Facebookは広告収入アップのために、社会的評価を求める人間心理の脆弱(ぜいじゃく)性を悪用している──。
2017年11月に、Facebookの初代CEOのショーン・パーカー氏(映画「ソーシャル・ネットワーク」ではジャスティン・ティンバーレイクが演じました)がインタビューで語ったときは“おまいう”だと思いましたが、ここのところSNS依存症について警鐘を鳴らす動きが活発化しています。
元GooglerやFacebookへの出資者などが2018年2月4日に立ち上げた団体「Center for Humane Technology」(人道的技術センター、長いのでここでは以下CHTと略します)の目的は、企業と消費者の両方に向けてSNS依存症をなくそうと働きかけることです。
これまでもマンガやテレビ、ゲームなど、何かに夢中になりすぎることが問題になってきました。SNSもその1つにすぎないだろう、という向きもありますが、人工知能(AI)の進化などによって人を夢中にさせる技術が桁違いに高度になったことが、問題を深刻にしているとCHTは主張します。
FacebookやTwitterのようなソーシャルなサービスの主な収入源は広告です。広告を出してもらうには、広告主に対して多くの人が長い時間サービスを利用しているとアピールする必要があります。決算発表で純利益と同じくらいMAU(月間アクティブユーザー数)に注目が集まるのはそのためです。いかに多くのユーザーを獲得し、長い時間サービスに滞在してもらえるかが勝負。
そのために、あの手この手でユーザーを引き留めようとします。CHTは、引き留めに効果を上げていて、人の心身の健康に悪影響がある事例として、以下を列記します。
「これらはわれわれを中毒にさせるために設計されたシステムの一部だ」とCHTは断言します。従来のテレビやゲームよりSNSが危険な理由も4つ挙げています。
私にも心当たりがあります。時間があればつい手元のスマートフォンでTwitterをチェックするし、自分のFacebookページに「いいね!」がつけばうれしいし、ニュースフィードの広告には好みに合ったものが表示されるようになってきています。
このままでは、限られた人々の時間の大手企業による奪い合いはエスカレートしそうです。かといって、FacebookもTwitterもYouTubeもInstagramも、中毒にさせる手法を放棄したら大幅に収益が落ちるでしょう。誰もこのゲームから下りられないのです。
で、CHTはこのゲームのルールを変えることを提唱しています。まずは、人間の脆弱性を理解し、それを踏まえた「人道的な設計」の標準を策定するそうです。
企業がそれに従うかどうかは難しいところですが、CHTはユーザーと政府にも働きかけて、変えていこうとしています。
気の遠くなるような話ですが、CHTの中心には元Googleの“デザイン倫理担当者”のトリスタン・ハリス氏やFacebookの立ち上げ直後から同社を支援し、マーク・ザッカーバーグCEOのアドバイザーを務めた経験もあるVC、ロジャー・マクナミー氏がいて、大学の心理学の偉い教授も協力しているので、少しずつ変えていけるかもしれません。
実際、ザッカーバーグ氏が2018年の個人目標を「Facebookの改善」にしたのには、こうした社会の動きが反映されているのかもしれません。ザッカーバーグ氏も人の親。2人の娘、マックスちゃんとオーガストちゃんをFacebook中毒にはさせたくないでしょうし。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
PICK UP!
- PR -