何を言ってるかわからないと思うが、騙されたと思って最後まで聞いて欲しい。
<単純明快なルール> 我がオロチ家が家庭内通貨を導入して1年が過ぎた。子どもたちは、家の手伝いをしたり、大人を助けてくれたとき
「ペコ」というオリジナル紙幣をGetできるのだ。
※イメージ図。実際のペコ紙幣はコピー用紙に印刷した粗末なものだ。 ペコ紙幣の額面は1ペコ、2ペコ、3ペコしか存在せず、運用ルールは単純明快。以下のたったひとつしかない。
1度に与えられる額は基本1ペコのみ。
これは運動会で1位をとったなど大金星をあげたときは3ペコぐらい与えて、
特別感を演出するためである。したがって普段はお手伝いの内容にかかわらず一律1ペコだ。
そして使用ルールに関しては以下の3つのみ。
1.ゲームをしたいときは2ペコ払うこと
2.大人が「いい」と言ったらゲームができる
3.大人が「やめろ」と言ったらすぐにやめる
※各種端末で見るYoutubeも同様の扱いをする。 ご存知の通り、我が家は私(父親)がレトロゲームコレクターなので、ごく一般的な家庭よりもゲームには寛容なのだが、何も言わないと本当に際限なくゲームをやり続ける子どもたちを見て「さすがにやばいな」と思ったのがこの3ヶ条をつくるきっかけだった。
つまり、我が家の通貨は事実上、
ゲーム専用通貨なのである。
<通貨単位“ペコ”の由来> そもそもペコとは
“腹ペコ”のことである。
もともと私が妻にどれだけお腹が空いてるか聞かれたときMAX状態を10ペコとして、「9ペコ(かなり腹減った)」だの「5ペコ(減ってるっちゃあ減ってる)」だの答えていたのが起源だ。逆に満腹具合を聞かれたときは「プク」で答えていた。
なんでも数値化してしまうゲーム脳ってやつ(笑)

それがどうして家庭内通貨の単位になったかというと、ペコ制度を導入した当初はゲーム専用通貨ではなく、
「おやつ」と引き換えられる通貨だったからである。
お腹がペコペコ
↓
家のお手伝いをする
↓
ペコをGet!!
↓
その通貨でおやつを購入
※ペコ制度を導入した当初、見込んでいた流れ。単位を「プク」にしなかった理由は「ペコ」のほうが通貨っぽかったからか。 しかし何事も思い通りにはいかないものだ。
<運用する側の負担> 結果的に、この流れが実現しなかったのは前述の通り。なぜなら、食べ物に関しては
親の裁量で与えるタイミングや量を決めたい場面が多かったからだ。ペコを払うからといって、いつでも際限なくおやつを食べられたら困るだろう。そんなこともあって、ペコはいつしかゲーム専用通貨となっていったのだった。
※テレビの上に掲げているルール ただし、思い通りに行かなかったことはそれだけじゃなかった。
ペコ制度のルールは前述のとおり、極端にかんたんにしたはずだったのだが、実際に数か月ほど運用してみると、それでもまだ親の負担が大きかったのだ。具体的に言うと我が家の場合、どうしても子どもたちといっしょにいる時間の多いのは妻なんだけど、在宅で仕事をしているため、逆に
「してもらいたいお手伝いがない」と言うのだ。

家事などは仕事の合間に自分でやったほうが早いしエラーも少ない。それなのに、ペコを与えるため、ムリヤリ、してほしくもないお手伝いをでっちあげる作業に時間を取られるのが苦痛なのだという理屈である。
かといって彼らは積極的に仕事を見つけてこなすタイプでもないため、オロチ家のゲーム通貨市場は
慢性的なペコ不足に陥ってしまったのだ。このままではシステムの破綻や暴動が起こりかねない。麻生さんみたいに定額給付ペコとか言ってばら撒こうか……
<ヘンな趣味> ところで、私にはファミコン集め以外にもヘンな趣味があった。
きっかけは全国に500店舗以上を展開する大手不動産チェーンのHouseDo。その広告塔をしているのが
元ヤクルトの古田選手である。うちの地域にも店舗があるらしく、そこがやたら広告を入れて来くるのだ。毎日毎日ポストへねじ込まれるHouseDoの広告に嫌気がさしていた私は、自らのコレクター根性を活用する妙案をひねり出したのだった。
※HouseDoの広告(イメージ) 広告から
古田選手を切り取って集めてみようと考えたのだ。さっそくやってみると最初のころは面白かった。日に日に集まってくる古田選手には様々なバージョン違いがありマニア心をくすぐられたものだ。しかし元来「セ」も「パ」もわからない野球音痴である。言うまでもなく、往年の古田ファンでも何でもないため、いつしか、その趣味は気が向いたときにやる程度のものになっていたのだ。
そんなある日――
仕事から帰ると妻が開口一番「どうにかして」とご立腹。
なんでも下の息子がとうとう
“ペコなし”になってしまったらしく、ゲームがしたくてリビングで泣きわめいているんだとか。下の息子はそうなると死んでも言うことを聞かない。子育て経験者ならこれが「比喩ではない」ことを理解してくれるだろう。子どもというのは
本当に「死んでも」言うことを聞かない“無敵モード”に突入することがあるのだ。

さて、どうしたものか。さっさと着替えを終えた私は、泣きわめく息子の姿を見止めつつ、ふとパソコン台の片隅に目をやった。そこには長いこと放置されていたHouseDoの広告の束が……
そうか、これだ!
「おい、(下の息子)……
今から
お父さんといっしょにフルタを切らないか?」
<メガネの救世主> 我が家に新通貨「フルタ」が誕生した瞬間である!
※オロチのフルタコレクションの それからと言うもの、子どもたちと私はダイヤモンドの採掘業者と買取業者みたいな関係になった。
相場はだいたい「大フルタ×1=中フルタ×2=小フルタ×5=1ペコ」である。子どもたちは意外と抜け目がなく、どこかの店舗写真にたまたま映り込んでいた
米粒くらいのフルタを切って来たときは感心すらしたものだ。他にも「指さしフルタ」や「考えるフルタ」など、あまり見なかけないレアフルタを採って来たときに、ついついペコをはずんでしまうのはコレクターの悲しい性である。
※どこかの店舗の従業員の集合写真にたまたま写り込んでこんでいた古田選手のポスターを切り取ったレアフルタ(右上)と、子どもたちが一生懸命、切り取った1cm以下のミニフルタたち。 家族でどこかへ車で出かけたときだったか――
子どもたちが通り沿いにHouseDoの大きな看板を見つけ「フルタだ」「フルタだ」と大はしゃぎ。「ねえ、お父さん、あの看板は何ペコ?」と聞いてくるもんだから「百万ペコ」とか適当に答えてやったら
「すげえ!」とか言って狂ったように大歓喜するのだ。傍から見れば古田選手の大ファン一家だと思われるだろうが、唯一野球に詳しいうちの妻はむしろバリバリの中日ファンであった(笑)
※通り沿いによく見かける看板(イメージ) なにはともあれ、こうして我が家の通貨危機は
古田選手が救ってくれたのだった。これもひとつの巡り合わせなのだろう。私がヤクルトを浴びるほど感謝しているのは言うまでもない。
ありがとう、HouseDo!
|  | そっちかい! |
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