「経費が通らない」とは(今北産業用を書いたので一部追記)

本日2つの税務署(管轄が別れているため)に税務相談ならびに通報を行った。相手の反応は揃って「何でこんな税務処理を行おうとしたのか訳がわからない、こんなの経費として認められないし過去に原稿料とは別に売上からロイヤリティとして渡した分も事前にパーセンテージの取り決めがない限り脱税になる。経過や結果は伝えられないが管轄部署には連絡する」というものであった。
つまり、税務的にはこちらが常々言っていた通り「主催者が悪い」という結論に達した訳であるが、その辺りについて昔話や過去の事例から説明していきたいと思う。因みに自分については「申告の必要なし、だって主催者が個人名義で発注・予約してしまっているのでしょう?それを自分のところの経費にツケること事自体ができないし贈与の線も無理」という回答であった。
なお、今回の内容に税務署とのやりとりを含めて嘘偽りは一切含まれていない。「税務上はこちらが100%正しい処置であった」ため、過去糾弾してきた人は海より深く反省するように。

さて、なぜ上記の回答に至ったのか。自分は理由をよく知っているが大半の「経理や事業主でない人」にとっては信じられないと感じていると思う。その辺りについて説明して「何故自分に申告の必要がないとなったのか」を解き明かしたい。

まだ20年不況になる前だが、土木建築業にはかつてこんな笑えない笑い話が幾つか転がっていた、他の業界でも多かれ少なかれ転がっているはずだ。

1、社長が個人会員権でゴルフ接待して社名で領収書を切ったら、会員権が法人名義でないことを指摘され経費認定率が半減。慌てて法人会員権を手に入れるもその後ゴルフ会員権が暴落して固定資産税の減損処理という悪夢
2、個人的にも行く行きつけの店で接待しようと予約した際に誤って個人名で予約を入れてしまい、領収書も白紙で受け取って後で社名を書き込んだことから後日指摘。接待を受けた側の証言で接待利用と判明してそちらの分は経費に認定されるも自分の飲み代は遊興費認定を喰らう
3、経費会社持ちの忘年会で幹事が予約名義を社名ではなく個人名としてしまい、領収書を社名にしてもこのままでは全額経費にはならないと判明。店に謝り倒して予約名義を変えてもらい事なきを得る
4、社長を含む幹部の公用出張時に旅行代理店が会社名を聞き忘れたまま全て手配。後日気付いた経理担当者が旅行代理店に怒鳴り込み会社名を入れ直してもらうも私用出張と税務署に疑われ、結局最低限の旅費しか経費認定されず飲食費が全額遊興費認定

さて、ここで「経費認定されなかった分」はどのように税務上処理されるのか、そもそも「経費に認定されない名目とは何なのか」について書きつつ、何故今回こちらが「経費として処理できない」と最初から断言していたかを書いていこうと思う。
なお、この件は双方の管轄税務署に照会した上で記載している。

今回の合同企画、実は自分自身は「2年間反対し続けて結局条件付きで折れた」という経緯がある。
ただし、企画そのものには反対ではなかった。個人の趣味であるし、人選さえ確実であれば大当たりこそしなくとも赤字は出まいと考えていた位である。
では、何に反対していたか。そここそが今回の問題の根元であり、事業主や経理経験者なら全員が頭を抱える部分でもある。

遊興費(本来は私的遊興費であるが、今回は個人事業主の話なので個人遊興費として通す)という項目が申告書類の中に存在しているのを見たことのある人は……多ければここまで頭を抱える事態にはならない。
この項目は読んで字の如く「事業主ないしは経営権を持つか営業担当の従業員が、個人的な遊興のために費消した費用」のことで、大抵「接待費」や「営業費」という経費項目の金額を国税局が認定しなかった場合に本項目に付け替えられて当該分の修正申告をさせられるという類いの「経費として認められない」項目である。
この項目に認定される事の多い事案は二つ。一つが事業所の名目で発注・予約から会計までを通していない場合。そしてもう一つが同じ場所や内容、ないしは類似内容で個人遊興費として支出した案件が過去に半定期的にある場合である。

本件において首尾一貫主催者は「合同に合わせて表紙デザインの競泳水着を特注し、参加者への謝礼にすると共に先着限定で無料配布する」と言っていた。そしてこの主催者、過去に個人遊興目的で「特殊モデルや過去限定発売された競泳水着を買ってストックし、半定期的にモデルを招聘して仲間内私的な撮影会を開催ならびに参加して」いる。
この二点から導きだされる税務的な答えは「本の印刷費は経費になっても競泳水着代が経費になるわけがない(遊興費認定になる)」となる。
理由は単純、今回の競泳水着特注は同人活動の経費ですと同人サークル名義の領収書で申告しても、過去のモデル招聘費や水着購入代金の履歴から「個人遊興費」に全額認定されるのは明白だからだ。10%経費として認められれば温情のある方と言ってしまっても良いくらいだろう。
経費として認められない、というのは「経費外の個人遊興費として扱われる」という意味を持つ。個人遊興費は経費にならない項目なため、見かけ上の収入が増えてしまう。全ての事業者が恐れる事態である「指摘を受けて修正申告からの追徴課税」が発生する、ということだ。

