ここ数年、給料の前払いに対応する企業が増えているそうです。背景にあるのは労働者の賃金低下と、前払いを支援するフィンテック企業の台頭です。
写真:アフロ
日本ではほとんどの企業が月給制になっています。25日に支払いというところがほとんどのようですが、月末が近づくと財布がピンチになるというサラリーマンは多いでしょう。
これまで給料の前払いに対応する企業は少数派でした。社員ごとに給与の支払いサイクルが変わると事務処理が複雑になりますし、前払いしてしまうと会社の資金繰りも悪くなるからです。お金使いが荒い社員にとっては厳しいルールですが、安易に前払いできないことがムダな消費の抑制につながっていたのも事実です。
ところが近年、企業の側もこうしたことを言っていられなくなりました。人手不足が深刻化しており、給料の前払いに対応できることをアピールしないと、求人で苦戦するようになってきたのです。背景にあるのは実質賃金の低下による生活の困窮です。労働者の賃金は多少増えていますが、それ以上に物価の上昇率が高く、実質的な賃金は低下しているというのが現実です。浪費ではなく本当に生活が苦しくなったことで、前払いを利用する人も増えていると考えられます。これに加えて、企業がほとんど手間をかけることなく前払いに対応できるという新しいサービスが登場したことも前払いの動きを加速させています。
一連のサービスを提供しているのはフィンテック企業や金融機関です。サービス契約した企業の従業員は、給料日前であってもスマホのアプリで申し込めば、当日もしくは翌日に欲しい金額が指定口座に振り込まれます。上司や経理に承認を得る必要がなく、アプリをタップするだけですから、手続きはいたって簡単です。手間をかけることなく前払いに対応できますから、企業としても余分な負担がありません。
ただ、こうしたサービスには法的なリスクがあると指摘する声もあります。企業が直接、給料を前払いすることについては何の問題もありませんが、事業者がこの資金を立て替えて支払った場合、給料を担保にした融資とみなされる可能性が出てきます。
しかしながら、近年の経済状況ではこうしたニーズはさらに増えてくる可能性が高いと考えられます。安易な前払いは生活破綻を招くリスクがありますが、適切な運営であれば、潤滑剤としての役割を果たすでしょう。
(The Capital Tribune Japan)