フジテレビで放送されている「痛快TV スカッとジャパン」について、ボクが嫌いで不愉快で苦手に感じる理由とともに、少しでも安心して見られる方法はないものかと模索して記事(↑)を書いた先週末、偶然にもその苦手な「スカジャパ」の一場面のような出来事に遭遇しました。
「たまなし(補助輪なし)」自転車の運転を覚えてサイクリングが大好きになった幼稚園児のムスコNを連れて、いつものように図書館へ絵本を借りに行きました。
その後、昼食に食べるパンをいつものパン屋さんへ買いに行き、ムスコNがどうしても買いたいお菓子があるというので、帰りがけにコンビニへ寄ったときのこと。
2つあるレジの一方には長蛇の列。昼時だから混んでるんだろうと思いつつ、もう一方のレジに目をやると、60過ぎと思しき男性客と初老のコンビニ店員とが小包をはさんで何やら話し込んでいます。
特に気にせず、買いたいものを手に取り、あえて男性客の後ろに並んでみました。たかが小包の処理で、もう一方の長蛇よりも時間が掛かるとは思えなかったからです。
しかし、2人のやり取りが聞こえて、少しずつ事情が分かってきました。
どうやら、小包の大きさのことで揉めているようなのです。「揉めている」というよりは、男性客が一方的にしゃべり続ける状況でした。男性客の言い分は、「家で3辺の合計寸法をちゃんと測ってきたのに、お前(店員)が計算した寸法はそれより大きいから、料金が高くなってしまう」という、ありがちな内容。
ありがちな状況なのですが、男性客は一歩も引こうとせず、店員の測り方がおかしいだの、店のメジャーがおかしいだの、店の空調のせいで小包が数ミリ膨張しただの、ある意味感心してしまうほどの理屈を並べ立て、しまいにはメジャーを奪い取って自分で何度も何度も測定し始めました。その間、店員は特に表情を変えることもなく、特に反論することもなく、ただ相槌を打つだけ。
苦手ながらにスカッとジャパンをたまに見ているボクとしては、間に割って入ることも一瞬頭をよぎりましたが、テレビのように一言で簡単に引き下がるような剣幕ではない男性客の様子や、店員と男性客との間の何とも言いようのない空気感に圧倒され、簡単な気持ちで介入することの無益・不毛を悟りました。
そのうち、ボクとムスコNが並んでいることに気付いた店員が、隣りのレジに移るよう目配せしてきました。ボクは、その自信に満ち溢れた目配せに長期戦の様相を感じ取り、スゴスゴともう一方のレジに移って長蛇の列に加わることにしました。
長時間待ってようやく会計が終わるころ、隣りのレジの「揉め事」も片付いたようで、男性客は小包を抱えて店を出ていき、いつものコンビニの風景が戻ってきました。
会計を終えて店を出る際、初老の店員に「大変だね」と話し掛けてみると、その店員は「別にぃ」というような表情で、「商売だから。いろいろあるよ。」と疲れた表情も見せず、逆に「ニヤッ」と笑みを浮かべつつ「スカッ」とした面持ちで返してくれました。
帰路。
玉無し自転車を嬉々として操るムスコNに交差点や信号での注意を促しつつ、コンビニでの出来事を振り返ってみました。
難しい客を迎え撃つ店員の心中は、決して穏やかなものではなかったでしょうが、自らは一言も発することなく、男性客の言い分にただただ耳を貸し相槌を打ち続ける、そのカウンセリングのようなコーチングのような見事な手練れに、ただただ感心するとともに感銘を受けつつ、そうやってお店の平和を維持する姿にプロフェッショナルとして尊敬の念を抱きました。
そんなことを思いながら走っていたら、件の男性客が件の小包を自転車のカゴに載せて、猛スピードでボクとムスコNを追い抜いていきました。自宅がたまたま同じ方向だったんですね。
顔を覚えられていて、何か言われるのかと一瞬ドキリとしましたが、ボクになど一片の関心も示すことなく、(おそらくは箱を詰め替えるために)家路を急いでいました。その後ろ姿は、ムスコNの嬉々とした後ろ姿に似て、心なし小躍りしているようにも見えました。手練れ店員のカウンセリングで、言いたいことを全部吐き出せたからなのかもしれません。真相は分かりませんが、詰め替えた箱での第2ラウンドを楽しみにしているのかもしれません。
相手がいくら理不尽でも、ただ単に「スカッと」成敗するのではなく、初老の店員のように、理不尽さの背景にあるであろう相手の過去や環境までも大きく包み込むやり方があるんだなぁと、自分にはない大きくて深い懐を羨ましく思いつつ、その日は「スカッと」した気持ちで時間が流れていきました。
大好きなパンを頬張りながら、ジャパン勢が大活躍している平昌(ピョンチャン)オリンピックを大いに楽しみました。