では何故今回「条件付きで折れた」のか。その答えも先に書いた「経費と遊興費の線引き」から導きだされる。
主催者の「競泳水着の発注費用」が個人名義ではほぼ100%遊興費認定を受け経費として認められず、主催者の同人サークル名義でも20%ですら難しい(過去実績から個人的な遊興費として半分以上削られるのは確実、更に原稿料の物納として使用実績のない販促品を配るという部分が引っ掛かる恐れがある)となれば、「それを個人的な遊興目的でやったことのない人間・サークルが受け皿となって経理・実務を代行すればいい」となる。
更に「同人誌のおまけ」という目的のみで作るのと比べて「同人誌の表紙デザインの競泳水着を使って別の作品を作る(つまり撮影会をやってコスROMを出す)」という名目であれば「遊興目的ではなく事業目的」として申告できるので「受け皿のサークル名義で全ての発注・予約を行い領収書まで全面的に受け皿側名義で切っていれば」経費としてほぼ100%認められる。
その後で「同人誌側の原稿料・販促品」名目で一括発注した水着の一部を戻しても「実際に他の用途で使用された販促品の共同発注分の精算」で概ね(80%~90%程度は)経費として片がつく。一言で言えば「迂回出資して迂回先で発注・予約・受領してからの連結決算で、遊興費認定されそうな経費を経費として認めさせられる事のできる状態にしようとした」となる。

少し方向性は異なるが、近年経費認定についてとある確定判決があった。それは「外れ馬券の経費認定訴訟」だ。
公営競技の当たり券の利益に対して経費として算入できるのは「当たりを出したレースの他の馬券のみ」と決められていた。ところが、自動化の進展にともない株式同様に馬券も連続かつ継続的に遠隔取引が行われるようになり、従来基準に照らし合わせれば高額の利益を得たことになっても実際には自動取引によって「どのレースで当たりが出たのかわからない」状態に陥っていた人が修正申告からの追徴課税を求められ提訴した。
結果は「自動取引によって本人の予測によらず買われた馬券は全て外したレースの馬券であっても経費として認定する」というものであった。つまり原告である追徴課税を請求された側の勝訴だ。
Aの理由でAの人間が申告しても経費として認められない項目が、Bの事業・システムを経由すれば経費として認められる場合がある。外れ馬券訴訟におけるBがシステムであるのに対し、本件におけるBを予定していたのが「自分が代表を務める同人サークルの別企画」だった、となる。

自分が「この合同企画をやるのであればこちらがサークル(屋号)を貸し出すから水着の発注をこっち名義で行って、コスROMを作ろう」と提案した理由がここにある。そうしなければ「後日競泳水着の発注費用約40万円が雑収入に加算されて追徴課税、ついでに税務調査が入って恐らく7桁は修正申告からの追徴課税を受ける恐れがあった」からである。
そして「競泳水着と会場の発注・予約を主催者側の個人名で行ったと聞いて失敗を悟った」理由もここにある。主催者個人名での発注・予約では「過去に個人遊興費として個人名義で半定期的に競泳水着撮影会を開催ないしは参加していた実績がある以上、領収書の名義が此方であっても税務調査でほぼ100%主催者が個人遊興費認定を受ける」ことは明白だからだ。
そうなると、コスROMを完成させた場合の申告が「税理士ですら匙を投げる」事態になる。
「せいぜいROM焼き費用しか経費認定されないのに多額の売上が上がった事になるし遊興費で作成された物を売ったことになる、つまり無から有を作った事になる」ため、どう頑張って申告書類を作っても税務調査が入ることは確定的だ。
それであれば制作を越年延期して「写真のレタッチに時間がかかりすぎている」という表向きの名目で謝りつつ「主催者に発注・予約名義と領収書名義の変更を全件において行わせて、完了するまでの間は一旦両者暫定マイナス(ないしは名義修正中につき金額不明で申告)or0円申告とし、名義の切り替えが完了し次第頒布して売上から経費を戻して修正申告すればいい」と言うのが自分の立てた当初の筋書きであった。
……まあ、形になる前に見事にぶっ壊されて「もう知らん、国税局に怒られてしまえ」となったわけであるが。

実は撮影会当日の参加者への謝礼支払い時の手続きにも問題があった。本来出金伝票を切る側だった自分に経理担当の主催者がうっかりサインをさせてしまったのだ。ほぼ確実に全ての出金伝票が「主催者個人ないしは主催者のサークル名義で出金された(出金側名義を主催者が自分自身にしている)」事になっているだろう。
これも「自分がサインした出金伝票は破棄して主催者がサインした出金伝票を作り直し、出金元名義を全て受け皿側の屋号名義に書き直す」必要があった。そうしないと「過去の個人遊興目的で開催した撮影会のモデル参加者への支払い」との類似点を指摘され、ほぼ経費として認められなくなる。
この是正にも時間が必要だったため、最低でも越年延期を決めたという事情があった。と、いうよりは「越年してでも全ての名義を修正しないと遊興費認定を受ける項目を経費として認定を受けれる項目に変える事ができなかった」というところが正しい。
申告遅延はかつてとある業界では度々起きる恒例行事であった、何しろ納期からして「○年3月90日~1○1日」という案件がざらにあり、それらを片付けなければ「事業完結に伴う精算ができない」ため申告が「○○の項目については暫定計算、後日修正申告」が当たり前のようにあった。後日税務調査で痛い腹を探られて倍額払わされるよりは、腹の中が綺麗になるまで申告自体を見合せて延滞加算の方がまし、という事だ。自分も先例に習って書類上の発売日を「平成29年12月2○○日」にして最悪延滞加算で乗り切るつもりでいた。

