「悩みがあってもだれにも相談できない」
この日本において、中学生の約2割、高校生の約4割が、そう答えています。
私が代表を務める認定NPO法人3keysでは、虐待や家庭環境などで親に頼れない10代の支援を行ってきましたが、いまの子どもたちにとって本音で気持ちや悩みを打ち明けられる環境があまりにも少ないと感じていました。
核家族化が進み、共働き世帯も増えている状況で、子どもたちの気持ちに十分に寄り添っている自信のある親は少ない時代だと思います。
経済状況や社会保障もまだ未熟な点が多く、長時間労働を前提にした働き方がまだ一般的。ひとり親家庭が貧困になりやすく、女性や母親の権利が十分に保障されていないことも相まって、母子家庭やひとり親家庭、もしくは家庭内の不和などが、さらに子どもたちに向き合う余裕のない状況を生んでいるのです。
かつて地域社会があった頃と違って子どもたちの1日は学校(部活も含め)と家の往復でした。家庭で本音が言えない子どもたちが学校で本音が言えるのかというと、そうではありません。
近年、『桐島、部活やめるってよ』をはじめ、スクールカーストをテーマにしたドラマや映画が増えていますが、学校はのびのびと勉強する場所というより、勉強ができるかどうか、どれだけ流行りのものを知っているかなど、「マウンティング」の場になりつつあります。
また、日本の学校の先生はOECDの中で最も働く時間が長く、授業以外の業務の種類(部活、事務、学校運営など)が多い国です。
多様な責任を背負った先生の中で精神疾患などで休職にいたる数は平成11年から20年の約10年間で3倍に増加。先生は一般企業の2.5倍も鬱になりやすいと言われており、子どもと向き合えていないと答えた教員は6割にも上ります。
友達にも先生にも本音を言いづらい環境の中で、性の問題、家庭内の不和や虐待、経済的事情などを知られてしまったら、いじめや噂の対象になるかもしれません。そのため、子どもたちは学校でも自分の本音や感情を隠しているケースも多いです。
それでも未成年の犯罪・非行は減っています(14歳以下の「触法少年」のみ増加)。かつて多感な時期の10代は、暴走族、犯罪、非行などという形で様々な感情を吐き出していましたが、近年そういう傾向も見えなくなっています。