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【政治】

裁量労働制調査データ ミス?捏造? 厚労省、19日に精査結果公表

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 安倍晋三首相が裁量労働制で働く人の労働時間についての国会答弁を撤回した問題を巡り、加藤勝信厚生労働相は十五日の衆院予算委員会で、首相が引用した厚労省調査を精査した結果を十九日に国会で報告すると明らかにした。この調査では、裁量労働制ではない一般労働者が不自然に長く働いたケースが見つかっており、専門家や野党には「長時間労働の温床とされる裁量労働制への懸念をなくすために、捏造(ねつぞう)された数字ではないか」との疑いも出ている。

 問題の調査は、二〇一三年度の労働時間等総合実態調査。一般労働者九千四百四十九人の一日の残業時間を聞き取り、平均一時間三十七分とした。法定労働時間(八時間)を足すと九時間三十七分。裁量労働制で働く人の平均労働時間も調べ、約二十分短い九時間十六分とした。首相はこれを根拠に、今年一月、裁量労働制の労働時間が一般労働者より短いデータがあると答弁した。

 一般労働者の残業時間の内訳を公表するよう野党が同省に求めたところ、一日十五時間超残業した人が九人いたことが判明。一日二十三時間超働いた計算だ。

 また、調査は一般労働者の一週間の平均残業時間を二時間四十七分としていた。それなのに一日の平均が一時間三十七分というのは不自然との指摘もある。

 厚労省の担当者は、十五時間超の残業について「残業時間ではなく、一日の総労働時間を間違って聞き取った可能性もある」と、単純ミスだった可能性を指摘する。

 一方、立憲民主や希望など野党六党が十五日、合同で厚労省から事情を聴いた会合では「官邸の指示で作った数字ではないのか」といった声が相次いだ。

 会合に出席した法政大の上西充子教授は「裁量労働制が長時間労働にならないことを示すため、調査の後から作られたデータと考えるのが自然だ」と話す。

 十五日の予算委で厚労省は、裁量労働制の労働時間が一般労働者より短いとする調査は、今回問題になった厚労省調査以外にないことを明らかにした。

 首相は同日の政府与党連絡会議で、答弁撤回に触れ「気を引き締めて細心の対応をしたい」と与党に陳謝した。 (木谷孝洋)

 

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