……問題は、主催者はおろか他の全ての参加者、ならびに大半の「こういう問題に首を突っ込んでくる人」が経費と遊興費の線引きの難しさに対して無知で、自分で蒔いた種というか自業自得にも拘らず「制作費の持ち逃げ」や「出資詐欺」などと主催者側に触れ回られた挙げ句に大半がそれを信じこんだことにある。
実はこの話、事業主や取締役付きの知己にするとほぼ全員が揃って「それは相手が悪い、個人名義で発注・予約とか信じられない」と断言している。これは過去の履歴や「中立の立場に立っての詳細な経緯」を聞くまでもなく「主催者側の個人名義で発注・予約してした」の一言を聞いただけで即答した。
それくらい「事業者としての申告」は難しい。それを承知の上でタイトロープの上を渡りきれると判断して持ち込んだ話を「豪快に足を滑らせて数段底に落ちたことを罵倒された」のだからこちらも怒るに決まっている。
クオリティの問題に続いて説明する予定だった会計上の問題点についての説明を受けることなく席を立っておいて事実と相違する内容を言い触らしたのだから、こちらとしても「だったら来年税務調査受けて云十万の追徴課税受けやがれ」となる。短期は損気とはよく言ったものだが、席を立つ前の最後に「それ(年内頒布するために参加者に写真を一旦戻すこと)こそ一番やってはいけない事だ」と断言されたことへの違和感に気付いてさえいれば防げた事である。
自分が一番頭を抱えていたのが本当は作品のクオリティではなく「お互いのバランスシートが発注・予約・支払い全てにおいて主催者側が間違えたことにより崩壊している」点にあったことに気付くものが誰もいなかった、というのには乾いた笑いしか出ない。

同人サークルの確定申告マニュアルに「個人名の領収書でも可」とあるのは「年間20万円以下の雑収入に納まる場合」と「個人サークルとして単独で本を出している場合」に限る、という註釈が本来付く。そこまでであれば税務署もそれほど領収書の名義や経緯について追いかけないからだ。
これがどちらか片方でも崩れると税務署が鬼になる。事業者として屋号で全て行い青色申告していれば税務調査もただの名義確認で済むが、白色申告していると一円単位で金の出入りを調査される事になる。
遊興費、という言葉が持つ意味を甘く見てはいけない。経費にならない場合というのは大抵遊興費に名目が付け替えられて追徴課税を喰らう場合、となるからだ。そして、主催者は見事にその条件を満たしてしまい、調査前の粗利計算でも7桁が利益と認定されている(税務署職員が大まかな売上から「普通これくらいは行くはず」と考え込んだ)。が、内容証明郵便の通り期限を過ぎたので通報した以上、後は知らん。

追記1:事例1のネタをとある取締役に話したときの反応「ああ、確かにそれは半額遊興費認定喰らうわ。普通は上から下(予約・会員・発注名義から当日のプレーする人の名義、領収書の発行名義)まで全部法人で揃えないと通らないよ。遊興費認定は実際喰らうまで恐ろしさが理解できないからねぇ……全部が全部経費にツケれる訳がないのに(以後愚痴)」

追記2:当該税務署の反応1「発注・予約名義が貴方自身側にないし、何故か参加費の伝票も切られてるんでしょ?ならそんなの貴方側で申告が必要なものにならないよ。だって間違えた側が申告しなければならない性質のものなのだから。すぐ相手側の管轄税務署に電話した方がいいですよ」

追記3:当該税務署の反応2「えっ、合同の2回分の売上が数百万あるのに青色申告してないの?相手の勤務先は何考えてるの?(年20万円以下の雑益なら白色申告で通せると会社から言われてるらしいから色々とおかしな処理をしている、何度も忠告したが直さず見るに見かねて本件で真っ当な会計処理のための提案をしたら見事に発注・予約名義を間違って処理される事故を起こされた。と伝えたところ)なるほど……有益な情報をありがとうございました、すぐに担当部署に伝えます。流石に発注名義間違いで数十万円の贈与は避けたいですものね、幾らなんでもこれは主催者個人がおかしい」

追記4:この事について首尾一貫相談している人に税務署が反応したと話したときの反応「確か相手の年齢何歳だっけ?……脇が甘いな。うん、本当に脇が甘い。こういうのは大抵こういう形でバレるんだよ、売上等の情報持ってる人間は厚遇しないと」