決勝ではやはり強豪である「KT Rolster Bullets」と対峙し大接戦の末に、今なお語り継がれるミラーマッチを制して勝利し、夏スプリットの最優秀選手賞を受賞している。夏の地域選抜戦も勝ち抜いて、世界大会出場第3シードを獲得した。
KTのミッドRyu選手とFaker選手の同キャラ「ゼド」対決で最も有名な場面。相手よりも体力が少なかったFaker選手だが、ハンドスキルと心理戦で完全にRyu選手を圧倒してみせた

そして迎えた世界大会。グループステージでのSKT Kは中国チーム「Oh My God」にこそ1敗を喫するものの、残りを全勝しグループ1位でノックアウトステージへ進出する。ノックアウトステージのトーナメントにおいても韓国第一シードの「Najin Black Sword」を退け、決勝では中国の「StarHorn Royal Club」を3勝0敗と圧倒して2013年の世界王者の座についた。

この時のFaker選手はルーキーにもかかわらず、あまりにも圧倒的な技量を見せた。世界最高のミッドレーナーの道のりの始まりである。
ルーキーイヤーの2013年に世界チャンピオンに輝いた。中央がFaker選手

苦難への直面、変化していくシーン

世界最強の称号を獲得したSKT KとFaker選手だが、2014年は大きな苦難に直面する。シーズン途中にサポートとしてチームを支えてきたPoohManDu選手が健康上の理由でスターターを降りることとなった結果、チームの行く手には暗雲が立ち込め始めた。5月に全世界よりトップチームを招待して開催された「All-Star Paris」ではPoohManDu選手がスターターを務めて圧倒的な結果を残すものの、ふたたび国内戦に戻った後のSKT Kの不調は止まらなかった。

SKT Kの夏の成績は落ち込み、Samsung・NaJin・KTといったチームが上位を占めるようになる。そして、この年の世界大会に出場した韓国チームは「Samsung Blue」「Samsung White」「NaJin White Shield」。──Samsung Whiteの面々がサモナーズカップを掲げるさまを見つめていたFaker選手の心中は、いかなるものであっただろうか。
2014年世界大会の壇上に、Faker選手の姿はなかった

2015年には、世界中の競技シーンで大きな地殻変動が起こった。規定の変更で、同一組織が2つ以上のチームを同一リーグへ参加させられなくなったのだ。これによってSKTはKとSの2チームを統合し、新しい「SK Telecom T1」(以下、SKT)を立ち上げることとなった。この時に発表されたチームメンバーはMaRin選手(トップ)・Impact選手(トップ)・Bengi選手(ジャングル)・Easyhoon選手(ミッド)・Faker選手(ミッド)・Bang選手(ADC)・Wolf選手(サポート)・Piccaboo選手(サポート)の8名で、Piccaboo選手以外はKとSから引き続き所属している。また、2014年世界大会に参加した多くの韓国人選手が地域間移籍のかたちで他地域へと流出したことは、韓国内外のシーンに大きな影響をおよぼしてもいた。

春スプリットのSKTはレギュラーシーズンを2位で通過してプレーオフを優勝し、この年より始まった春夏間の国際大会「Mid-Season Invitational」(以下、MSI)への切符をもぎ取った。2015年当時のFaker選手はアサシンやバーストメイジのような、瞬間的なダメージで相手をキルするチャンピオンでの活躍が目立つ。ルブランやシンドラの仕上がりはすさまじく、特にルブランは無敗という結果を残していた……、あのMSI決勝戦までは。

オールスターイベントに代わって初めて開催される春夏間の地域間真剣勝負ということで注目を集めた2015年のMSI。SKTはグループステージで全チームを圧倒し、決勝へとたどり着く。決勝で相対した「Edward Gaming」は中国のチームだが、前年の世界大会で活躍した韓国人であるPawN選手・Deft選手を擁するチームで、特に同じミッドであるPawN選手とFaker選手は互いのプレイングをよく把握していた。

