2017-12-24
私たちは高額納税者に感謝しなければならないのか
ひとさまのtweetから…
年収1500万の人の社会保険料っていくらか知ってる?年200万以上だよ。病気もしないで一所懸命働いて貧乏な人の年金や生活保護代払ってるんだよ。金持ちはイイわねえとかイヤミ言う前にお礼の一つも言ったらどうなんだ。と、ジッちゃんが言ってた。
なんか最近、こういうコト言う人が増えてきたように思いますね
(…と言いつつ、それは昔からかな…?)
このtweetで語られてることが妥当なのかどうかを考えるあたって
まず、税金とか社会保険の金額決定の仕組みを考えてみると
それは「応能負担」という原則に基づいて決定されるんですね
つまり、その人はどれくらいの税金や社会保険料を納めることができるのか…という観点で
納めるべき金額が決まるわけでして、
収入の少ない人には小さな負担で、収入の多い人には大きな負担をお願いする…ということになってるんです
(これって、すっごく当然な話ですよね…)
で、税金のうちでも所得税なんかは、その考え方が徹底していて
収入の多い人ほど税率が高くなる…という「累進課税」という方式を採用してる一方で
健康保険料や厚生年金などの場合には、累進制度はとってなくて
基本的には一律のパーセンテージで計算されてるんですね
(→これは、累進方式よりも高額所得者に有利な仕組みと言えます)
もちろん、一律のパーセンテージであっても高額所得者は低所得者よりも
「絶対額」では多くの負担をしてる…ということになりますが
一律のパーセンテージで負担…というのは、所得税で考えると
所得額にかかわらず税率が一定…ということといっしょになるので
社会保険料の仕組みは高額所得者にはとっても優しい算定方法だと言えるでしょう
だから、高額所得者の社会保険料が「絶対額で」高額になる…のは
そらまぁ、当然よね…という話であって、特にそれが高額所得者に不利な仕組みであるとは言えません
なので、ぼくのような庶民が高額所得者の方々に「感謝しろよ」と言われても
いえいえ、高額所得者こそ、現在の一律パーセンテージの社会保険料負担の仕組みに感謝しないとね…
と言いたくなるのであります
また、累進課税方式を取る所得税だって、昔に比べると最高税率がだいぶ下がってきて
これまた、だんだんと(超)高額所得者に優しい仕組みになってきてるので
日本が高額所得者に厳しい税制や社会保険制度を取ってる…とも言えないから
やっぱり、高額所得者は(負担が多くて)可哀想…とか
たくさん負担してもらってるから感謝しないと…なんてことも、
ボクはあんまり…というか、ほとんど考えないのであります
また、ボクは知らんかったんだけど…
社会保険料の対年収割合は、年収450万円の場合に最大の負担(東京都14.66%)になり、本来は年収の15%程度が目安だとされているので、負担率が13%にも達しない年収1500万円は、むしろ甘やかされている所得層になる。 というか、社会保険は1200万円を境に稼ぐほど負担が軽くなる設計で富裕層優遇。
(ひとさまのtweetより)
…というコトになってるそうなので、やっぱり
高額所得者に感謝しないと…という気持ちにはならないのであります
ここで書き忘れたことがあるので、冒頭のtweetの内容に戻ると
「(貧乏人はイヤミよりもまず)お金持ちにお礼の一つでも言ったらどうだんだ」となる根拠に
「貧乏な人の年金や生活保護代払ってるんだ」という文章が挟まってるんですけども
貧乏な人もその収入なりに年金保険料を払ってるし、税金も納めてるので
(お金持ちから)そんなコトを言われる筋合いはない…し
国全体で考えてみると、高額所得者よりも遥かに人数の多い、
低所得者(あるいは中所得者)の社会保険料負担や納税額が
高額所得者のそれよりも「絶対額で」多いはず…なので
まるで「お金持ちだけが年金や(生活保護費の原資となる)税金を払ってる」ように考えるのは
大きな間違いである…ということになるでしょう
(ひとことで言うと、この国の大部分は庶民であり、庶民が国を支えてるのよね…)
※このネタと関連するようなしないような話…
少し前に、「世代間対立(あるいは憎悪)」という言葉が盛んに取り上げられた時期がありましたね
ボク、この言葉には最初からめっちゃ違和感があったんです
それは何でかと言うと、これは「庶民同士の対立」の話やんけ…というものでありまして
そういう点では「お金持ちとそうでない人との対立」もまた
「庶民同士の対立」…ではなくて「市民同士の対立」の話でしかない…
ということで、両者は似てなくもありません
仮に、世代間で格差(≒構造的な不公平)が生じた…としたならば
その格差を生じさせたもの(→政治の無策)に怒りを感じる…というんならわかるんだけど
「自分よりも恵まれていると思われる世代」に怒りを感じてどないすんねん…と
ぼくは思うんです
これと同じように、仮に、高額所得者の人が
「自分は(低所得者や中所得者に比べて)損してる」と思うのならば
そういう損な仕組みをつくってるもの(→政治)に怒りを向けたらええやんけ…と思うのに
その怒りをなんで「高額所得者でない人たち(特に貧乏人)」に向けるのか…という話でありまして
「世代間対立」にしろ、「お金のあるなし間対立」にしろ、
所詮は市民同士の対立でしかなくて、かつ、責任の所在に怒りが向いてるわけでもないから
そういうマイナスの感情は何の解決にもならない…どころか
無策の政治家を免罪してるだけ…のような気がするので
もし、「自分は損してる」と思うのであれば、
その「損」なるものを発生させている責任者に怒りを向けたらよろしいがな…
と思うところです
(その前に、それが本当に「損」(≒理不尽な不利益)なのかどうかを吟味する必要があるけどね…)