およそ2時間後でも生きていた
興味をそそられた杉浦氏と佐藤氏は、ミイデラゴミムシのこの能力を試してみることにした。ナガレヒキガエルに加えてニホンヒキガエル(B. japoinicus)にも与えた。
ミイデラゴミムシの半数にピンセットで刺激を与え、事前に有毒の化学物資をすべて排出させた。化学兵器を奪われたゴミムシはほぼすべて食べられて完全に消化された。一方、化学物質を噴射できるゴミムシのうち43パーセントは食べられた後12分から107分の間に吐き出された。
両氏の論文によれば、大きなミイデラゴミムシほど吐き出されやすく、小さなヒキガエルほどよく吐き出すという。吐き出されたゴミムシはすべて生きていた。(参考記事:「【動画】生きたヘビをするすると吐き戻すヘビ」)
では、これらの甲虫はどのようにして2時間近くもヒキガエルのお腹の中で生きていたのだろうか。
ひとつには、ミイデラゴミムシが頑丈であるということが判明している。食べられてから20分後に、カエルの胃の中のミイデラゴミムシと他の種類の甲虫を比較してみたところ、ミイデラゴミムシは消化液の影響をあまり受けていなかったのだ。(参考記事:「新種のアリ、毒ガエルの胃から発見」)
「捕食者の胃液の強酸によって、ふつうの昆虫は吐き出される前に死んでしまうでしょう。つまり、ミイデラゴミムシという種が、ヒキガエルの消化器官で生き延びる能力を進化させたという可能性を示唆しています」と、杉浦氏はメールでコメントを寄せている。(参考記事:「【動画】奇虫!サンヨウベニボタルの驚くべき生態」)
ムーア氏によれば、この戦略はゴミムシ自身の生存率を高めるだけでなく、捕食者がこの種を再び食べることへの強い抑止力にもなっているとも考えられるという。