日銀総裁、黒田氏再任を提示 副総裁に雨宮・若田部氏

経済
政治
2018/2/16 11:04 (2018/2/16 12:01更新)
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 政府は16日午前、衆参両院の議院運営委員会理事会で、4月8日に任期満了となる日銀の黒田東彦総裁を再任する人事案を提示した。3月19日に任期満了となる中曽宏、岩田規久男両副総裁の後任には日銀の雨宮正佳理事と早大の若田部昌澄教授を充てる案も示した。安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」を支えてきた大規模な金融緩和を維持して、デフレ脱却の実現を目指す。

黒田東彦・日銀総裁(中)、若田部昌澄・早稲田大教授(左)、雨宮正佳・日銀理事

 政府は3月中旬までに衆参の本会議での採決を目指す。衆参両院で同意が得られれば人事案は承認され、正副総裁が就任する。

 正副総裁の任期は2023年までの5年間となる。日銀総裁を2期連続で務めるのは1961年に再任した山際正道氏以来、57年ぶりだ。

 黒田氏は13年3月に就任し、同年4月に「2年で2%」の物価上昇を目標に掲げた「異次元の金融緩和」に着手した。14年の追加緩和や16年のマイナス金利政策の導入など積極的な緩和策を進めて、アベノミクスをけん引してきた。円安・株高や有効求人倍率の大幅な改善といった成果を生んでおり、首相も手腕を高く評価していた。

 雨宮氏は金融政策を立案する企画担当が長い。理事として黒田氏を支え、16年に導入した長短金利操作などの設計に関わった実績がある。

 若田部氏は積極的な金融緩和を訴える「リフレ派」とされる。英語が堪能で、米経済誌に連載を持つ国際派としての顔も持つ。

 米国や欧州の中央銀行はすでに金融緩和の正常化や金利引き上げに動いている。大規模金融緩和を続ける日銀が、新執行部の5年の任期のなかでどのような出口戦略を描いていくかが問われることになる。16年に導入したマイナス金利政策が銀行や生命保険会社の収益を圧迫するなど、金融緩和の副作用への懸念も強まっていた。

 野党内では、黒田氏を再任する政府の人事案には賛成できないとの声が出ている。黒田氏が進める大規模な金融緩和政策に批判的な意見があるためだ。国会審議では「安倍政権は大胆な金融緩和に頼り過ぎている」と追及を続けている。

 立憲民主党の長妻昭代表代行は16日昼、国会内で記者団に「物価上昇率2%の目標や達成の道筋の手法が検証されなければいけない。検証のないまま続投させることはあってはならない」と述べた。人事への賛否について党内で検討する意向を示した。社民党の又市征治幹事長は13日の記者会見で「国民の多くが景気回復の実感がない。黒田総裁の続投には断固反対したい」と述べている。

 黒田 東彦氏(くろだ・はるひこ) 67年(昭42年)東大法卒 大蔵省(現・財務省)へ。98年に国際局長、99年に財務官。内閣官房参与や一橋大教授、アジア開発銀行総裁を経て、13年3月から現職。福岡県出身。73歳。
 雨宮 正佳氏(あまみや・まさよし) 79年(昭54年)東大経卒、日銀へ。06年に企画局長、10年に理事。大阪支店長を経て13年3月から現職。東京都出身。62歳。
 若田部 昌澄氏(わかたべ・まさずみ) 87年(昭62年)早大政経卒、トロント大博士課程単位取得退学。05年から早大教授。神奈川県出身。52歳。

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