アメリカで1961年に生まれた男の子3人の三つ子がいた。
彼らは生まれてすぐ、別々の家庭の養子となりその後19年間、お互いの存在を全く知ることがなかった。
子供の人格形成や成長は環境と遺伝子、どちらが優位に働いているのかを調べる実験の為だ。3人は実験の為に引き離され、その成長を19年間ずっと観察され続けていたのだ。
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19年後、自分そっくりの存在を知る兄弟たち
この三つ子の名は「ロバート・シャフラン」、「エディ・ガラン」、「デビット・ケルマン」と言う。
1980年、ニューヨーク、サリバン・カウンティ・コミュニティ・カレッジに到着した初日、19歳となった「ロバート・シャフラン」は、見知らぬ人々がハグやハイタッチで暖かく出迎えてくることに戸惑った。
だがとりわけ解せなかったのは、彼らが自分を「エディ」と呼んでいたことだ。
その理由はルームメイトととなるマイケル・デーミッツに会った時に分かった。マイケルの去年のルームメイトは「エディ・ガラン」という青年だったのだが、「ロバート」は歩き方から話し方や仕草まで彼にそっくりだったのだそうだ。
「エディ」と「ロバート」が瓜二つであったことに加え、後に二人が同じ日に生まれており、しかも養子であることを知ったマイケルは、彼らは一度会ってみるべきだと考えた。
顔を会わせたロバートとエディは、自分たちが1961年7月12日にロングアイランドで生まれてすぐ引き離され、別々の家族の養子となった双子の兄弟であることを悟った。
「同じ笑顔を浮かべ、同じ髪で、同じ表情をしていた――双子の兄弟だったのさ」とマイケルは『3人の一卵性の他人(Three Identical Strangers)』というドキュメンタリーで語っている。
U.S. Documentary Competition: Three Identical Strangers
双子だと思ったら三つ子だった
このニュースは地元メディアでも取り上げられたが、それが新たな展開をもたらした。その後間もなく、クイーンズ区で暮らす「デビッド・ケルマン」という人物から連絡があったのだ。彼もまた姿も、話し方も、仕草も、双子の兄弟と瓜二つだった。彼らは三つ子であった。
三人の青年はどこからどこまでも同じで、食べ物の好みも好きなタバコも一致していた。彼らはすぐに意気投合した。
「初めて会った時はシュールだったよ。でも一緒になったら想像したこともないくらい楽しくって、本当に長い間いい感じだった」(ロバート)
三つ子は一緒に暮らすことにして、同じ大学に転入した。
自分たちがなぜ引き離されたのかを知る三つ子
だがこの幸せな再会にはまだ続きがあった。あることがきっかけで、彼らは自分たちが離れ離れになったのは、ニューヨークで精神科医をしていたマンハッタンの幼児発育センターのピーター・ノイバウアーによる社会実験のせいであることを知った。
ノイバウアー医師は双子の成長を研究するために、多くの新生児の双子を離れ離れにして、別々の家族に預けていた。これは政府公認だ。
彼は「生まれか、育ちか(nature vs. nurture)」という問題を解き明かすために子供たちを利用していたのだ。
養子をもらった家族にも三つ子であることは知らされていない
養子をもらった家族の側には、子供が発達に関する研究に参加していることが説明されただけで、三つ子という事実は一切告げられていない。
それ以来、三つ子は観察の対象となってきた。1年に1度、各家族は評価のためにマンハッタンの子供発達センター(後に家族児童サービスのユダヤ人委員会と合併)を訪れ、試験と面接を受けた。
「デビッド」の養母であるクレア・ケルマンは、ドキュメンタリーの中で、彼が何かが欠けていると感じていたと明かしている。
デビッドはずいぶん早く話し始めました。彼が目を覚まして、『僕には兄弟がいるんだ』と言っていたことを覚えています。
兄弟がいるという想像をしているんだと思っていました。後になってから分かったことですが、三つ子は全員が幼少時に分離不安を発症してたようです
再会後、悲惨な運命をたどったエディ
真相が発覚して家族は激怒したが、できることはあまりなかった。法に照らしても、ノイバウアー医師らの非倫理的な実験は違法にはならないようだった。
悲しいことに、「エディ」は酷いうつを発症し、33歳の若さで命を絶った。
現在、「ロバート」と「デビッド」はユダヤ人委員会に対し謝罪と賠償ならびに研究に関する文書の公開を求めている。
ドキュメンタリーにおいてユダヤ人委員会はコメントを控えたが、ワシントンポスト紙上に声明文を掲載した。
ユダヤ人委員会はピーター・ノイバウアー医師の研究を承認していない。また、その事実について公にする機会を作ってくれた番組に感謝申し上げる。
我々は、番組がきっかけとなって、他のきょうだいが名乗り出て、記録の公開を求めてくれることを望む
伝えられるところによると、ノイバウアー医師は自分が正しいことを行なっていると確信しているようだ。
なお、彼の研究からは「遺伝子が想像以上に広い影響を与えている」ことが明らかになっている。彼の行った数々の研究の中で、別々に育った双子の大半が「瓜二つ」に成長したのである。
「ロバート」と「デビッド」は今年57歳となる。最近撮影された彼ら2人のインタビュー映像がYOUTUBEに公開されている。
In The Can - Three Identical Strangers Cast & Crew Interview
References:thedailybeast / odditycentralなど
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コメント
1. 匿名処理班
研究としてはまあ理解はできるけど、倫理的には納得出来ないなあ
育てた親はともかく、産んだ親がどういう状況・条件でこの実験を引き受けたのか気になる
2. 匿名処理班
そもそもなんで養子になったの?元の親は?
