こんにちは、ピコシムです。
朝日新聞に奨学金返済できず、保証人の家族までもが自己破産になってしまった不幸な例が紹介されました。
奨学金800万円重荷「父さんごめん」 親子で自己破産:朝日新聞デジタル
しかし、ミクロな視点では不幸ですが、マクロな視点で見たときに、奨学金を返還できない人が増えたのか、減ったのか数字がないと判断がつきません。
ということで、調査してみました。
奨学金とは何か
独立行政法人 日本学生支援機構が学生に『貸与』する学生ローン。かつては日本育英会が奨学金を運営していました。収入も与信もない学生に貸し出します。親の年収などの制限はありますが、
奨学金は2種類あって、
- 第一種奨学金(無利子)
- 第二種奨学金(有利子)
があります。
第二種奨学金は、返済時に固定金利上限3%か、変動金利0.33%(2016年度)かを選択できます。
貸与型が99.8%で、卒業後は奨学金の返還義務があります。貸与者の保証人が必要です。
- 人的保証(保証人の設定)
- 機関保証(保証人が必要ない 別途費用あり)
例えば、親が定年退職している場合や、4親等以内に保証人になる人がいない場合は、機関保証を選びます。
奨学金を返却中の金額と人数
延滞する人は増えたの?
金額ベース、人員ベースともに減っている
要返還債権 6兆9,651億円(前年度同月 6兆6,471億円 3,180億円増)
うち3月以上延滞債権は2,257億円(前年度同月 2,306億円 49億円減)
要返還債権額に対して3.24%(前年度同月 3.47% 0.23ポイント改善)
2016年度(H28)より17年度(H29)の方が、返還金額が3,180億円も増えたのに、49億円も延滞が減少している
返還者は、
2016年度 396.0万人
2017年度 412.7万人(昨年比16.7万人増)
そのうち、3か月以上延滞した人は、
2016年度 16.2万人 4.10%
2017年度 15.7万人 3.81%
返還者が昨年度より16.7万人増加した一方、3か月以上滞納した人は0.5万人減!スゴイ!
出典:債権の状況 返還金の回収状況等について(平成28年12月次における回収状況について)日本学生支援機構
他のローン滞納率はどうだろうか
消費者ローン プロミスの場合
- 不良債権化率 3か月以上滞納
6.57% ~ 9.40%(2007年3月〜2011年3月) - 貸倒償却額
9.05%~16.85%(2007年3月〜2011年3月)
日本学生支援機構の債権は、3か月以上の滞納者率3.81%で、優良な貸出先。
朝日新聞で奨学金破産がセンセーショナルに報じられましたが
奨学金自己破産は毎年3000人程度で推移
奨学金返還中の412万人
奨学金破産者の割合 0.07%
奨学金破産者は1428人に1人
(両親や親族など保証人も連鎖的に自己破産)
実際、自己破産してしまったら貸与者本人のみならず、両親や親族の方も、連鎖的に破産することが問題になっています。確率的には相当低いですが、極稀に発生しているのです。
債権の格付け
日本学生支援機構では、債権の格付けが公表されていて、
- 格付投資情報センター(R&I) AA
- 日本格付研究所(JCR) AAA
債権としては非常に優良、日本国債(A)よりも全然良い
返還が延滞している人の理由
何で延滞したのか?
「家計の収入が減った」「家計の支出が増えた」などが多い
延滞が継続している理由、
平成27年のトップ3は「本人の低所得」「奨学金延滞額の増加」「本人・親の経済的困難」
延滞すれば、翌月延滞した月の分も引き落としになるので、収入がなければ返還困難にになります。
出典:平成27年度奨学金の返還者に関する属性調査結果(概要版)日本学生支援機構
奨学金で自己破産って自己責任なんじゃないの?
朝日新聞では、奨学金の自己破産が増えていると報じています。
機構などによると、奨学金にからむ自己破産は16年度までの5年間で延べ1万5338人。内訳は本人が8108人(うち保証機関分が475人)で、連帯保証人と保証人が計7230人だった。国内の自己破産が減る中、奨学金関連は3千人前後が続いており、16年度は最多の3451人と5年前より13%増えた。
若者の貧困とか、就職難で非正規雇用しか無くて、奨学金が返せないという理論なら、なぜ貸出残高が増えて、滞納者が減ったのか。多くは真面目に返済しています。
なぜ返済する人が圧倒的に多いのか
3か月以上滞納者を信用情報登録
- 携帯電話の割賦契約ができない⇢機種代の一括払い(iphoneだと10万円ぐらい)
- 住宅ローン組めない
- 車のローン組めない
奨学金滞納したら、すぐに人生設計できなくなります
返還口座の登録
スカラーシップという奨学金返済の為の引き落とし口座の設定をします
- 必ず毎月27日に口座から引き落とされる
- 平成16年以前は、返還口座の登録する人が少なかったらしい
年収300万円未満の減額返済制度
- 10年間は毎月の返済金額が減額できる
- この他、失業、疾病など減額制度がある
そもそも第二種奨学金でも利率超安い。
海外で主流の給付型奨学金は、学生支援機構では0.21%
ちなみに、奨学金はほぼ貸与型ですが、給付型のものもあります。博士課程の成績優秀者などは、卒業間際に申請をすると返還不要となる人もいます。
[参考値]
貸与型奨学金 134万人(2015年実績)
給付型奨学金 0.29万人(2018年予定)
日本は給付型奨学金は、全体の0.21%。他の先進国と比較してもメチャクチャ少ない。
- 日本は、短大、大学、大学院などの進学者の母数が多い
- 国の高等教育への教育費支出が他国より低い
「日本の学費自己負担率」高いの低いの?
教育費の私費負担の国際比較。貸与補助は私費負担としている。日本は世界2位の私費負担国。
日本の教育費の自己負担率は高く、世界2位タイ(韓国、アメリカと同位)
奨学金事業の特殊性
- 貸与者への与信審査がない
- 両親が多重債務者かどうか判断しない
- でも、貸倒れ率が低い、殆どは真面目に返還
800万円で自己破産って、特殊な事情でもあったのかな?
冒頭の800万円借りて、数年で自己破産するとは、傍から見ると無計画的な感じがします。朝日新聞のタイトルの付け方も、その人がまるで可哀想な感じがしますが、奨学金を借りて返済中の私にとって、あまり共感できない内容です。
ただ、
- 親が奨学金を使い込んでしまった
- 親が多重債務者で肩代わりして返済している
- 親を介護など世話するために勤務時間が少ない
- 何らかの疾病、疾患、障害などで稼ぐことが出来ない
など、いろいろ事情はあるかと思います。
ちなみに、私の場合は、大学、大学院で3つの奨学金を650万円を借りて、約半分まで返済し終わりました。今は毎月3万円になりました。
もし、突然仕事をクビになったり、突然のケガや入院、精神疾患、地震、台風、火事、洪水などの災害で被災して、奨学金が返済厳しくなったら、すぐに日本学生支援機構に連絡しましょう。
最後までお読み頂きありがとうございました。
次回もお楽しみに。
参考
平成28年度 第3回債権管理・回収等検証委員会 議事要旨 日本学生支援機構
“奨学金破産”の連鎖で一家破産!? - ウェブ特集 - NHK クローズアップ現代+
“加害企業”救済の裏で~水俣病60年「極秘メモ」が語る真相~ - NHK クローズアップ現代+