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まずは図を見てほしい。これは人工知能(AI)の研究に熱心な企業・大学・団体がどこかを示したものだ。AI関連技術で最高峰とされる国際学会「NIPS(Neural Information Processing Systems) 2017」(2017年12月に開催)で採択された論文数で上位40に入った企業・大学・団体の一部をまとめた。
AI分野の論文採択数が多い企業・大学は、米グーグル(Google)および同じグループに属する英ディープマインド(DeepMind)、米マイクロソフト(Microsoft)、米IBM、米カーネギーメロン大学(CMU)、米マサチューセッツ工科大学(MIT)である。これらに英国、スイスなどの欧州勢や中国勢が猛追している構図だ。
日本はどうか。NIPSの論文採択数でトップ40に入ったのは、東京大学と理化学研究所の2団体だけである。民間企業は1社もない。最先端のAI研究の世界で「ニッポンAI」は出遅れている――。こうした現状が浮かび上がる。
有識者も危機感を隠さない。「最先端AIの研究・開発を進める人材が、日本では絶対的に不足している。この状況が続けば、日本企業や国家そのものの競争力が低下してしまう」。AI研究で著名な東京大学大学院工学系研究科の松尾豊特任准教授はこう指摘する。
最先端のAI研究だけではない。日本企業は研究者、技術者を問わず、AI技術に精通した「AI人材」の不足が深刻化している。「日経コンピュータ」の独自調査では、AI人材が「足りない」と回答した企業は90.9%だった。集計結果に基づいて推計すると、国内のAI人材の不足数は約2万7000人にも上った。経済産業省は「AIやIoTなどを担う先端IT人材が2020年に4万8000人不足する」との見通しを公表している。時期や分野の違いはあるが、おおむね合致する。