『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)の著者として知られる覆面ベストセラー作家の橘玲さんは、お金をテーマにした著書が多い。最近では『専業主婦は2億円損をする』(マガジンハウス)や『国家破産はこわくない』(講談社+α文庫)といった著書を上梓。こうした著書を通して世に問う鋭い指摘は、いつも世間で反響を呼ぶ。
ビジネスパーソンはお金とどう向き合うべきか。かつての自身の会社員生活や、1年間のうち数カ月を過ごす海外各国で起きている世界的なトレンドも踏まえて、自説を披露する。
(まとめ=呉 承鎬)
「定年後は退職金と年金で悠々自適」は過去の話
世の中には、老後を見据えた退職時の必要貯蓄残高にまつわる俗説が多く出回っています。誰もが関心を持つのでしょうが、一番大事な視点が欠けています。
そもそもなぜ、仕事を「60歳で卒業」しなければならないのでしょうか。「老後資金は60歳までに貯めないといけない」などというルールはありません。世界に先駆けて超高齢社会に突入した日本では、「定年退職まで頑張って働き、退職金と年金を元手にして夫婦で悠々自適の老後を送る」という人生設計は確実に過去のものに。いつまでもそんな夢にしがみついていると、「老後破産」の運命が待っているだけです。
私が厳しいことをお伝えするのは、相応の根拠があるからです。今、世界では大きなパラダイムシフトが起きていて、生き方・働き方の劇的な転換を迫られていますが、この状況を本当に理解しているビジネスパーソンは少ない。
「大変化」の原因の1つは、先進国で進む長寿化。日本はもちろん、欧米でも100歳まで生きることが珍しくなくなりました。すると当然、仕事を辞めた後の「長すぎる老後」が問題になります。60歳で退職すると、老後は40年間も残されているわけですから。現役時代に働いて貯めたお金で、残りの40年間、夫婦が安心して暮らしていくことが可能かどうかは、少し考えれば誰でも分かるはずです。
「人生100年時代」が突きつける現実に、欧米はもう気づき始めています。米国では1990年代まで、どのライフプランニング本にも「マイホームを買い、地方なら50万ドル、都市部なら100万ドル貯めてアーリーリタイアメントしよう」と書いてありました。しかし今では、早期リタイアを勧める本はありません。
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