(cache)二度目の勇者は復讐の道を嗤い歩む

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エピローグ　3

　こじ開けるように無理やり開いた門に、海人様が落ちていくのを見届けて、門を閉じる。
　海人様は無事、世界の壁を越え、元の世界に戻られたのでしょう。

　あぁ、海人様、海人様、海人様。

　お待ちしていてください。全てが綺麗な世界となったら、この道を通してもう一度お呼びします。
　魔王も、まとわりつく害虫も、海人様を傷つけたすべてを排除して、私一人でお迎えします。

「ふふふっ、誰の邪魔の入らない二人旅……。今から待ち遠しくて仕方がありません」

　そんな明るい未来を想像するだけで胸が暖かくなる。

「さて、それじゃあ、まずはここにいる害虫から駆除して……」

『ざぁんねぇん。ごめんね、それはちょっと無理かなぁ』

「っ!?　誰ですかっ!?」

　唐突に響く声に、私はあわてて振り返る。
　そこにはまるで最初からそこにいたかのような自然さで一人の女性が宙に浮いていた。
　肩口にかかる程度の長さの髪は毛先には強く癖がついていて、ルーナリア教の物と似て非なる(・・・・・)修道服に身を包んだその女性は、悪戯っ気の強さがにじみ出るような表情でケラケラと笑っている。

「……聖職者のデミ・リッチ？　それにしては……。いえ、ルナリア教徒を騙った知れ者がレイス化したのでしょうか。死者はあるべきところに帰りなさい。『浄化(ピュリファイ)』」

　霊体の魔物を消し去る清浄な光がその女を包み込む。
　せっかくの節目にケチが付いてしまいましたが、これで……。

『リッチにレイスって、失礼しちゃうなぁ。それに、最初にパクったのはそっちの方なのにねぇー』

「なっ!?」

　しかし、私の予想とは異なり、ニヤニヤと笑い続ける女性の姿がありました。

「……あなたは、何者ですか？」

『さぁ、今の私は何者なんですかねぇ？　ま、あんまり長居して本人が出張ってくるとめんどうだから、この子たちは連れてくね、あ、そっちの子たちもついでに貰ってくから』

「まさかっ!?　させませっ!?」

『もう遅い』

　無詠唱で放ったアクア・ランスが地面に突き刺さるよりも早く、転がっていた害虫が一瞬だけ開いた穴に落ちて消える。

『それじゃあ、バァイビー♪　君の計画の成就、心から願ってるよん♪』

「まちなさ……っ!!」

　ケラケラと笑いながらその女は影も残さずに消えていく。
　後には私一人と、ゴルドの亡骸だけか残されていました。

「～～～～～～―――っ!!　転移の痕跡は、探れませんか。あぁ、どうして私を邪魔する存在が表れるのでしょう。私はただ、海人様と正道を歩みたいだけですのに」

　私はその場で深く、深くため息をつく。
　とにかく、今は冷静に、まずは街に戻って対策を練ることにしましょう。
　既に海人様を元の世界へと送り届けることは叶いました。世界を隔てたことで、あの害虫たちと海人様のつながりも途絶えています。
　アレが何かはわかりませんが海人様が無垢に戻られるのなら、問題はありません。

　そんな風に考えて街に戻った私を嘲笑うように、その報は届きました。

『魔族の大群、法国を襲撃する』と。

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