古賀茂明「東京地検のスパコン詐欺事件は安倍政権に飛び火するか、忖度で終わるか?」
連載「政官財の罪と罰」
ちなみに、17年5月25日の参議院財政金融委員会では、麻生財務相が、「コンピューターとかAIというものが発達すると、今、日本で今年も多分世界一になると思いますが、ペギー(PEZYの間違い。参議院の議事録のまま)コンピューターというのが出てきました」などと自ら問われてもいないのにPEZY社の名前を出して宣伝していたことが知られている。
こういう話はすぐに広がるので、当然、官僚たちは麻生氏とPEZY社の関係を認識し、何か圧力がかからなくても忖度するということになる。
一部の役所では、麻生氏の他に、安倍総理と非常に近い元閣僚や現職の閣僚もPEZY社と非常に近いと言われていて、現にそういうことで「忖度」による補助金交付が行われたなどという「噂」も流れ始めている。
今、永田町や霞が関では特捜の真の狙いは何なのかについて、様々な憶測が飛び交っている。一方には、ポスト安倍を巡り、安倍政権の基盤が必ずしも盤石ではなくなったということを見極めて、政権に打撃となる案件を取り上げたという説がある。そうであれば、今回の逮捕はまだ入り口に過ぎないということだ。
他方で、これまでもあれだけ政権に配慮した「忖度検察」が、そんな危ない橋を渡るはずがない。これは斉藤社長を逮捕しても山口氏や安倍政権にまで飛び火することはないということを見極めたからこそ、逮捕に踏み切ったのだという説もある。そうであれば、今回の逮捕で一件落着ということになる。
今のところ、どちらもありそうだが、一つ言えることは、PEZY社に政府から補助金が出ていることを知らない政治家はまずいないということだ。そうであれば同社や斉藤社長から直接金を受け取るようなドジなことをする政治家、特に大物政治家がいるとは考えにくい。何かあっても、相当巧妙な仕掛けになっていて、尻尾をつかまれることはないようになっている。そういうことではないのか。
その場合、仮に不自然なことがあったとしても、それは「官僚が勝手に忖度したんだ」という決着になるのではないか。
この国では、全てが「忖度」で済まされるのだろうか。17年の流行語大賞に「忖度」が選ばれたのはまことに時宜にかなったものだったと、あらためて思ってしまうのである。
古賀茂明(こが・しげあき)/1955年、長崎県生まれ。東京大学法学部卒業後、旧通産省(経済産業省)入省。国家公務員制度改革推進本部審議官、中小企業庁経営支援部長などを経て2011年退官、改革派官僚で「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。元報道ステーションコメンテーター。主著『日本中枢の崩壊』『日本中枢の狂謀』(講談社)など。「シナプス 古賀茂明サロン」主催