『ファイナルファンタジー』の第1作目は発売されたのは、1987年12月のことでした。本当は『ドラゴンクエストIII』とタイミングがぶつかるはずだったのですが、ドラクエが発売延期になったため、クリスマスに遊ぶソフトとして急きょ注目されたのが、FFだったのです。
今回は、ネタバレ全開で、『ファイナルファンタジー』の魅力について語りたいと思います。
『ファイナルファンタジー』の本質は、『ダンジョン&ドラゴンズ(D&D)』をはじめとする海外ファンタジー作品の息吹きをファミコンに持ってきたところだと個人的には思っています。
そう、ガチのファンタジー路線で勝負してきた"大人向け"の戦略なわけで、天野喜孝さんによるタイトルパッケージアートが、真に目指していた世界観を物語っているわけです。海外ファンタジーの良さを日本に伝えるための架け橋となるビジュアルを、『グイン・サーガ』や『アルスラーン戦記』のイラストを描いていた天野さんに任せたのは納得のいく話です。
ところが、
本作が目指したカタチは発売当初もそして今も、評価されていない&正しく理解されてもいないと、私は思っています。
理由は明白で、ファミコンの表現力の問題と、ファミコンのメインユーザーの年齢層が低いことを意識して、可愛いドット絵を用いたりした結果、作品のコンセプトが迷走してしまい、どっちつかずのアピールになってしまったからです。結果として、それによってファミコンでの『ファイナルファンタジー』の独自のポジションが築かれたわけですが、硬派なファンタジー要素が味わえるのは、本作とリベンジ作である『III』だけとなってしまったのは、ちょっと寂しくもあります。
『ダンジョン&ドラゴンズ(D&D)』に対して経緯を払っているのは、魔法のシステムが使用回数制であること、クリティカルヒットという名称が用いられていること、ビホルダーなどD&Dオリジナルモンスター名が使われていること、竜王としてのバハムートなどからも伺えます。ちなみに、ビホルダーは怒られたのでリメイク作品では別の名前に差し替えられていますけどね。
そんな本作は、主人公たち光の4戦士たちのジョブをゲームスタート時に選ぶわけですが、パーティ編成を間違えるとゲームの難易度が大きく変わります。このときはまだショブチェンジはできないため、一度選ぶとやり直しがきかなかったのです。
ゲーム中盤で、上位職へのクラスチェンジができるのですが、クラスチェンジによって性能が大きく変わるジョブもあります。分かりやすい例だと、赤魔術師は序盤はとても使えるのですがクラスチェンジ後はイマイチな感じに。シーフは序盤は攻撃力が低くて使いにくいのですが忍者にクラスチェンジすると素早さと攻撃力を兼ね揃えた有能キャラになります。
これは、明らかに周回プレイを前提としており、「次は別のパーティで楽しんでみてくださいね」というRPGなのです。
そんなゲームデザインとゲームストーリーがリンクしているところこそ、本作の真の価値といっても過言ではありません。
長い旅の果て、コーネリア王国に現れた光の4戦士たちは、記憶を無くしているものの、その手に4つのクリスタルを持っていました。そこに光をとり戻すことで、世界は土・火・水・風の4つの力をとり戻すことができるのです。
コーネリア王の依頼は、王女セーラをさらって立てこもった騎士ガーランドを倒すこと。ガーランドがいるのは、今や何のために建てられたかも一切不明というカオス神殿。光の4戦士たちはガーランドを倒し、王女セーラを救出。そして、果てしない探求の旅に出るのでした。
旅の中で明らかになってくるのは、クリスタルの光を奪ったカオスの存在。クリスタルを正反対の力を持つ4体のカオスを倒すことで、クリスタルは輝きをとり戻すことができるのでした。土のカオス「リッチ」、火のカオス「マリリス」、水のカオス「クラーケン」、風のカオス「ティアマット」を倒すことに成功した4人は、4つのクリスタルの光が交差する地域を発見する。そこは、ガーランドが立てこもっていた、あのカオス神殿だった。
ふたたびカオス神殿に出向いた4人は、クリスタルの力で時間移動。そこは、すべての元凶であるカオスが存在する2000年前のカオス神殿。その最奥で待ち構えていたのは、ガーランドだった。ガーランドは光の4戦士に敗れた後、その憎しみの力を糧に2000年前のカオスと契約を結び、新たなカオスへ。世界から4つのクリスタルの光が奪われたのは、ガーランドによる2000年をかけた復讐だったのだ。
激闘の末、カオス(=ガーランド)を倒す光の4戦士たち。彼らは使命を終えて現代に還ってくる。しかし、そこは4つのクリスタルの光が消えた世界。4人はすべての記憶を失って、コーネリアの地にふたたび現れる。
閉じられた時間の環の中で、永遠に戦うことを宿命づけられた光の4戦士とカオス(=ガーランド)。その存在は、言い伝えとして歴史に残されても、彼らの戦いは本人たちも知ることなく、何度もくり返されることになる。ただ1人、すべてを知るのは、光の4戦士とともに戦ってきたプレーヤー自身。
そういう話でした。
シリーズ第1作目にして、シリーズ最高のファンタジーというのが『ファイナルファンタジー』だと私は思っています。シリーズ生誕30周年を迎えた今、あらためてプレイしてみるのもいかがでしょうか。
すべての人たちの心に、クリスタルの輝きを。