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【社説】

高校の指導要領 社会に通用する力を

 グローバル化や高度情報化、少子高齢化の流れが速い。不確実な時代を生きる力をどう身に付けるか。高校の新しい学習指導要領案が公表された。大学受験のための教育から抜け出すことが肝要だ。

 文部科学省は昨年度の小中学校に続き、高校の現行指導要領をほぼ十年ぶりに改定し、二〇二二年度から順次導入する。高校と大学の教育を円滑につなぐための「高大接続改革」の一環でもある。

 これまで高校と大学の教育は、入学試験という障壁で隔絶されてきたといえる。大学は知識偏重の入試を課し、高校はその傾向と対策に振り回されがちだ。

 かつて全国各地の高校で進学実績を優先させるあまり、大学入試とは無関係として必修の世界史や情報科などを履修させていなかったことが発覚した。生徒の卒業認定を巡って政治問題化し、校長の自殺が相次いだ。

 高校が単なる受験勉強の場になっている実態が露呈した事件だった。指導要領を改定しても、教育に対する現場の心構えが変わらなくては再び空回りしかねない。

 選挙権年齢にとどまらず、成人年齢そのものを世界標準の十八歳に引き下げる動きがある。高校は予備校ではない。社会の担い手を育て上げるという本来の役割と責任を自覚し直さねばならない。

 大学もその成果を的確に把握する入試の在り方を工夫し、多様な個性を伸ばす環境を整えてほしい。高校までの教育の流れを断ち切るような入試は自重すべきだ。

 高校の新指導要領の案は、小中学校と同様に主体的に学びに向かう態度を養うことを重視する。

 そのために大切なのは、生徒の「なぜ学ぶのか」という素朴な疑問に対して気づきや示唆を与える授業だろう。よく耳にする大学受験に必要だからという皮相的な動機付けでは血肉になるまい。

 その意味では、日常の暮らしや現実の社会が抱える諸課題と、学ぶべき事柄との関わり合いに着目して多面的、多角的に考えさせる場面が多いのは望ましい。

 もっとも、生徒に主体性を持たせるべく、講義から討論や発表を取り入れた授業への転換が求められる。教師の負担は大きい。手厚い支援が欠かせない。

 最も気がかりなのは、小中学校から連続して道徳教育の強化を促す点だ。道徳は科学ではない。自国に対する愛情の大切さを説きつつ、領土や歴史を学ばせては危うい。社会を担うには、批判精神をよく培うことこそが大事だ。

 

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