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 この時点で見つかっていた不具合は1000件ほど。日本IBMはこのうち約800件を「プログラムのバグでなく仕様の変更に当たる」とし、バグは200件弱と主張した。文化シヤッターはこの分類に異論を唱えつつも、システムの早期稼働を優先。まず日本IBMがバグと認めた200件弱の不具合のみを修正してシステムを稼働させるよう、日本IBMに要請した。

 だが日本IBMは文化シヤッターの案を受け入れず、2017年2月に全く異なる提案を示した。Salesforce1 Platformを使ったカスタム開発から、Salesforce1 Platformの標準機能を活用した開発へと方針を転換する内容だ。

 開発を進めたシステムは、Salesforce1 Platformの標準機能で実装した部分が5%、同基盤上でカスタム開発した部分が95%だった。これを標準機能が80%以上、カスタム部分が20%以下になるよう開発し直す。標準機能を多用するため、画面のレイアウトやシステムの機能にも制約が加わる。

 日本IBMが5月に提示した具体案は、標準機能とシステム要件の適合性を見極めるため要件定義からやり直す内容で、開発に2年4カ月と従来の1.6倍の期間を要するものだった。

 文化シヤッターは、この提案は実質的に従来のプロジェクトの成果を破棄するものであり、この段階でプロジェクトは頓挫したと判断。開発失敗の責任は日本IBMにあるとして、同社に支払った開発委託費約22億円を含む27億4475万円の損害賠償を求めて同社を訴えた。

 日経コンピュータの取材に対して文化シヤッター、日本IBMともにコメントしなかった。

 争点を明確化する第1回弁論準備手続が2018年1月18日に行われ、次回は4月の予定。裁判では不具合の内容や原因に加え、当初の要件定義や開発手法の選択が適切だったかなどが争われることになりそうだ。