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【社説】

医師の働き過ぎ 守られるべき労働者だ

 医師の働き過ぎの実態が次々と明るみに出ている。医療機関のずさんな労務管理が背景にある。勤務医は医療機関に雇用されている労働者で、健康を守るべき対象であることを忘れていないか。

 労働者を守る法令を順守するとの意識があまりにも欠如していないか。

 日赤医療センター(東京都渋谷区)が、医師の残業時間を労災認定の「過労死ライン」の倍の月二百時間まで容認する労使協定を結んでいた。医師の一部はそれを超えて残業していた。

 北里大病院(相模原市)は、就業規則に労働時間を週三十八時間と定めていたが、医師の適用を除外していた。健康被害の防止措置も講じていなかった。

 杏林大医学部付属病院(東京都三鷹市)では、労使協定で定めた労働時間の上限を超えて医師らに残業をさせていた。残業代も不十分だったという。

 いずれも一月、明らかになった。法令違反だとして労働基準監督署が是正勧告などを実施した。

 医療の最前線で重要な役割を担う大規模な病院で、医師に過酷な労働を強いる状況が常態化していた。医師に診察を委ねる患者の安全にも関わる。早急な改善が必要なことは言うまでもない。

 そこで確認しておきたい。

 厚生労働省は昨年八月から、医師の働き過ぎの是正策を検討する有識者会議を設置した。その議論で医療機関側のメンバーが医師が労働者なのか疑問を表明した。座長が「全く間違いなく労働基準法上の労働者。疑う余地はない」とたしなめる場面があった。

 医療機関に雇用され勤務時間が決められ診療に当たる勤務医はまぎれもなく労働者である。

 有識者会議は今年一月、緊急対策の骨子案を示した。勤務時間の把握など管理の徹底や、労使協定を超える残業の点検を挙げた。医療機関は、こんな基本的なルールさえ徹底されていなかったことは問題だと認識すべきだ。

 検査や入院の説明、服薬指導、診断書の作成代行などの業務は医師以外でも可能だ。看護師など他のスタッフとの分担も求めた。速やかに実行してほしい。

 有識者会議は今後、患者の診療を拒めない「応召義務」との両立などを検討する。こうした課題のため残業時間の上限規制などを盛り込んだ政府の「働き方改革実行計画」では、規制適用を五年猶予した。だが、現場の疲弊を考えれば適用の前倒しも必要だろう。

 

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