今回は、姥が家の自慢話を始めるよ!
前回、中途半端に途切れた、姥の話の続きです。
※国会図書館の画像を利用しています。
国立国会図書館デジタルコレクション - 好色一代女. 巻4
17ページ目です。
【翻刻】
い女でもあればなり。今はなりあがり者のくせに◆
我(わが)まゝをぬかして駕籠(のりもの)にかさねぶとん腰(こし)の骨がを◆
れぬが不思義(ふしぎ)と。さん/゛\に訕(そしり)行耳(みゝ)の役(やく)に聞程(きくほど)おか◆
しや。朝夕(てうせき)も余所(よそ)は皆(みな)赤米(あかごめ)なれども。此方(こち)は播州(ばんしう)の天◆
守米(てんしゆまい)味噌(みそ)も入次第聟殿(むことの)が酒(さか)屋にてとる。毎(まい)日湯風◆
呂(ゆふろ)は焼(たく)も身無詳(ぶしやう)で洗(あらは)ぬそん。大節季(おほぜつき)に一門中(もんぢう)から◆
寄餅(よるもち)なら肴(さかな)物なら。それは/\堺(さかひ)がひろけれども大◆
小路(おほせうぢ)かぎつて南(みなみ)に。此方(こち)の銀(かね)からぬ者(もの)もなし。◆
是から二町行(ゆき)て鬼門角(きもんかど)も内(うち)かたから出た手代衆(てだいしゆ)。こな◆
た住吉(すみよし)の祭(まつり)見さしやつた事が有まい。長(なが)い事じやが◆
其時はさだまつて宵宮(よみや)から。家内(いゑうち)ゆく所があるそれより◆
追付(をつつけ)湊(みなと)の藤(ふじ)見に大重箱(おほぢうばこ)に南天(なんてん)を敷(しき)て赤飯(せきはん)山のやうにして
【現代語表記】
い女でもあればなり。
今は成り上がり者のくせに、我(わが)ままを抜かして、駕籠(のりもの)に、重ね布団。
腰(こし)の骨が折れぬが不思議(ふしぎ)」
と、さんざんに謗(そしり)行く。
耳(みみ)の役(やく)に聞程(きくほど)おかしや。
「朝夕(ちょうせき)も余所(よそ)は皆(みな)赤米(あかごめ)なれども、此方(こち)は播州(ばんしゅう)の天守米(てんしゅまい)。
味噌(みそ)も入り次第、聟殿(むこどの)が酒(さか)屋にて取る。
毎(まい)日湯風呂(ゆふろ)は焼(たく)も、身無詳(ぶしやう)で洗(あらわ)ぬ損。大節季(おおぜっき)に一門中(もんじゅう)から、寄餅(よるもち)なら、肴(さかな)物なら、それはそれは。
堺(さかい)が広けれども、大小路(おおしょうじ)限って南(みなみ)に、此方(こち)の銀(かね)借らぬ者(もの)もなし。
これから二町行(ゆき)て鬼門角(きもんかど)も、内(うち)方から出た手代衆(てだいしゅ)。
こなた住吉(すみよし)の祭(まつり)見さしゃった事があるまい。
長(なが)い事じゃが、その時は定まって宵宮(よみや)から、家内(いえうち)行く所がある。
それより追付(おっつけ)、湊(みなと)の藤(ふじ)見に、大重箱(おほぢうばこ)に南天(なんてん)を敷(しき)て、赤飯(せきはん)山のやうにして
【ざっくり現代語訳】
(姥のセリフの続き)
「~今の奥は最初の奥様が連れてきた腰元の「しゅん」という者で、最初の奥様が流行り風邪でお亡くなりになってから、物好きな旦那様が奥にされたのですが、良い女であるならまだしも、ただの成り上がり者のくせに、わがまま放題。
出かける時は駕籠に乗り、夜は何枚も重ねた布団で寝ます。[「駕籠にも布団を重ねて敷いて乗ります」か?]
駕籠の揺れと布団の重さで腰の骨が折れないのが不思議ですわ」[「足腰が弱って腰の骨が折れないのが~」か?][それとも慣用句的なもの?]
とディスりまくります。
勝手に耳に入ってくるので聞きますが、おかしくて仕方ありません。
(姥のセリフ)
「朝晩に食べる米は、他所[よそ]はどこも安い赤米ですが、我が家ではブランド米の播磨国[兵庫県]の天守米。
娘婿が酒屋なので、味噌はそこから必要な分だけ持ってきまする。
毎日、お風呂を沸かすので、いくら無精者だといっても、入らないのは損ですぞ。
大晦日には親戚一同から餅やら魚やらが届けられるので、それはそれは見事なものです。
広い堺の町にもかかわらず、大小路から南で我が家から銀を借りてない所はありませぬ。
ここから二町[約220メートル]ほど行った所の鬼門角[北東の角]にある屋敷も、我が家から暖簾分けした手代[従業員]なのです。
あなたは住吉大社のお祭りを見たことはないでしょうな。
まだ先のことですが、前夜祭から家中皆で行くところが決まっているのです。
そのことはまあ置いておいて、近々のことでは、湊に藤の花を見に行きます。
大きな重箱に南天の葉を敷き、赤飯を山のように盛り付けて
【解説】
姥は、一代女に奉公する上での注意点を教えてるかと思いきや、奥様の悪口になり、果ては家の自慢を始めます。
おしゃべりな姥だこと(笑)
文中に出てくる大小路はここです。
※国会図書館の画像を利用しています。
国立国会図書館デジタルコレクション - 堺大絵図改正綱目
ここから南とはこの範囲ですかっ!
この家は金融業だったのですかね???
住吉大社は大阪市住吉区にある神社で、堺の北の方にあります。
お祭りは六月三十日頃だったようです。
一代女の契約期間は九月~二月なので、もう半年契約を更新しないと見に行けませんね。
湊は堺の南の方にあった地名で、今でも湊駅が存在します。
藤の花の見ごろはたぶん三月ぐらいなので、あら、こちらも見に行けない???
藤の花じゃなくて葉とか見に行くのかしらん?
あ、言い忘れてましたが、ここでの月は全て旧暦ですので!
前回のくずし字クイズの答え
順に「す」「の」「つ」「た」「か」ですね♪
今回のくずし字クイズ!
次回に紹介するページからの出題です♪
この字は、ここまでのページでも何回か出ているのですが、
この過去記事でもちょっと述べている字です♪
kihiminhamame.hatenablog.com
今回のシリーズは妖怪が出てこないから何だかサビシイヨ。。。
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