中国「2人目出産解禁」2年目に出生人口が減少

人口減の危機回避を狙った政策変更も効果なく

2018年2月16日(金)

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2016年から「二人っ子」奨励に転換したが…(写真:Imaginechina/アフロ)

 1月20日、中国政府“国家統計局”は、全国人口変動サンプル調査に基づく2017年の出生人口推計値を発表した。それによれば、中国における2017年の出生人口は1723万人で、2016年の1786万人より63万人減少した。人口1000人当たりの出生数を示す「人口出生率」も、2017年は12.43%で、2016年の12.95%より0.52%低下した。このニュースは中国国民を驚かせると同時に、迫り来る高齢社会突入を前にして、出生人口の減少がもたらす人口危機が不可避であることを想起させたのだった。

「単独両孩」から「全面二孩」へ

 2013年11⽉に開催された「中国共産党第18期中央委員会第3回全体会議 (略称:18期三中全会)」は“単独両孩”政策の実施を決議し、同政策は2014年1⽉から全国の各省・自治区・直轄市で順次実施された。中国では1980年頃から“独生子女(一人っ子)”政策が実施され、1組の夫婦に許される子供の数は1人に限定されて来た。ところが、1人の女性が出産可能とされる15歳から49歳までに生む子供の数の平均を示す「合計特殊出生率(total fertility rate)(以下「TRF」)が、2010年に実施された第6回国勢調査に基づく推計で1.18<注1>と世界最低を記録したことから、人口の減少に歯止めをかける必要性が生じた。この結果として提起されたのが、“単独両孩”政策だった。

<注1>TRFの世界平均は2.5であり、中国の1.18はその半分にも達していない。なお、米国は1.6、日本は1.5、ドイツは1.4と先進国は総じて低い。

 “単独両孩”政策とは、夫婦の一方が“独生子女(一人っ子)”である場合には子供の数を2人まで認めるというもので、人口減少を食い止めるための苦肉の策だった。しかし、2015年に実施された小規模な国勢調査(人口1%のサンプリング調査)の数字の基づくTRFは1.05となり、2010年の1.18からさらに低下したことが判明した。この結果、一人っ子政策をさらに緩和することが必要となり、2015年10月に開催された「中国共産党第18期中央委員会第5回全体会議(略称:18期5中全会)」で“全面二孩(全面的二人っ子)”政策が提起された。“全面二孩”政策は、2015年12月27日に中国の国会に相当する“全国人民代表大会”の常務委員会で採択され、2016年1月1日から正式に実施された。

コメント3件コメント/レビュー

二人目解禁が手遅れだった、ということなのでしょうね。(2018/02/16 12:50)

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「中国「2人目出産解禁」2年目に出生人口が減少」の著者

北村 豊

北村 豊(きたむら・ゆたか)

中国鑑測家

住友商事入社後アブダビ、ドバイ、北京、広州の駐在を経て、住友商事総合研究所で中国専任シニアアナリストとして活躍。2012年に住友商事を退職後、2013年からフリーランサーの中国研究者として中国鑑測家を名乗る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

二人目解禁が手遅れだった、ということなのでしょうね。(2018/02/16 12:50)

巨大な人口を抱える中国が人口減少に向かうとき、今までのままでは、(経済が)立ち行かなくなる恐れがあるのは現実的な不安として理解できます。しかし、日本のメディアでは国内の少子高齢化はもとより、隣国の人口減少までもが、画一的に「悪しき現象」として述べられることに疑問を感じます。人口動態は予測できることであり、将来の経済活動も推測できるのですから、もはや人口増加に頼った経済発展だけを良しとした社会運営に頼る事が出来ないのですから、それに代わる施策を打てば良い、となぜ言えないか?人口減少経済に直面した経験が無いからか?不況要因に過敏に不安がるだけで、乗り越える方策の話が出ないのは情けないばかりです。人口減少先進国としては、少子化の防止云々ではなく、中国の人口(ひいては進展国の人口爆発)の抑制がありがたい事として語れるように、(拡大均衡ではない)安定(もしくは縮小均衡)社会の実現に取り組みたいものです。(2018/02/16 11:43)

日本も他国のことは云えないが、中国に関しては覇権主義の完遂が先か内部崩壊が先か興味を持って観ていきたい。(2018/02/16 08:41)

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