はじめに
こんにちは。2017年の新卒として入社した野村(@Komei5296)です。 2017年の12月までのエンジニア新卒研修を経て、今年の1月からペパボ研究所研究員として働くことになりましたので、ペパボ研究所志望の経緯と大学時代の研究とこれから必要になるであろう能力を書き、最後に今後の抱負を書きます。
やってきたこと
私は大学時代にマルチプロセッサシステムのスケジューリングの研究を行っていました。 マルチプロセッサシステムでは、どのコアにどのタスクをどのタイミングで割り当てるか(スケジューリング)が実行性能を向上させる上で重要になります。 しかし、近年、集積回路の高集積や複雑化が進み、かつ、処理するアプリケーションの複雑化などの関係から個々のタスクの実行性能にばらつきが生じてきておりプロセッサの性能を十分に引き出すことができない場合が発生してきています。 そこで、私はタスクの実効性のばらつきを統計的に評価し、スケジューリングの指標とすることでばらつきを考慮してプロセッサの実効性能を引き出すための研究を行いました。
私はこの研究を行う過程で一つの疑問を感じました。それは、研究した手法の実用性に関しての疑問です。 私の行った研究は確かに現状の課題に対しての一つのアプローチを提案していますが、問題の設定が限定的になっており実用性に欠けていると感じました。 私の研究は「学術的に意味のあることだ」と思う一方で、「将来的に実用的な手法として意味はあるのだろうか」と不安に感じていました。 そんな不安を感じながら修士2年時に就職活動を行っていたときにe-ZUKA Tech Nightという勉強会でペパボの発表を聞きペパボ研究所に出会いました。 そこで紹介されていたペパボ研究所のビジョンとミッションは感じていた疑問への一つの答えを表しており、興味を持ち、すぐに最後の会社説明会に駆け込みました。 そして、無事入社でき、研修中も「研究で学術的な意味を作り出すだけではなく実用的な手法として確立してサービスに還元していきたい」という気持ちを伝え続け、今回ペパボ研究所に配属されることとなりました。
今の自分の課題
私の大学時代の研究で求められていた能力は研究の優位性を考える能力だと思います。 私の大学時代の研究は研究室内にあった研究テーマの中から選んだもので、過去に研究室内で行われていた研究の一つでした。 このような研究を進める場合、先行研究として研究室に蓄積された知見を利用して、背景や位置づけ、関連手法を知ることができ、読むべき論文も教授からある程度の紹介してもらえることから研究方針を決めることができます。 そのため、得た情報をもとに自分の手法をどう発展させるかや優位性はどこなのかを考えることが重要になります。
しかし、これから研究を行っていくには優位性を考える能力だけでなく、新規性を考える能力が必要になってくると考えています。 優位性を主張するためには自分の研究に近い論文をサーベイし個々を「深く理解する」必要がありますが、新規性を主張するためには多くの論文をサーベイして研究課題に対して「広く理解する」必要があります。 広く理解するとは、自分の研究課題の関連研究をサーベイし自分の研究の位置づけを俯瞰できる状況を作り出すことです。 これは優位性を考える前に考えるべきことなのですが、私の所属していた研究室の場合は予めテーマが用意されていたため自分で新規性を考える機会は殆どなく新規性を考える能力が不足していると感じています。 そのため、新規性を考えるために研究課題に関して広く理解することが今の自分の課題と思っています。
研究課題に関しての広い理解を行うためには、個々の論文を詳細に理解するのではなく、個々の論文の概要を理解し分類することが重要と考えています。 分類の方法としては関連研究の論文を読む過程で論文を整理するための指標(手法の特性など)を定義し、定義した指標をもとに分類を行う事が有効と思います。 これを行い、ある指標で論文が分類された状態にし自分の研究している内容がどこに分類されるのかを明確にすることで新規性を模索していきたいと思います。
今後の抱負
上述した論文を分類し新規性を模索していくことが私の当面の目標になるとは思いますが、更にその後は大学の研究室で得た技術的な知見をWeb分野に応用していきたいと考えています。 私が大学時代に所属していた研究室は組合せ最適化問題を扱っていました。問題の例として巡回セールスマン問題や最短経路問題などがあります。 これらの問題は計算複雑性理論ではNP-difficultやNP-completeに属する問題であり、現実的な実行時間で最適解を得ることが難しいとされている問題です。 このような問題に対して提案されている様々な探索やメタヒューリスティックなどの手法を研究室で学ぶことができたため、得られた知見をWeb分野に還元していきたいと思っています。 今後は研究において新規性を考える能力を身に着けつつ、大学時代に得られた知見をWeb分野においてどう応用していくかを考えていきたいと思います。
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