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国交省「メール自動廃棄」の問題点〜なぜご都合主義がまかり通るのか

専門家がゼロから解説

1月、国土交通省の「メール自動廃棄」がニュースになった。その後見送られたが、そもそもメールの自動廃棄とは何か? ほかの省庁ではどうなのか? NPO法人情報公開クリアリングハウス理事長・三木由希子氏が、情報公開請求で集めた情報や大臣の記者会見などから現状と問題点を明らかにする。

メール自動削除はなぜ違法ではないのか

1月16日の毎日新聞の「メール1年で自動廃棄 国交省 政策検証困難に」によると、国土交通省は2月1日から公用電子メールを、メールサーバから1年で自動消去するシステムを稼働させるという。

2月3日の毎日新聞が、自動削除の開始を国交省は当面見送ったと報じた。筆者が聞いているところによると、国交省ではメールソフトを利用してパソコンから送受信していないようなので、事前に共有フォルダなどで保存するか、プリントアウトしていないと、文字通り1年たつと勝手にメールが消えるところだった。

また、2月2日には質問主意書に対する答弁書で、政府はメールの自動削除を財務省、国税庁、厚生労働省、防衛省、検察庁の5省庁で行っており、また、30日から半年での自動削除としている。ただし、必要なメールは速やかに保存しているとも、政府は答弁しているという(「財務省など5省庁、公用メールを自動削除 30日~半年」朝日新聞DIGITAL 2018年2月2日)。

同じ「自動削除」でも、国交省と財務省以下5省庁は分けて考える必要があるかもしれない。

 

筆者は、2015年に各省庁で電子メールの取扱いについてどのようなルールを設けているかを調べるため、情報公開請求で情報収集したことがある。

その時点の各省庁の規則等によると、財務省、国税庁、防衛省は、メールソフトを利用してパソコンから送受信しているようだ(厚労省と検察庁は該当する規則の内容がほぼ非公開で確認不能)。

少なくともこの3省庁は、2015年時点の資料によれば、メールサーバからの自動削除がメールの廃棄とはなっていない可能性がある。

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一方の国交省は、メールサーバからの自動削除がメールの廃棄にもなる運用を予定していたようなので、危うさはその比ではない。

南スーダンPKO日報問題、森友学園問題、加計学園問題と一連の問題で、政府のご都合主義的な行政文書の扱いを目の当たりにしてきたわけだから、メールを自動削除するサーバ運用しようという行政に対して批判があるのは当然のことだ。

しかし、行政的な用法でいうと、国交省や5省庁が行っている自動削除は「違法ではない」ということになっている。

サーバから自動削除していない省庁も、人力やメールソフトの設定で実質的に同じことをしていること、行政文書として保存すべき電子メールは、メールボックスや個人のパソコンではなく共用フォルダなどに保存しているはずなので、行政文書を廃棄していることにはならないから、違法性はないというのが政府の認識だ。

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