◆任天堂・堀川氏が語る「みまもりSwitch」企画の経緯
登壇者は、ディー・エヌ・エー社員として「Nintendo みまもりSwitch(以下「みまもりSwitch」)」の開発に携わった平賀大使氏と堀由希恵氏。まずは本題に入る前に、任天堂株式会社企画制作部の堀川雄司氏が登壇し、「みまもりSwitch」の概要と企画コンセプトが説明されました。
YouTube:https://youtu.be/AVS9Dqgpo3g
「ゲーム機にまつわる親御さんとお子さんのトラブルは、昔からとても多いんです」と堀川氏。ご自身も幼少のころ、ファミコンのACアダプタを親に隠されたご経験があるそうです。そのくらいなら笑い話で済む範疇かもしれませんが、今は子供にスマートフォンを自由に使わせることに不安を覚える方もいるご時世。そんななかで「みまもりSwitch」は「保護者が安心して子供にSwitchを与えられる」一助となるべく企画されたそうです。また、そのためには、普段ゲーム機をさわらないような保護者が使いやすいインターフェイスであることも必要不可欠となります。
そうして開発が始まった「みまもりSwitch」は、任天堂とディー・エヌ・エーの共同開発。具体的には、以下のように分担して開発されたそうです。
任天堂:企画、ディレクション、グラフィックデザイン、ローカライズ、パブリッシュ
ディー・エヌ・エー:企画サポート、グラフィックデザインサポート、Switchサーバー開発、アプリ開発
◆「みまもりSwitch」制作話
まず最初になされたのは、開発メンバー間でコンセプトを共有することでした。幼いころに、ゲームで親と衝突したことはあったか? 怒られたという人でも、おとなしく親のいうことを聞く人がいれば、早起きするから登校までは遊ばせてほしいと交渉する人もいるなど、原体験は人それぞれ。そんななかで、「単に制限をかけたり監視をするだけではなく、保護者が子供を"みまもる"とはどういうことか?」というコンセプトをしっかり詰めていったそうです。
また、「みまもりSwitch」の開発プロセスは、Switch本体の開発も同時進行でなされなければならないのが特徴的であったとのこと。そのため、本体のファームウェアに関するマイルストーンを早期から共有してプロトタイプの制作にじっくりと時間をかけ、必要な機能はリリースの時点でほぼ完成させたそうです。
制作時の苦労としては「利用者の多様性」と「無理のない体験の設計」が挙げられるとのこと。前者は、全世界でのリリースを見込んでいるので、国ごとの法律や文化をしっかりと理解しておくこと、後者は、ゲーム機はもちろん、スマートフォンも頻繁に使うわけではない保護者でも使いやすいインターフェースに仕上げることを意味します。開発時はとにかく仮設と検証の繰り返しで、開発メンバー全員で使用感を頻繁に確かめたとか。
多拠点での開発も、頭を悩ませた問題の一つだったそうです。ディー・エヌ・エーは渋谷、かたや任天堂は京都です。しかも、開発スタッフが出張などで海外に行ってしまうこともザラ。そんなハードルを乗り越えるために、週に何回もテレビ会議をしたり、実際に会って話した方がよさそうならすぐに出張したり、開発メンバーでの合宿を定期的に行ったりと、コミュニケーションを厚くして対応しました。
◆「みまもりSwitch」制作の課題と解決手段
「みまもりSwitch」で設定された許容プレイ時間を超えた場合は、Switch側のゲーム画面にどのように表示すべきか、そのときはアプリ側からゲームの起動を中断できるようにすべきか否か……そうしたコンセプトを詰めていくうえで大きな課題となったのが、「「みまもりSwitch」の設定を、いかに即座にSwitch本体に反映するか」というものでした。
アプリとSwitchが直接通信する手法を取ると、Switchがオンラインのときにしか設定の更新ができなくなってしまいます。これに関しては「アプリの設定は「みまもりSwitch」専用のサーバーにマスターデータを置き、Switch本体がオンラインになり次第、即座にそれを取得・更新し、アプリへの通知を行う」という解決法が取られました。この、アプリ/Switchでの更新通知も二者が直接データをやり取りすることはなく、専用の通知システムを用いているそうです。
具体的には、アプリ側で何らかの設定(設定変更)を行うと、サーバーのデバイスリソースが持つETag値がそれを反映して更新。オンラインになっているSwitch側がそれを参照して本体の設定を更新し、それがサーバー上のETag値と同じになれば設定が正常に同期されたと判断され、アプリ側に「反映完了」の通知が届き、Switch側がオフラインで更新できず、ETag値が同じにならない場合は「Switchをインターネットにつないでください」との通知が表示されます。
また、「Switchで遊んだ時間、各ゲームで遊んだ時間をなるべくリアルタイムで集計したい」という課題も浮上。開発チームが当初採用を考えたシステムアーキテクチャでは、多くのサーバーインスタンスを消費してしまううえにリアルタイムでの取得・更新ができなかったとのことで、これはGoogleが提供する「Google Cloud Dataflow」を活用することで解決。遊んだ時間、遊んだソフト、ダウンロードされたソフト、不正な暗唱番号の入力検知など、多くの情報がSwitch本体からGoogle Cloud Dataflowを解してアプリに送られ、保護者がお手軽に管理できるようになったとのことです。
こうした技術的な話を終え、最後に堀氏は「「みまもりSwitch」の開発には、(これさえしておけばOKというような)"銀の弾丸"はありませんでした。メンバー全員が同じ方向を向き、徹底して仮説にこだわり続けた開発でした」とまとめました。
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