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ウナギ増へ新養殖法 愛知県水産試験場が考案

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 近年、極度の不漁が続くニホンウナギの新たな養殖法を、愛知県水産試験場(蒲郡市)が考案した。生後、性別が分かれるウナギ。急ピッチで育てるとオスに、自然界並みにゆっくり育てるとメスになることを突き止め、オスに偏りがちな養殖でもメスの比率を高める手法を編み出した。

 ウナギの飼育手法、期間は養殖場によって異なるが、現在の主流は水温を高めた養殖場でたっぷりとエサを与え、半年程度で体重二〇〇グラム以上に育てて出荷する。養殖期間が短いため、コストが削減でき、病気にかかったり、共食いしたりするリスクも少ない。

 試験場は、水産庁の委託を受け、短期間で育てた養殖場のウナギ六百六十七匹を調査した結果、92・6%がオス。短期間で育てる養殖場ほど、メスの比率が低いことも分かった。

 三年ほどで二〇〇グラム程度の成魚になる自然界では、オスとメスの比率はほぼ一対一という。ただ雌雄は外見では分からない。

 ウナギは生後数カ月で体重三グラム(体長一〇~一五センチ)ほどに成長し、性別が分かれるとされる。試験場は当初、この大きさになるまでエサや水温を調整し、ゆっくり育てればメスの比率が高まると推測した。

 しかし、幼少期のメスは体が小さく、多くはオスに食べられてしまう。このため二段階で育てる養殖法を考えた。自然界に近い低温の養殖場で一年ほど育てた中から、体重五〇グラム(体長三〇センチ)程度の比較的小さい個体を、別の養殖場(再飼育場)に移す。

 ウナギは成長につれ、メスが体格で追い越す特徴があるため、再飼育場でグンと大きくなった個体が、メスとなる。この手法で、成長時にメスの比率を36%に高めることに成功した。

 県と国は、育てたメスを全国各地に放流し、産卵数を増やす考え。太平洋のマリアナ海溝付近にあるとされる産卵場所まで実際に到達できるか、今後、産卵ルートを調査する。

 試験場の岩田友三主任研究員は「(成魚を)放流してもオスばかりでは資源量の確保につながらない。産卵できるメスが必要。メスの比率をさらに高め、手法として確立させたい」と話す。

◆稚魚、記録的な不漁

 ウナギの稚魚シラスウナギは昨年末から、記録的不漁が続く。水産庁によると、昨年11月から1月に国内の養殖池に入れられたシラスウナギはわずか1.1トン。前年同期の1割程度にとどまる。

 台湾や中国など海外でも不漁で、資源量の減少が心配されている。

 2010年、水産総合研究センター(当時)は、人工ふ化したウナギを産卵させ、その卵をふ化させる「完全養殖」に世界で初めて成功したが、コスト面などの課題から量産化には至っていない。

◆技術の活用方法、検討を

 日本大ウナギ学研究室・塚本勝巳教授の話 ホルモン注射してメス化する方法も採られているので、素晴らしい技術だ。将来的な完全養殖にも生かせる。ただ、養殖ウナギを放流しても、自然環境に適応できず、産卵に結び付いていない可能性がある。技術の活用方法の検討は必要だ。

 (中尾吟)

 

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