「自閉スペクトラム症」の人を取り巻く困難さ

極端にこだわる、空気が読めない…

「10人に1人は抱えている」とも言われている“自閉スペクトラム症”の人は、生きるうえでどう困っているのか(撮影:今井康一)
近年、テレビや新聞、雑誌などで「大人の自閉スペクトラム症」が取り上げられることが増えました。実際、自閉スペクトラム症(以下、ASD:Autism Spectrum Disorder )は「10人に1人は抱えている」とも言われています。
ではASDとは、いったいどのような症状を言うのでしょうか。『大人の自閉スペクトラム症』を刊行し、職場での深刻な現状を豊富な事例とともに取り上げた精神科医・備瀬哲弘氏にお聞きしました。

自閉スペクトラム症は、もはやひとごとではない

筆者のところには“生きづらさ”を感じている人たちが多く診察に訪れます。そして生きづらさの原因を探し求める過程で、「ASD」に行き着く人が実に多いのです。

ASDとは「従来は自閉症、アスペルガー症候群、高機能自閉症などを含む広汎性発達障害と包括されていた疾患を、知的レベルや特性に強弱はあるが、その基本的な特性によって連続している(スペクトラムは連続帯と訳される)ととらえ直した概念」のことです。

ASDの特性としては、空気が読めず、思ったことをすぐ口に出し、その結果として相手をすぐに怒らせる、極端にこだわる、落ち着きがない、同僚との雑談が苦手などを挙げることができます。ただ、程度の差こそあれ、少なくともこれらの特性の1つは、誰にでも当てはまるかと思います。

ではASDの人は、生きるうえで「どう困っているのか」「何が生きづらくさせているのか」、4つのケースを紹介します。

30代女性事務員のBさんは、子どもの頃から余計な一言をつい言ってしまい、人を怒らせたり、不愉快にさせたりしてきました。年を重ねるにつれ、言葉をのみ込めるようになってきているとはいうものの、それでもうまくいかないことのほうが多いとのことです。また、空気が読めず、場の雰囲気を乱すようなことばかりしています。Bさんはよどみなく話すことができますが、どこかまくし立てるように、せわしなく話す印象を受けます。

40代男性会社員のIさんは、幼い頃から内気で引っ込み思案な性格です。興味があることに没頭すると周りの状況が見えなくなり、ほとんどの時間を一人で過ごしてきました。就職してからは、人付き合いやコミュニケーションが不得意ということで、上司や同僚、後輩たちからも、「付き合いが悪い」「空気が読めない」「コミュ障(コミュニケーション障害)」などと、叱責されたり、陰口を言われたりすることが続いています。

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  • NO NAMEb78053b3de29
    仕事は仕事
    プライベートはプライベート
    ADSであろうとなかろうと、業務でミスをすれば上司から叱責を受けるのは当然
    むろんその叱責は人格や人間性を否定しているものではない
    仕事とプライベートを使い分けられないとすれば、ADSの度合も極めて深刻であると言わざるをえない
    up80
    down15
    2018/2/12 09:25
  • NO NAME82373639ca11
    だから、いっそのこと、仕事は人間ではなく、AIにやらせたほうがいいという方向に向かって行くんです。
    up65
    down2
    2018/2/12 10:02
  • NO NAMEb7e916f1c2c4
    人と人には相性があるので職場によっては馴染めないところもあるだろう
    しかし、どこの職場へ行っても同じようなことになるなら本人の責任が大きい
    up59
    down10
    2018/2/12 10:01
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