死闘の末の2勝2敗、絶対に落とせない5試合目で確固たる自信を持ってFaker選手はルブランをピックしたが、PawN選手は「Fakerのルブランなら倒せる」とモルガナを繰り出し相手を完封。MSI王者の称号を中国へと持ち帰った。このドラフトは、プロたちが技量と戦略をもって繰り広げる頭脳戦の激しさの象徴といえるだろう。
2015年、国際大会であるMSIでは敗退したFaker選手だが、続く世界大会でふたたび王座を手にする

MSI制覇を逃したSKTとFaker選手。夏スプリットで圧倒的な強さを見せ、KT Rolsterを一蹴して世界大会へと向かう彼らの目標はズバリ「2回目の世界大会優勝」である。2015年の世界大会に参加したSKTメンバー──Marin選手・Bengi選手・Faker選手・Easyhoon選手・Bang選手・Wolf選手──この6名は、最も強いSKTのイメージを作った伝説的なロースターとなる。

ふたたび破竹の快進撃で決勝戦にたどり着いたSKTの前に立ちふさがったのは、彗星のように現れた新鋭の韓国チーム「KOO Tigers」。他チームからこぼれ落ちた選手を集めたKOOは、世界大会寸前にスポンサーが経営難に陥って支援が受けられなくなるという不幸に見舞われたが、異国の地で奮戦し決勝戦までたどり着いたチームだ。

かつてのSKT自身の写し鏡のようなルーキーチームを相手に容赦も慈悲もない試合を展開したSKTは、KOOに1勝のみを許し再びの王座に返り咲いたのだ。Faker選手はといえば、決勝戦の選手入場時にステージで前転したり、優勝メダル授与後にカメラの前でブロッコリーを食べたりと、パフォーマンスにも余念のない2度目の世界大会優勝であった。

決勝戦選手入場時に前転を決めるFaker選手(LoL eSports公式 Twitter)
https://twitter.com/lolesports/status/660455081049849856

なお、この2015年にFaker選手は国内外での活躍を称えられ、韓国eSports協会(KeSPA)より「Korea E-Sport Player of The Year 2015」「KeSPA Best League of Legend Player 2015」「KeSPA Most Famous Player 2015」と3つの賞を受賞している。

さらなる頂への挑戦

世界大会優勝2回という結果を出したSKTとFaker選手だが、挑むべきものはまだまだ残っていた──前年に逃したMSI優勝と、そして世界大会の「連覇」だ。前人未到の領域に挑む権利というのは、真に頂点に立つ者しか持ち得ない。

MaRin選手やEasyhoon選手といった直近の世界大会優勝の立役者たちが新天地を求めて離脱していく一方で、Duke選手(Top)・Scout選手(ミッド)・Blank選手(ジャングル)という新たな力がSKTへと流れ込んだ。KTやROX(KOO Tigersより改名)といった強豪たちを跳ねのけて春スプリット優勝を手にしたSKTは、2年目の開催となったMSIへと乗り込み「ブラケットで必ず勝つSKT」の名のもとに、北米やアジアのチームを下して念願のMSI初優勝を飾った。

夏スプリットはプレイオフでKTに破れたものの、累積ポイントにより世界大会出場枠を手にする。Bengi・Blank両ジャングラーを使い分けていく「シックスマン」戦略により世界大会を勝ち抜いていくSKTと決勝戦でサモナーズカップを争うこととなったのは、2014年の世界大会優勝後にメンバーが総入れ替えとなり再出発を余儀なくされたかつての「Samsung White」こと「Samsung Galaxy」。そしてそのジャングラーとして牙を研いでいたAmbition選手は、かつてFaker選手がデビュー戦で圧倒した相手であった。3本先取の対戦が5試合目までもつれこむ壮絶な戦いの果てに、ライバルを下して再びカップを手にしたのはSKTとFaker選手。ここに、世界大会優勝3回、そして初の連覇王者が誕生したのだった。
2016年世界大会のテーマソング「Ignite」PVでは、かつてFaker選手がプレイしたチャンピオン「ライズ」の圧倒的な威容も描かれている

