高速道路であおられる、自動運転の落とし穴

ホンダの自動運転担当者が語るクルマの未来

2018年2月14日(水)

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 自動車メーカーに加えて、グーグルなどのIT(情報技術)大手、ウーバーなどのライドシェア(相乗り)大手まで、様々な業種の企業が開発を加速させる自動運転車。異種格闘技戦ともいえる競争が激化する中で、ホンダはどのような自動運転車を実現しようとしているのか。自動運転車が普及するとどのような変化が起きるのか。ホンダの研究開発部門である本田技術研究所 四輪R&Dセンター統合制御開発室の杉本洋一上席研究員に話を聞いた。

(聞き手は山崎 良兵)

多数の自動車メーカーに加えて、ソフトウエア会社や半導体メーカーが自動運転車の開発に力を注いでいます。自動運転車は社会をどのように変えていく可能性があるのでしょうか。

杉本洋一上席研究員(以下、杉本):クルマ社会にはさまざまな課題があります。まず都市部ではクルマの数が多くて、渋滞があり、駐車場も不足気味です。一方、郊外はクルマがないと非常に不便で、クルマはなくてはならない。過疎地では高齢化や人口減少が進む中で、バス路線が廃止されています。自動運転で、こうした交通の課題を解決し、社会を変えていきたいと思っています。

本田技術研究所 四輪R&Dセンター統合制御開発室の杉本洋一上席研究員(写真、陶山勉、以下同)

 2つのアプローチがあります。1つは公共交通サービスで、無人のライドシェア(相乗り)サービスやバスを順次進化させています。もう1つが個人向けのクルマの進化です。

 自動運転はクルマ社会の最大の課題を解決できる可能性があります。2017年には交通事故により、全国で3694人が亡くなっています。こうした事故を一日も早くなくしたい。高齢になって免許を返納する人や、事故が怖いから車に乗りたくないという若者もいます。全ての人がいつまでも自由に移動できる社会を実現したいと思っています。

自動運転車では、他社との違いや、ホンダらしさをどのように実現するのでしょうか。

杉本:ホンダが自動運転車でこだわりたいポイントは2つあります。まず「任せられる信頼感」。機械に自分の運転を任せるには、心から信頼できないと難しい。

 例えば、クルマの運転中、前方の路肩に駐車しているクルマの後ろを自転車が走っているとします。駐車中のクルマが右のドアを開けると自転車が右によける可能性がある。人間ならそう推測しますが、AI(人工知能)も同じように考える能力を持つ必要があります。

 自動運転車は周りの人に危険を与えてはなりません。さらにホンダは「心地よく、なめらかな乗車フィーリング」も実現させます。これらを通じて、自動運転車を心から信頼できて、出かけたくなるようなものにしたい。

 被害軽減という意味では、危険時に事故を回避する技術が不可欠です。ドライバー主体の運転支援から、機械が主体の自動運転に発展させる。ホンダは2020年までに高速道路の自動運転を実現し、それを一般道の自動運転に広げていきます。2025年までに(完全自動運転の)レベル4の自動運転を目指しています。

「見えてきた クルマの未来」の目次

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「高速道路であおられる、自動運転の落とし穴」の著者

山崎 良兵

山崎 良兵(やまざき・りょうへい)

日経ビジネス副編集長

日経ビジネス編集部、ニューヨーク支局、日本経済新聞証券部などを経て、2017年1月から日経ビジネス副編集長。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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