3つ子は必ず3人セットで同一家庭で養子にしなきゃいけないってわけじゃないんでしょ
3. 匿名処理班
研究結果としては興味深い。
それでも知的欲求を満たすだけに人であることをやめてはいけない。
4. 匿名処理班
ロバ松 エディ松 デビ松
5. 匿名処理班
私たちが学校でサラっと学んだ学説も、とんでもない実験の結果、立証されたものだったりするよね。
6.
7. 匿名処理班
医者だけがって怪しいな
切り捨てられてる
8. 匿名処理班
一卵性の双子とか三つ子って、古い時代だと悲惨な実験体にされた歴史が多い気がする…
遺伝的に同じだから実験の比較が容易だからとか
9.
10.
11. 匿名処理班
ドッペルゲンガーとか思っただろうね
12. 匿名処理班
ユダヤ人委員会 怪しいな
13. 匿名処理班
ふと思ったが、物心ついて兄弟への愛情が芽生えてからならともかく、三つ子という自覚もないまま引き離されたことに対しての「非道」ってのは具体的にどう非道なんだろう
引き取られた先で何不自由なく幸せに暮らしていても彼らは不幸ということになるんだろうか
そう感じてしまうのは、双子や三つ子は目に見えない不思議な絆で繋がってると無意識レベルで信じられているからだろうか
というか一度引き離されてしまったら、いっそ死ぬまで真相を明かされない方が彼らはそれぞれ幸せに暮らせてたんじゃないだろうか
14. 匿名処理班
『ブラジルから来た少年』は、ユダヤ側の発想だったわけか。
15. 匿名処理班
クローン人間にしても、倫理観なんて関係なく最後はやったもの勝ち
それを躊躇なくやってしまえる国家の方が、これからの時代の主導権を握りそう
16. 匿名処理班
反吐が出るわ。
17. 匿名処理班
一人でも実親の元に居たら別だったが、育児放棄された幼児だとしたら別の夫婦に送って
調査しただけで言うほど非人道的でも無い気がする。
そもそも3人一組だと養子縁組を受け入れる養い親がどれほど見つかるやら。
一人に責任を押し付けてはいるが、医者全体からしても興味深い調査結果なんだと思う。
18. 匿名処理班
倫理的に受け入れられない実験の数々も科学の貴重知見の一つなんだよね。
毒物の量とかも。
AI発展のその先に人間シミュレータができれば倫理的な問題をクリアした実験が可能になるかもね。(その頃に人間シミュレータに人権に類する権利が認められちゃうと本末転倒だけど)
19.
20. 匿名処理班
三人で実験ってそうそう出来る事じゃないしな
真相が暴かれなければ何処まで行っても推論にしかならないだろうし
非人道的な人体実験が医学の発展に多大な貢献してたりするからあまり責めれない
ほぼ同じだったのだとしたら鬱になった子とならなかった子は何が違ったのだろう
21. 匿名処理班
『僕には兄弟がいるんだ』でちょっと涙ぐんでしまった。
22. 匿名処理班
「ブレンダと呼ばれた少年」のデイヴィッド・ライマーさんのケースと同時代だね。
↑手術ミスで性器を失った少年を性転換させて少女として育てるという実験の犠牲者
後にデイヴィッドさん本人と双子の弟も自殺してしまったというところまで良く似た結果になってるな…。
23. 匿名処理班
何事も、やってみなきゃあ分からない。
24. 匿名処理班
親が育てられないって乳児院に入れた子供の中から双子や三つ子がいたら連絡もらって実験に回してたのかな?
日本なら赤ちゃんポストとか…何にせよ闇深い
25. 匿名処理班
気合いと根性が信仰されてる国に住んでるからこそ
メインディッシュの結果を知りたいんだよね
26. 匿名処理班
※1
さすがに実親が育てられなくなった子供の中から選んでるんじゃないの
法的に問題ないってあるし
27.
28.
29.
30.
31.
32.
33.
34.
35.
36.
37.