オフシーズンは出会いと別れの季節ではあるが、2017年開幕前のオフシーズンでは、Huni選手(トップ)とPeanut選手(ジャングル)というビッグネームの加入が話題になった。新たな力を得て春スプリットのプレーオフで優勝を飾り、MSIの連覇をも達成したSKT。しかし3度の世界大会優勝をFaker選手と一緒に経験したBengi選手の離脱は、決して埋まらない穴をSKTにもたらしていた。新加入選手がすでに持っていたプレイスタイルをあまり活かすことができなかった上に、Bang・Wolf両選手によるボットレーンの不調などが相まって国内リーグでは頂点に一歩届かない結果となり、前年に引き続き累積ポイントでの世界大会出場となる。

世界大会中もこうした選手の不調や歯車の噛み合わなさといったものが見て取れつつも、ギリギリの戦いを制しながらなんとか決勝戦に勝ち進んだSKT。待っていたのは前年と全く同じメンバーで雪辱を果たさんと闘志を燃やすSamsung Galaxy。誰もが固唾を呑んだこの対決だったが、周到な対SKT戦略を用意したSamsungが3勝0敗でSKTを制し、前人未到の3連覇は阻まれたのであった。
敗北が決まった後のブースにて、試合結果画面を直視できずに涙を流すFaker選手の姿は、全世界のファンに衝撃を与えた

チームの柱、Faker

さて、ここまでFaker選手がSKTというチームとともに成し遂げてきた歩みを振り返ってきた。卓越したハンドスキル、チームの勝利への献身、持てる力を大舞台で存分に発揮できるメンタルなど、プロ選手として類まれなる資質を備えているFaker選手。彼がチームで果たしている役割とは何だろうか。

競技シーン初期(2013年ごろまで)の『LoL』はあまりチームプレイ要素が発達しておらず、チームに実力者が一人いれば試合を強引に持っていくことができた。Faker選手をはじめとして、この頃に有名になったプロ選手にはそういった選手が多い。しかし開発陣はそういったワンマン的なゲーム性に見切りをつけ、うまいプレイヤーが一人いるだけで勝てるゲームから、コミュニケーションとチームプレイが重要なゲームへと、『LoL』を大きく方向転換させた。こうして変化したゲームに対し、韓国という地域はチーム全員をひとつの生き物のように組織化し、集団戦とチームプレイで勝利を目指すように適応を続けている。

そう、一人で試合を勝ちに導けなくなったといっても、Faker選手がたった5人しかいないチームメンバーの一人であることには変わりないのだ。ミッドレーンはマップの中央という大事な場所であり、ミッドレーナーがたたき出すダメージというのは、ボットレーンのADCとともにチームを勝利に導くための重要な要素である。こうしてSKTは、ADCとして卓越した技量を誇るBang選手と、世界最高のミッドであるFaker選手のふたりを「チーム全体で育てる」戦略を取るようになっていった。

組織として個人に頼る戦略ではあるが、それをもって世界最強のチームとして君臨してきたというのもまた、Faker選手が発揮し続けてきた才能を示しているといえよう。
2017年も世界チャンピオンを逃したFakerとSKTだが、復活の兆しは見え始めている

他方で、Faker選手がチームの中心であることに不満をもって離脱していったチームメイトも存在する。Faker選手・Bengi選手とともに3回の世界大会優勝を指導してきたkkOma監督は、優秀な人材を発掘することで離脱した選手たちの穴を埋め続けている。しかし2017年はチームに合った人材を取り入れられたとはいえず、ベテランたちの不調もあって世界大会優勝を逃すこととなってしまった。

今年の韓国リーグ春スプリットはすでにレギュラーシーズン9週間のうち4週が終わっているが、昨年後半の不調を引きずったSKTはあまり良い結果を出せていない。しかしながら、復活の兆しは感じられる。──第4週の対KSV(Samsung Galaxyより改名)戦は、昨年の世界大会決勝以来の再戦だったが、SKTは力強い試合運びで1勝も与えることなく勝利している。選手の調子、コミュニケーションとチームワーク、メタゲームの風向きといった要因はあるが、それらに長期間適応しなければSKTとFaker選手がタイトルを取り続けることはできなかっただろう。

プロ選手とは、ゲームへの適応のプロである。今後もSKTとFaker選手、双方の底力に期待したい。

執筆:山口佐和子
執筆協力:ユラガワ
写真出典:https://www.flickr.com/photos/lolesports/

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