2番・ペゲーロが本塁打を量産!バントの選択肢は捨てる楽天の作戦

5月13日現在、勝率7割台で首位に立つ楽天は打線がリーグトップのチーム打率.268と好調だ。その打線を象徴するのが「恐怖の2番」ペゲーロの存在である。ペゲーロの現在までの成績は打率.292、8本塁打、25打点。出塁率と長打率を足した指標であるOPSは.942を記録している。

1番は打率.313で7本塁打と好調の茂木が打ち、3番から6番を今江、銀次、ウィーラー、アマダー、島内などが日替わりの順番で打つ。2番というとバントや進塁打で“つなぎ”ができる選手が座るイメージが強いが、楽天の場合はチームで一番の強打者を2番に据え、2番にバントで送らせるという選択肢は捨ててしまっている。良い打者にはできるだけ多く打席を回し、また長打のある打者を連続させることで、相手投手にプレッシャーをかけていくのが今シーズンの梨田楽天の打線だ。

2番に強打者を置くという作戦は、日本では異色になるがメジャーではかなり一般的である。昨年に39本塁打を打ってナ・リーグMVPを獲得したカブスのクリス・ブライアントや、昨年53試合の出場で20本塁打を打って大ブレイクしたヤンキースのゲイリー・サンチェス、また今シーズンは3番が主だがかつてはエンゼルスのマイク・トラウトなど、本塁打を20本、30本打てる2番打者は非常に多い。

日本だと、そんな「恐怖の2番」というと過去にどんな選手がいただろうか。代表的な選手を振り返っていきたいと思う。

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小笠原道大(日本ハム・巨人・中日)

打率285/25本塁打/81打点(1999年・日本ハム)
打率.329/ 31本塁打/102打点(2000年・日本ハム)

通算で打率.310、378本塁打、1169打点という成績を残し、日本ハム、巨人では主軸打者として、また晩年の中日では代打の切り札として活躍した大打者小笠原道大。全盛期には主に3番を打ち、体がねじ切れんばかりのフルスイングで本塁打を量産していた小笠原も、日本ハムでは「恐怖の2番」時代があった。

1997年入団の小笠原はプロ入り2年間で1本しか本塁打を打てていなかったが、捕手から一塁手に転向した1999年にレギュラーに定着。当時の上田利治監督が小笠原を2番で起用すると、打率.285、25本塁打、81打点の成績を残し一塁のベストナインを獲得する大ブレイクを果たした。翌2000年も主に2番での起用で打率.329、31本塁打、102打点という成績を残している。

バントは一切せず、本塁打を打ちまくって率も残せる恐ろしい2番打者であった。恐怖の2番といえば、少し前の時代も知っている野球ファンであればまずは小笠原が思い浮かぶだろう。

リグス(ヤクルト)

打率.294/39本塁打/94打点(2006年・ヤクルト)

ペゲーロや小笠原のような本塁打を打ちまくるタイプの2番打者といえば、近年ではヤクルトの外国人リグスの存在がある。リグスはヤクルト入団1年目の2005年に329打席で打率.306、14本塁打、44打点とまずまずの成績を残すと、2番に固定された2006年には打率.294、39本塁打、94打点という、2番としては異色と言っていい成績を残した。

さらに、2006年の古田敦也選手兼任監督が率いたヤクルトは、他のメンツも相手投手からすると非常に恐ろしいものだった。打順は1番青木宣親(13本)、3番岩村明憲(32本)、4番アレックス・ラミレス(26本)、5番グレッグ・ラロッカ(18本)と並び(カッコ内は本塁打数)、チーム本塁打はリーグの最多の161本。またチーム得点は中日と並んでリーグ最多タイの669を記録している。

重量打線の中で、39本塁打と最も長打力を発揮した打者を2番に置くというのは、なかなか他では見られない作戦だろう。この年リグスが本塁打を打った試合、チームの勝率は7割を超えていた。ただ、この年のヤクルトは他にも長打力のある打者がたくさんいたので、バントをする必要がなくリグスに2番を打たせることができたということもある。

川端慎吾(ヤクルト)

打率.336/8本塁打/57打点(2015年・ヤクルト)

「恐怖」という言葉は少し違うかもしれないが、ヤクルトがリーグ優勝した2015年の川端はバントをせずにヒットを打ってつなぐ、攻撃的な2番打者であった。2015年、川端は序盤3番打者として好調を続けていたが、1番を打っていた山田哲人の好調により、真中監督は7月頃から山田を3番に置き、2番を川端にと打順を組みなおしている。

最終的に川端はこの年打率.336、8本塁打、57打点で首位打者、また195安打で最多安打を獲得した。山田も打率.329、38本塁打、100打点でトリプルスリーを達成。一番は主に打率.230、3本塁打、9打点と少し打力の劣る比屋根渉が打った。この3人の並びであれは、川端を1番に、比屋根を2番に置くのが打順のセオリーのようにも思える。

しかし真中監督は2番川端、3番山田と強打者を連続して並べることで、より攻撃的な打線を構成することに成功した。この年のヤクルトのチーム得点は2位DeNAの508を大きく引き離してトップの574を記録している。

今年は大谷が2番を打ったことも

今年は楽天の梨田監督にに加え、日本ハムの栗山英樹監督も、4月6日のロッテ戦で昨季は打率.322、22本塁打、67打点の成績を残した大谷翔平を2番に置く試みを行った。本来3番の大谷を2番に据え、5番を打っていた近藤健介を3番に、4番はいつも通り中田翔、5番には控えが中心の横尾俊建を抜擢するという采配である。

栗山監督は「1番、2番にたくさん打てるバッターがいた方がいいというのは原理原則」と2番に強打者を置くメリットを説明。しかしこの試合、大谷は2塁打一本を放ったものの、クリーンナップは中田の単打のみに終わり、打線はつながらず1-5でロッテに敗戦。大谷2番はこの1試合のみに終わっている。

1試合のみの結果ではあるが、大谷2番の作戦は失敗だったと言える。今年の楽天、また過去の小笠原、リグス、川端が2番を打っていた時のチーム状況を考えてみると、それぞれ他の打者陣が非常に強力だ。2番に強打者を置く攻撃は、あくまでチーム内で他に良い打者がいるからこそ成功する作戦なのかもしれない。

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BBCrix編集部

著者プロフィール BBCrix編集部