「働かなくてもカネがもらえる」から働くんです

「労働の奴隷」からの脱却を、ベーシックインカムを考える

2018年2月13日(火)

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身寄りのない高齢者などが住んでいた「そしあるハイム」(札幌市)で火災が発生し、11人が死亡した(写真:共同通信社)

 「豊かになる」とはどういうことなのか。
 ここ数日報じられた様々なニュースを見て、分からなくなった。一体どういうときに「豊か」という言葉を使えばいいのだろう。

 1月31日の夜、札幌市の生活困窮者らの自立支援住宅「そしあるハイム」で起きた火災で、11人が死亡した。大半が生活保護の受給者で、身寄りのない高齢者らが暮らす「最後のとりで」だった。施設の運営会社によれば、「金銭的な余裕がなく、スプリンクラーを付けられなかった」とのこと。

 亡くなった女性(82)は年金が少なく、生活保護を申請していたが、自分の趣味をいかして小物入れや置物のようなものを作り、生活の足しにしていたそうだ。

 痛ましいというか、切ないというか、なんだか悲しすぎて。気の利いた言葉が思いつかない。

 一方、2月7日には、「実質賃金指数が前年を0.2%下回り、2年ぶりに低下」と報じられた。

 名目賃金に当たる現金給与総額(パートを含む)は4年連続で増加したにもかかわらず、だ(月平均額は31万6907円 前年比0.4%)。厚生労働省によれば「賃金の上昇がエネルギー価格の高騰など、物価上昇に追いついていない」のが原因というけど、どうも腑に落ちない。だって景気は拡大しているのだ。

 内閣府が発表した2017年12月の景気動向指数は、それまで最高だったバブル経済期の1990年10月(120.6)を上回り、1985年以降で最高を記録している。

 「一致指数は生産や出荷など製造業を中心とした企業活動の好調ぶりを反映しやすい。主要国が軒並みプラス成長する“グレートモデレーション(大いなる安定)”の下、企業の視点から見た景気回復は、バブル経済期並みの強さになったともいえる」(by 大和総研の長内智シニアエコノミスト)。

 強さ?
 強さってナニ??
 経済は門外漢なので戯言かもしれないけれど、日本の企業の多くは、ただ単に賃金を削って、利益を出す経営しかしてない、ってことなんじゃないのか?

 また、これは私の周りで起きた小さなニュースだが、契約社員で働いていた女性が妊娠したことで派遣会社から依願退職させられた。
 女性は妊娠が分かったとき、派遣先企業の上司に相談したところ「産休・育休をとっていい。正社員もそうしているのだから問題ない」と言われ、安心したそうだ。

 ところが、妊娠していることが派遣元に伝わると、「ゆっくり子育てに専念したほうがいいのでは?」と、依願退職を迫られたという。

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河合 薫

河合 薫(かわい・かおる)

健康社会学者(Ph.D.)

東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。産業ストレスやポジティブ心理学など、健康生成論の視点から調査研究を進めている。働く人々のインタビューをフィールドワークとし、その数は600人に迫る。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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