(英エコノミスト誌 2018年2月10日号)

世界の株式市場、215兆円失う 英EU離脱派勝利で株安

株価暴落で額に手を当てる米ニューヨーク証券取引所(NYSE)で働くトレーダー。(c)AFP/Getty Images/Spencer Platt〔AFPBB News

どこからともなく突然帰ってきたボラティリティーは、しばらく居座る公算がある。

 優秀なホラー映画監督は例外なく、「ジャンプ・スケア」という手法の秘密を知っている。ヒーローやヒロインが安心しているところに、どこからともなく怪物が姿を現すと、観客はイスから飛び上がるほど驚いてしまうのだ。

 その意味では、株式市場を先日襲ったショックの監督は、アルフレッド・ヒッチコックが務めていてもおかしくなかった。2月の2日と5日に起こった急落は、株価は上方にしか向かわないように見えた時期が長く続いた後の出来事だった。

 実際、米国株はこれまでかなりの急ピッチで上昇していたため、今回の下落で今年初めの水準に戻ったにすぎない(下の図参照)。

 2月5日の米ダウ工業株30種平均の下落幅1175ドルは、絶対値としては過去最大であるものの、比率で見ればわずか4.6%で大したことはない。1987年10月のブラックマンデーの下落幅は508ドルだったが、下落率は23%近くに達していた。

 それでも、驚きはさざ波のように世界中に広がっていった。1月29日から2月7日朝までの間にMSCI新興国株指数は7.5%下落。FTSE100種総合株価指数は、1月に付けた史上最高値より8.2%安くなった。

 2月6日の午後に入ってダウ平均が反発し、前日比2.3%高(567ドル高)で引けたことで、市場はいくらか落ち着きを取り戻した。