「日住検監修 スマートデイズ被害者の会」の第2回会合には100人以上のオーナーが出席した=2月上旬、東京都内

首都圏を中心に女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を展開するスマートデイズ(東京都)が、オーナーに対してサブリース賃料の支払い停止を発表してから間もなく1カ月。徐々に問題の大きさが世間にも知れ渡る中、被害を受けたオーナーたちは一刻も早い再建に向け、それぞれの道を歩んでいる。

高金利のフルローンで1億~3億円程度の物件を購入したオーナーは約700人に上るとみられ、サブリース賃料が完全に停止されれば、ローン返済や固定資産税など毎月100万円を超す持ち出しが発生する可能性もある。「自己破産」という言葉も現実味を帯びる危機的状況の中で、彼らに必要な行動は何なのだろうか。

死ぬしかない、と考えた

「一番腹が立つのはスマートデイズだが、一番の敵はスルガ銀行だと思っています」

今月上旬に都内で開かれた、NPO法人日本住宅性能検査協会が監修する「スマートデイズ被害者の会」の第2回会合。全国からかぼちゃの馬車のオーナー100人以上が集まる中、1人の男性オーナーがマイクを握り、怒りを抑えながらこう続けた。

「家族の幸せを願って始めたはずなのに、こんなことになるなんて…。子どもたちに借金を残すぐらいだったら、自分が一生懸命築き上げてきたものを失って家まで取られるぐらいだったら…もう死ぬしかない、とも考えました。でも、あんなやつらのために死んでたまるか、と思い直した。個の力では勝てないから、力を合わせて戦うしかない」

会合にはオーナーのほか、弁護士や不動産鑑定士、一級建築士、任意売却コンサルタントなど20人近い専門家が出席。それぞれ「今回の問題は相当闇が深い」「過去のサブリース事案とは大きく事情が違う」「調べれば調べるほどひどい事件」などと強い口調で語り、あらためて問題の特異性を感じさせた。

被害者の会によると、会の目的は「投資被害の最小化」で、具体的には「物件を売却して残債の免除を働きかける」「運営会社の変更や用途替えで運営を続ける」の2案が軸。その中で、「建物・土地の再利用」「建物建築に係わる契約不履行・損害賠償請求」「金融機関の過剰融資責任追及」など5つの委員会を設置し、オーナーそれぞれが希望する委員会に所属して活動していく方針が示された。

過去に類を見ない「事件」

「今回は過去のサブリース事案と違って詐欺性が高く、極めて悪質な手口だ」

出席した弁護士の小早川真行氏は「かつて問題化したサブリース事案の多くは、バブル崩壊など経済情勢の変化によって周辺の賃料相場が下がり、保証賃料を減額せざるを得なくなった―という構図だった」と説明。「今回は周辺相場が大きく変わったわけでもなく、もともとの計画自体があまりにも無謀だった。しかも減額ではなく『支払い停止』という話なので、情状酌量の余地は一切ない」

スマートデイズ(旧社名スマートライフ)は2012年に創業し、2014年4月から女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を展開。サブリースで30年の賃料を保証し、物件数は約800棟・1万室に上る。しかし、ほとんどの案件で融資を引き受けていたスルガ銀行が昨年10月に方針を転換し、予定していた販売ができず資金繰りが悪化。オーナーへの支払いは同月から返済額のみの支払いに減額され、今年1月17日のオーナー向け説明会でサブリース賃料の完全停止が発表された。

かぼちゃの馬車の融資はスルガ銀行の特定の支店が一手に引き受けていたとされ、このビジネスモデル自体がスルガ銀行ありきだったという見方が一般的だ。小早川氏は「今回の事案で相手にすべきなのは、最も公的なインフラであるスルガ銀行」と強調し、「スマートデイズの行為は債務不履行にあたるので、彼らを相手取って裁判を起こせば勝てる可能性は高い。ただ、勝つことにどれだけの意味があるのか。計画倒産を考えている相手なので当然、差し押さえを回避するスキームは組み込んでいるはず」とした。

次のページ過剰融資の責任追及へ