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電機メーカーや部品メーカーでの勤務経験を持つ“熟練”のエンジニアたちの協力を得て実施したAIスピーカー(スマートスピーカー)主要3機種の分解。エンジニアたちは設計に関して、米グーグル(Google)社の「Google Home」を「天才」、米アマゾン・ドット・コム(Amazon.com)社の「Amazon Echo」を「秀才」、そしてLINEの「Clova WAVE」を「初心者」と形容した。
同じAIスピーカーでありながら、どういった違いがこのような印象の差を生んだのか。具体的には、全体設計や製造コストに直結する部品点数、AIスピーカーで重要になる音声の処理の違いなどにあるという。
「まるでパズルのようだ」
「まるでパズルを組み合わせたかのように無駄がない。なんか天才的なエンジニアが、“これでもか”という感じでシンプルな設計を追求した感じがする」
分解されたGoogle Homeを眺めていた複数のエンジニアから、こうした声が上がった。Google Homeは、決して機器自体の性能が高いわけではない。コストを抑えながら必要十分な機能を発揮するよう、さまざまな面で作り込んだ様子がうかがえる。
その象徴が、部品点数が少なく組み立てが容易な点だ。製造コストも低いと見られる。「一時期、国内で半額セール(定価は7000円、税別)を行っていたが、それでも赤字にはならないだろう」とエンジニアたちは推測した。
スピーカーとして重要な音質については「さほどこだわっているようには見えないが、小型のボディーながら音質が良いように感じさせるために低音が出る工夫をしている」と、あるエンジニアはコメントした。
Amazon Echoは「秀才」らしく、定石を踏みながらきちんと作っている印象だ。部品点数はGoogle Homeに比べると多いものの、シンプルな構造で組み立てやすく、さらには「修理しやすい設計になっている」(あるエンジニア)。Google Homeと比べて部品コストは低くなさそうだが、「他の機種と部品を共通化するなどして、量産によるコスト低減を狙っているのではないか」と、エンジニアたちは見る。きちんとやるべきことを高い次元で実現しているのだ。
一方、「初心者」と評価されたLINEのClova WAVEは、音声認識技術やものづくりに対する経験の浅さを露呈した。特に目立ったのは、ノイズ対策部品などの「貼り物」を多用している点だ。エンジニアたちからは「設計が洗練されていない。“急いで作った”感がかなりある」といった意見が相次いだ。開発期間が非常に短かったのかもしれない。外観からは分からなかった“突貫工事”ぶりが、内部にはありありと見えた。