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 100人、400人、500人……。企業向けシステム構築や個人向けネットサービスなどを手掛けるIT企業を対象にアンケートを集計すると、AI人材の不足規模は他業種とは桁が違うことが分かる。1000人を超す人材の不足を訴える企業も複数ある。

AI人材の育成・獲得についてIT企業14社から得た回答の概要。AI人材の不足数として数百人かそれ以上を挙げる企業が目立つ
(表の「人材数」は、自社にとっての「AI人材」のおおよその現状人数と不足人数。 「人材確保施策」は、人材確保のために有効または有望と考える施策を示す。 「活用事例」は、自社におけるAIの代表的な活用事例を挙げてもらった)
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 中でも多いのが、不足数を2000人と答えたヤフー。同社は、大規模データの処理や分析に長けた人材を「データサイエンス人材」と呼ぶ。既に500人ほどを擁しているが、まだまだ足りないという。「当社の全エンジニア、約2500人ほどがデータサイエンス人材になるべきと考えている。だから、あと2000人は欲しい」。同社のCDO(チーフ・データ・オフィサー)を務める佐々木潔執行役員はそう話す。

 人材不足を少しでも解消すべく、IT企業はあの手この手で外部からの人材獲得に挑んでいる。AI技術を得意とする大学研究室との連携を強化するほか、AI人材に自社の研究開発体制を認知してもらう取り組みに注力しているようだ。獲得競争がし烈を極める中で、有望な人材に自社をアピールしたいとの狙いが見て取れる。

 有効なアピールの場の一つが、AI分野の研究者が参加する学会だ。NECは人材獲得の有効な施策として「学会での存在感」を挙げる。まさに金の卵が集まる場で自社の魅力を売り込めれば、優秀な人材をごっそり確保できる可能性がある。ヤフーも、社員の論文執筆を支援する取り組みを実施している。社員のスキル向上に役立つほか、「学会で発表する論文は、学生が見ている。ヤフーはすごいことをやっている、と思ってもらえる」(佐々木執行役員)という狙いもある。

 野村総合研究所も、自社の認知度向上に注力する。アンケートの回答では、AI人材の獲得に有望な施策として「自社の魅力あるAIソリューションを積極的に社外に訴求することによる認知向上」に加え、「書籍発行、TV出演、雑誌記事掲載、著名な講演でのプレゼンなどを通じたAI関連人材の認知向上」を挙げた。積極的な情報発信を続けることで自社の存在感を高める作戦だ。

 では、AI人材に何をアピールすれば自社に来てもらえるのか。象徴的なのは、NECの回答にある「高品質な保有データ」だ。AI人材が腕をふるうには、大量のデータの存在が不可欠。データを存分に使えることをAI人材に訴えるのは、AI人材獲得の王道といえる。

 給与面での処遇も一つの方法だ。「グローバル基準での処遇」(NEC)や、「給与体系の変更」(伊藤忠テクノソリューションズ)などの回答から、AI人材向けの待遇を用意する動きが進んでいることがうかがえる。